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2013年のブラジルのトウモロコシ現地事情速報2 −増産の足かせとなる貯蔵キャパシティ不足−

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 現地事情1でブラジル産トウモロコシの増産見込みを報告したが、今年1月から2月にかけて収穫された大豆も前年度比22.4%増の8128万トンと大幅な増産となっており、貯蔵施設の不足に対する懸念が広がっている。特に、貯蔵にあたっては、単位重量当たりの価格が高く輸出も堅調でトウモロコシの収穫時には既に倉庫に入っている大豆のスペースをトウモロコシ貯蔵のために空けるとは考えにくく、貯蔵キャパシティの不足はトウモロコシにとって深刻な問題となっている。

トウモロコシ生産量増加から貯蔵キャパシティ不足の懸念

 豊作は、農家にとって喜ばしいことではあるが、年間2回の穀物収穫が行われ、1000ヘクタールの農家が小規模扱いされ、さらには輸出港への距離が2000キロメートルもある中西部マットグロッソ州では、喜んでばかりもいられない。1でも報告したとおり、輸送費が非常に高く、輸出向け販売価格には輸送費が含まれているため、農家の手取りが輸送費を下回ることがあるほか、すでに収穫の終了している大豆が豊作であったため、トウモロコシを貯蔵するための農家や穀物取扱業者のキャパシティが不足しているのだ。連邦政府も貯蔵キャパシティ不足は認識しており、低利融資による貯蔵施設への投資を促進する姿勢を見せているが、農家のサイロ型貯蔵施設の建設には、最低でも6カ月かかる上、融資決定までの期間も必要なので、即効性があるとは言い難い。即効性がある対策として、ビニールバッグ・サイロの利用が拡大しているというが、マットグロッソ農業経済研究所(IMEA)の分析によれば、ビニールバッグ・サイロの利用には詰め込み・取出し用の機械の初期投資が9万1000レアル(約410万円)必要なため、導入の損益分岐点となる経営規模は8000ヘクタールだという。ビニールバッグは、180トンのトウモロコシを6ヵ月間保管できるが、再利用できないため、トウモロコシ1トン当たりのコストは7.8レアル(約351円)となり、現在のトウモロコシの農家手取り価格である同200レアル(約9000円)の4%に相当する。このように高コストな方法ではあるが、当座の貯蔵キャパシティ不足の解消には有効な方法なので、マットグロッソ州でビニールバッグ・サイロを取り扱っている7社すべてで品切れの状態となっている模様だ。
図1
図2 ファーゴ農場の貯蔵施設(4000トン容)
図2 ファーゴ農場の貯蔵施設(4000トン容)
図3 サントス港ADM社の水平型倉庫内部(大豆を貯蔵中)
図3 サントス港ADM社の水平型倉庫内部(大豆を貯蔵中)

貯蔵施設の強化に対する低金利融資

 政府が6月4日に発表した2013/14年度の農業プランでは、貯蔵施設拡充のための融資を強化することされている。2013年7月1日より開始される同プランでは、生産者や農協が新たに貯蔵施設を建設する場合、市中貸出金利の半分程度の年3.5%、償還期間15年間の融資枠を5年間で250億レアル(1兆1250億円)とした。また食糧供給公社(CONAB)の公的な貯蔵施設に対して、新しい施設建設に対して3億5000万レアル(157億5000万円)、既存施設の改善に対して1億5000万レアル(67億5000万円)の予算を計上した。政府は、現在1億4400万トンある貯蔵能力を4000万トン増やすことを目的としているという。
 このような融資制度は、手続きが煩雑で使い勝手が悪いことが多いが、今回の現地調査では評価が地域により2分された。マットグロッソ州の州都クイアバの西方では、アプロソージャ(APROSOJA)という生産者団体の支部の担当者が銀行員出身であり、融資制度への理解が深く、農家も融資制度を活用して現在の貯蔵能力3000トンを倍増することに意欲を見せていた。一方、大規模農家が多いソヒーゾ市の農家は、食糧供給公社や政府への不信感が強く、また、十分な資力もあるため、自己資金や共同出資での貯蔵キャパシティの増強を図れば十分であるとの考え方が示された。
 
 参考 2013年のブラジルのトウモロコシ現地事情速報1 −マットグロッソ州を中心とした生産状況−
     2013年のブラジルのトウモロコシ現地事情速報3 −輸出港の現状と今後の展望−
【岡 千晴、小林 誠 平成25年6月28日発】
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