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海外の需給動向【豚肉/米国】  畜産の情報  2020年6月号

豚総飼養頭数、6年連続で過去最高を更新

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飼養頭数、前年同月比4.0%増
 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が2020年3月26日に公表した「Quarterly Hogs and Pigs」によると、3月1日時点の豚総飼養頭数は、前年同月比4.0%増の7762万9000頭となり、同時点としては6年連続で過去最高を更新した(表5)。飼養頭数の内訳をみると、繁殖豚は同0.4%増の637万5000頭、肥育豚は同4.3%増の7125万4000頭といずれも増加が続いている。飼養頭数増加の背景には、近年の米国内外の好調な豚肉需要が考えられる。
 
 
 また、2019年12月〜翌2月の分娩母豚頭数は前年同期比1.9%増の315万8000頭、1腹当たり産子数は同2.8%増の11.0頭といずれも前年同期をわずかに上回ったことから、産子数は同4.7%増の3473万4000頭となり、依然として増加が続いている。
 なお、飼養頭数を州別にみると、ほとんどの州で増加しており、最大の生産州であるアイオワ州が前年同月比3.8%増の2460万頭となった(表6)。
 
 
好調な豚肉輸出量、伸びは鈍化する見通し
 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)が2020年4月3日に更新した「Livestock and Meat International Trade Data」によると、同年2月の豚肉輸出量は、中国/香港向けの増加や競合するEU産の相場高などから、29万8549トン(前年同月比45.5%増)と前年同月を大幅に上回った(表7)。輸出先別にみると、中国/香港向けは、中国の米国産豚肉に対する関税報復措置の緩和(注)やASF(アフリカ豚熱)流行に伴う輸入豚肉の需要増を背景に、前年同月の6倍以上の8万9835トン(同518.3%増)となり、2019年11月以降4カ月連続で最大の輸出先となった。次いでシェアの高いメキシコ向けは6万2693トン(同18.4%増)と前年同月を大幅に上回った。
 
 
 豚肉輸出が好調に推移する中、USDAは、2020年の豚肉輸出量は前年を上回るものの、伸びは鈍化する可能性が高いとしている。要因としては、同年2月後半から急速に進んだ米ドル高メキシコペソ安を挙げており、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による中南米、カリブ海諸国の観光業への影響も相まって、同地域における輸入豚肉の需要減の可能性が高いと見込んでいる。

(注) 中国の豚肉の関税率の引き下げについては、海外情報「中国財務部が豚肉や乳製品等の一部の輸入税率を引き下げ(中国)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002614.html)、「多品目の米国産農産品の追加関税の免除を公表(中国)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002635.html)を参照されたい。

COVID-19の影響について
 直近の動向をみると、米国内の供給面では、COVID-19の流行で食肉処理場においても欠勤者が増えており、2020年4月以降、パッカーが相次いで食肉処理場を閉鎖する動きがみられた。また、需要面では、COVID-19の流行に伴い、米国内外の豚肉需要は先行き不透明となっている。こうした状況の中、USDAは、2020年の豚肉生産量の伸びも輸出量と同様、鈍化する可能性が高いと見込んでおり、COVID-19の影響がどこまで拡大するか、いつまで続くかが注視される。

(参考) 海外情報「米国の大手食肉パッカー、相次ぎ操業停止」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002678.html 、101ページ)、「食肉団体は新型コロナウイルス感染症の影響を受ける業界の窮状を訴える(米国)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002679.html 、103ページ)も参照されたい。
 
(調査情報部 河村 侑紀)