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海外情報 畜産の情報 2020年8月号

新型コロナウイルス感染症関連の情報

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調査情報部
 調査情報部では世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、各国政府の対応など需給に影響を与えるタイムリーな情報を、海外情報としてホームページで随時掲載しております。
(掲載URL:https://www.alic.go.jp/topics/index_abr_2020.html
 ここでは、前月号でご紹介したもの以降、6月末までに掲載したものをまとめて紹介いたします。

【北 米】

1 (令和2年6月9日付)USDAとFDA、新型コロナウイルス感染症拡大が続く中、食料供給チェーン保護強化に関する覚書を締結(米国)

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大が続く米国においては、安全で十分な量の食料供給チェーンを確保する方策が講じられているところであるが、米国農務省(USDA)と米国食品医薬品局(FDA)は5月19日、大統領令13917号(注1)を実行するための次の段階として、果物および野菜の加工施設を含むFDAの監督する食料施設の操業停止を防止することを目的とした覚書(注2)を締結したことを発表した。
 本覚書には、FDAが行う事項について6項目、USDAについて同3項目、両機関の合意事項について2項目が明記されており、本覚書の発効に伴い、FDAの管轄下にある食品の製造、加工、包装、保管を行う国内食品関連施設および食品の栽培や収穫を行う施設に関して、USDAが(大統領令13917号によって農務長官が大統領から委任された)国防生産法に基づく権限を行使するための手順が作成されることとなる。
 本発表では、米国内で栽培された多くの果物や野菜が冷凍施設や缶詰工場に送られる収穫の最盛期を迎えようとしていることから、同覚書によりこれら施設の操業を担保することは重要な取り組みであるとしている。
 また、FDAは今後も州や地方の規制当局と協力していくものの、食品供給の継続性を確保するため、必要に応じて国防生産法に基づくさらなる措置が講じられる可能性があり、必要があれば、州、地方などの規制当局や公衆衛生担当部局、産業・産品部門、保健福祉省疾病対策予防センター(CDC)や労働省労働安全衛生庁(OSHA)などの関係者と協議の上、労働者の安全性を確保しつつ、施設の操業再開や維持に向けた道筋を示すとのことである。
 さらに本発表では、USDA、FDAのどちらに規制されているかに関わらず、全ての食料・農業部門は極めて重要なインフラであり、労働者の健康と安全に関するCDCとOSHAのガイドラインに準拠して操業を継続することは公衆衛生のために不可欠であるとし、困難な状況下にも関わらず各家庭への食料供給のため毎日業務に携わっている労働者に対し、感謝の意を表している。

(注1) COVID-19に関する国家非常事態宣言が適用されている間において、国防生産法(Defense Production Act)に基づき、米国民にたんぱく質を供給し続けるために、牛肉、豚肉、鶏肉の食肉および家きん肉処理場が操業を続けることを命じる大統領令。本大統領令では、農務長官が、食肉および家きん肉処理場以外に、特定の食料供給チェーンの供給源を認定できるとされており、今回の覚書により、USDAの管轄外であるFDAの管轄下の食品施設を認定する際の合意事項が定められた。詳細は海外情報「トランプ大統領、食肉・食鳥処理場の操業継続を命じる大統領令を発出(米国)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002691.html)を参照されたい。
(注2) 覚書(PDF): Memorandum of Understanding (MOU)                               
https://www.usda.gov/sites/default/files/documents/mou-between-fda-usda-dpa.pdf

 

(国際調査グループ 藤原 琢也)

2 (令和2年6月9日付)外食支出額、2019年は過去最高も2020年2月以降急落(米国)

 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)が6月2日に公表した「Food Expenditure」によると、2019年の食品支出額(名目ベース、アルコール飲料を除く)は、家庭内食品支出額が7994億米ドル(86兆3352億円:1米ドル=108円)、家庭外食品(外食)支出額が9694億米ドル(104兆6952億円)といずれも前年を上回り、過去最高を更新し続けている(図1)。また、物価変動を考慮した実質ベースでも、緩やかながら同様の傾向で推移している。
 
 
 2019年の家庭内食品支出額(実質ベース)を業態別に見ると、最も割合の多い「食料品店」は、5年前の2014年と比べて12.6%増加し、全体に占める割合は58%(2014年と同水準)となった(図2)。次いで割合の多い「会員制大型ディスカウントストア、スーパーセンター(注)」は、2014年比で13.6%増加し、全体に占める割合は22%(2014年と同水準)となった。なお、「通販・宅配」は、全体に占める割合が3%と小さいものの、2014年比で36.0%増と増加率が最も高かった。
 

(注) 非食品のディスカウントストアに食品スーパーやドラッグストア等を組み合わせた大型店舗
 
 2019年の家庭外食品支出額を業態別に見ると、ファストフード店などの「注文・支払がレジカウンターやドライブスルーで行われる飲食店」は、5年前の2014年と比べて24.7%増加し、全体に占める割合は39%(2014年比4ポイント増)となり、最も割合の多い業態となった(図3)。次いで割合の多い「完全なテーブルサービスを提供するレストラン」は、2014年比で9.2%増加したものの、全体に占める割合は35%(同1ポイント減)となり、2番目に多い業態に順位を落とした。
 

 直近の月別食品支出額(名目ベース)を見ると、2020年1月まではほとんどの月で「家庭外」が「家庭内」を上回っており、外食比率(食品総支出額のうち家庭外食品支出額が占める割合)は50%台前半で推移してきた(図4)。
 
 
 米国では他国と同様、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で各州において外出制限の動きが広がったことなどから、2月および3月の「家庭内」の支出額は対前年同月比でそれぞれ7%増、20%増となったものの、「家庭外」の支出額がそれぞれ37%減、50%減と大幅に落ち込んだことから、全体の支出額もそれぞれ16%減少した。この結果、2月の外食比率は38%(前年同月比14ポイント減)、3月は31%(同21ポイント減)となった。5月以降、外出制限を緩和する動きが出てきており、「家庭外」がどの程度の期間でどこまで回復するのか、今後の動向が注目される。
(国際調査グループ 河村 侑紀)

3 (令和2年6月12日付)食肉・食鳥処理場の処理能力、前年同時期の95%超まで回復(米国)

 既報(注1)の通り、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大による操業停止、一時休業などが行われていた米国の食肉・食鳥処理場の処理能力は、前年同時期の95%超まで回復している。
 米国農務省(USDA)は6月9日、パーデュー農務長官が米国の重要なインフラである食肉・食鳥処理場が安全に再開していることを称賛したというプレスリリースを発出した。
 同プレスリリースによると、6月9日朝の時点で、牛、豚、ブロイラーの処理能力はすべて前年同時期の95%以上(牛肉処理場は同98%、豚肉処理場は同95%、食鳥処理場は同98%)に達しているとしている。
 また、米国の食肉・食鳥処理場は、保健福祉省の疾病対策予防センター(CDC)と労働省の労働安全衛生庁(OSHA)が示したガイドラインの順守を命じた国防生産法に基づく大統領令(注2)に従い、安全性を担保しつつ(注3)操業を再開しているとしている。
 さらにパーデュー長官は、同プレスリリースにおいて、「トランプ大統領は、米国の食肉・食鳥処理場が安全な方法で再開し、米国の生産者や牧場主が自分たちの生産物を市場へ確実に出荷できるようにするため、決断力のある行動をとった。国民を支えようと食肉・食鳥処理場の従業員、企業、地元当局が迅速に操業を再開したことは国を挙げて称賛するにふさわしく、食肉・食鳥処理場に食料を依存している何百万人もの米国人に対し、素晴らしいさまざまな食肉を再び提供してくれたことに感謝する」とコメントしている。
 米国の食肉市場は、食肉・食鳥処理場の稼働率低下やレストランの休業などによる需給両面での混乱から卸売価格が乱高下するなど混乱の様相を呈している。実際に4月のと畜頭数を見ると、牛が前年同月比78.5%、豚が同88.9%、ブロイラーが同98.8%とそれぞれ減少したが、食肉・食鳥処理場の稼働率が回復することで、5〜6月以降の供給面での不安が払拭ふっしょくされ、市場の安定化、沈静化が期待されるところである。

(注1) 海外情報「米国の大手食肉パッカー、相次ぎ操業停止」                                 
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002678.html
(注2) 海外情報「トランプ大統領、食肉・食鳥処理場の操業継続を命じる大統領令を発出(米国)」                 
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002691.html
(注3) 海外情報「食肉・食鳥処理場の操業維持に関する大統領令に基づき、米農務省が対応を講じる(米国)」            
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002695.html

(参考) USDAプレスリリース https://www.usda.gov/media/press-releases/2020/06/09/americas-meatpacking-facilities-operating-more-95-capacity-compared(令和2年6月10日閲覧)
 
(国際調査グループ 藤原 琢也)

4 (令和2年6月29日付)農業界は共同で第1段階の米中経済貿易協定を支持する書簡を発出(米国)

 6月16日、米国農業団体や企業を含む約200もの関係組織らが連名で、トランプ大統領や米国農務省(USDA)のパーデュー長官などに、第1段階の米中経済貿易協定(以下「協定」という)を支持する内容の書簡を送った。
 書簡には、協定が締結されたことに対する米国政府当局への謝辞からはじまり、米国農業の短期的および長期的な成功と成長にとって協定は必要不可欠であり、農業部門における何百万人もの米国人の雇用の維持にも貢献しているという、米中貿易の重要性が記されている。また、現在の米国産農産物の中国向け輸出のペースは、協定での努力目標を下回るペースではあるが、米国の農家、牧場主、農村コミュニティは、中国が今後輸入ペースを加速させて目標を達成するとして、依然として楽観的であると、中国の今後に対する期待感を述べている。
 2020年の米国農業総所得は昨年比で9%に相当する110億米ドル(1兆1880億円、1米ドル=108円)の減少が予想されている中、協定による米国産農産物および食品の中国向け輸出はかつてない素晴らしい好機であり、米国農業の雇用を増加し、製造、包装、保管、輸送、物流、重要な港湾ネットワークの維持など、サプライチェーン全体の経済活動をさらに強化するためのメカニズムを提供するものである。また、中国はカナダ、メキシコに次ぐ3番目の米国産農産物の輸出先であり、中国で急速に成長している中産階級は、米国にさらなる輸出機会を提供するものであると、書簡の中で米中貿易の必要性を繰り返し強調している。
 2020年2月14日に発効した協定により、この書簡において協定による好影響とされた項目や、その他これまでに中国向けの輸出アクセスが改善された項目は以下の通り。

トウモロコシ
 中国は、世界需要のほぼ25%を占めている巨大市場である。米国産トウモロコシは2013年後半から遺伝子組み換え作物(GMO)の問題により、中国におけるシェアが90%超から10%未満に減少したため、協定によるGMOの取り扱いが改善されることが期待されている。

大豆
 2017年は大豆の輸出額は139億米ドル(1兆5012億円)にのぼり、中国向けの米国産農産物の輸出額の52%を占めていた。その後、2018年以降の報復関税によって輸出量は大きく減少したが、2020年の輸出量は増加傾向にあり、協定による農産物の購入目標が影響していると考えられる。

家畜飼料
 協定により、加工用の米国産大麦、飼料用の乾草チモシー、アルファルファのペレットとキューブ、アーモンドミールのペレットとキューブなどの家畜飼料の輸出解禁やトウモロコシ蒸留粕(DDGS)などの家畜飼料を扱う輸出施設リストの更新が行われた。

牛肉
 2017年に中国は米国産牛肉の輸入を再開したが、それまでに13年間もの時間が費やされた。そして、協定により、30カ月齢超の牛由来の牛肉または牛肉製品の輸入制限が撤廃され、米国の牛肉生産で使用が認められている3種類の成長ホルモン(ゼラノール、 酢酸トレンボロン、 酢酸メレンゲステロール)の中国における最大残留基準値の設定、中国向け輸出施設リストの更新など、輸出アクセスの改善がもたらされている。また、2019年には最大で47%であった報復関税は、現在は12%まで削減されており、協定による恩恵が大きいとしている。

豚肉
 中国は米国産豚肉にとって非常に重要な市場であり、協定により、中国向け輸出施設リストの更新が行われたほか、2019年には最大で72%であった報復関税は、現在は33%まで削減されている。報復関税により中国市場での米国産シェアは減少したため、協定により低関税を維持することが、欧州やブラジルなどの競合国との競争において重要であるとしている。

家きん肉
 協定により、米中両国は、米国で高病原性鳥インフルエンザまたは病原性ニューカッスル病の発生が確認された場合において、疾病発生の影響を受けない地域からの輸出を継続することを認める地域主義協定への署名を行った。中国産家きん肉については、中国における当該疾病の清浄化が確認された後に、本地域主義が適用されることとなっている。

乳製品
 中国は米国酪農業界の将来的な成長にとって非常に重要な市場であると位置付けており、協定により、ヒト用の乳限外ろ過粉末の輸出解禁につながる中国国内の基準の公表や中国向け輸出施設リストの更新が行われた。しかし、米国産乳製品に対して賦課された報復関税は維持されたままになっている。

ペットフード
 協定により、家きん肉由来原料を含むペットフード製品の輸入解禁や反すう動物由来原料を含むペットフードの輸入制限の撤廃が行われた。

 協定で合意された条項のうち、すでに実施されている条項とまだ実施されていない条項が存在しているため、米国農業の分野によっては協定の恩恵に濃淡があるようにみられる。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などによる影響で、中国が協定発効から2年以内に米国から農産物や工業製品などを購入するという目標を達成するペースで購入が進んでいないことなどを懸念する声や、米中間のさまざまな問題が存在する状況においても、米国農業界としては、協定を維持することにより、米国産農産物の輸出先を確保し、今後の先行きを少しでも明るいものとすることが最優先であるという意思が感じられる。
 なお、中国海関総署(日本でいう税関)は6月21日、米国の食肉大手パッカー・タイソン社スプリングデール工場でCOVID-19が発生したことを理由に、同工場からの鶏肉輸入を停止したことを発表したほか、中国は香港で導入された新たな国家安全保障法制について、トランプ大統領が批判したことへの対抗措置として、豚肉、大豆など米国産農産物の一部の輸入停止を示唆したことが報じられている。一方、6月24日、USDAと米国の食品安全医薬品局(FDA)は諸外国によるCOVID-19に関連した食品輸入制限は科学に基づく対応ではないため、適切な対応を促す共同声明を発出している。協定合意の履行については政治的課題も含めさまざまな要因が混在し、複雑性が増している状況と考えられ、今後も注視していく必要がある。

【参考(リンク先)】
・海外情報「米中経済貿易協定の第1段階の合意と農業団体の声明(米国)」(令和2年1月23日発)https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002600.html
(国際調査グループ)

【欧 州】

1 (令和2年6月11日付)EU農産物・食品飲料団体ら、英EU・FTA交渉が難航していることにリスクが高まっていると懸念を表明。「合意なし」の場合、移行期間の延長、代替案の措置を要求

 欧州連合(EU)最大の農業生産者団体である欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(COPA-COGECA)(注1)、欧州食品飲料産業連盟(Food Drink Europe)(注2)、欧州農産品貿易連絡委員会(CELCAA)(注3)の三者は連名で6月4日、英国とEUの第4回交渉終了を前に、これまでの3回の交渉で進展がなかったこと、また、移行期間終了の2020年12月31日までに合意が得られないリスクが高まっているとして懸念を表明した。
 三者はプレスリリースの中で、EUの対英国農産物・食品貿易額は、2019年に580億ユーロ(7兆2500億円:1ユーロ=125円)に達しており、関税および割当数量のない自由貿易協定(FTA)の締結に失敗すれば、EUと英国双方の農産物・食品部門に深刻な影響を及ぼすことになるとした。また、関税導入に加えて関連規制の相違が伴えば、サプライチェーンに著しい混乱を招くとした。
 三者は、双方の混乱を限定的にすることに焦点を当てるとし、具体的には、将来のEUと英国の貿易協定において、次のことを確保することが不可欠であるとした。

・関税、手数料や課徴金、割当数量を導入しないこと。
・EUと英国間の公平な競争条件の確保。EUおよび英国の事業者間の公正な競争を確保するために不可欠なものである。
・衛生植物検疫(SPS)措置および規格基準に関する高度な協力に加え、その適用の相違を最小限に抑えること。さらに、欧州食品安全機関(EFSA)および英国食品基準庁(FSA)の緊密な関係維持が最も重要である。
・税関審査と事業上手続きの負担を軽減するための税関協力。
・EUおよび英国の事業者のみを優遇しうる効果的な原産地規則。
・EU単一市場の一貫性を保持するため、アイルランド・北アイルランドに関する協定が確実に実施されること。
・将来にわたるEUおよび英国の地理的表示(GI)の相互保護。

 また、現在は2020年末までの移行期間にあるが、特に貿易協定の締結および批准までの時間が限られていることを懸念し、英国政府が移行期間延長に反対していることに遺憾を示すとともに、移行期間は、事業者らの混乱を回避するため十分な長さを確保すべきであるとした。
 そして、移行期間内に FTA 締結ができない場合に備えて、2021年頭から実施することが可能な、代替案の検討を強く要求するとした。関税と割当数量のない自由貿易を維持する必要があるとし、それが、すでに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による重大な影響に対応している事業者らの混乱を最小限に抑えながら、交渉担当者たちにさらなる時間を与えることになるであろうとした。
 三者はプレスリリースの最後で、合意が得られず、移行期間の延長もされない場合、EUの農産物・食品部門にとって、EUから英国への輸出量の大幅な減少、収入の大幅な減少、そして、結果的には雇用の喪失という深刻な問題が起こるであろうとした。また、その影響は、中小企業、生産者、農業協同組合へ特に大きなものになるとし、移行期間の延長有無の判断も含むこれまでの交渉の進捗評価のために、6月中に予定されている首脳級会合の中で今回の懸念が考慮され、交渉プロセスが迅速かつ建設的な方法で進むことを期待しているとした。また、野心的で高いレベルの合意に向け、英国とEUの双方に対し、公平な競争条件を確保し、双方にとって最善の結果をもたらす質の高い成果を達成するための十分な時間を確保することを強く勧奨するとした。
 EU離脱協定では本年6月末までの間、双方の合意により1回に限り1年から2年、移行期間を延長することができる。欧州委員会のミシェル・バルニエ首席交渉官は6月5日、ビデオ会議で行われた今回の交渉を終え、移行期間延長に反対する英国の立場に言及した上で、批准手続きにかかる時間を考慮すれば、本年10月末までに最終合意に達しなければならないとし、移行期間の1年ないし2年の延長の「扉は開かれている」とするEU側の立場を繰り返した。また、交渉における英国の立場が、「公平な競争条件の確保」、「マネーロンダリングおよびテロ活動への資金供与への対策」、「漁業」などの点において、2019年10月に両者が合意した政治宣言の内容に合致していない点を強く指摘し、これらが主要な論点であると述べている。

(注1) 欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(COPA-COGECA)とは、EU加盟国の2300万人以上の農業生産者によって構成されるCopa(欧州農業組織委員会)および2万2000の農業共同組合により構成されるCogeca(欧州農業協同組合委員会)により組織されたEU最大の農業生産者団体。CopaおよびCogecaは、独立した組織であるものの、両者は共同で事務局を設置し、主にロビー活動を行っている。
(注2) 欧州食品飲料産業連盟(Food Drink Europe)とは、EU加盟国の29万4000社の事業者と470万人の労働者で構成されるEU最大の食品製造業団体。取引量はEU全農産物の70%を占める。
(注3) 欧州農産品貿易連絡委員会(CELCAA)とは、EU加盟国の3万5000社の農産物貿易事業者で構成されるEU団体。穀物、飼料、砂糖、ワイン、食肉、乳製品、青果物、卵、香辛料、切り花などの農産物を対象としている。

 
(国際調査グループ)

2 (令和2年6月16日付)英国政府系農業団体、コロナ禍の消費動向調査結果を公表。ロックダウンによりひき肉や鶏肉の需要が増加

 英国農業園芸開発公社(AHDB:Agriculture and Horticulture Development Board)は6月5日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による影響として、同国で実施された都市封鎖(ロックダウン)の影響を含む消費動向の調査結果をホームページ上で公表した。
 調査は英国調査会社YouGov社と共同で4月に実施したものである。なお、英国のロックダウンは3月23日から実施され、5月以降徐々に緩和されている。

消費者行動・料理習慣の変化
 家で過ごす時間が増えたことで、家庭で食事をする機会が増えた。家庭で料理を楽しむ人の割合は、ロックダウン前(72%)と増減はないものの、全体の回答者のうち27%が以前よりも食材を「一から料理する」ようになったと答えた一方、出来合いの食事を持ち帰る(take away)ことが減ったとする回答者は48%に上った。「一から料理する」機会の増加は、汎用性の高い牛ひき肉や鶏むね肉などの利用拡大につながり、調査期間の牛ひき肉販売量は前年比36%増、鶏むね肉は同33%増であった。

価格・品質
 価格に対する消費者意識は、食費を抑えているとした者とそうではない者が同じ3分の1程度となり、コロナ禍によるさまざまな影響から二極化も見られているという。一方、外食については、他者との接触の回避や家計が厳しくなった影響を受けており、3分の1以上が節約のために外食を減らしたとしており、その中でも高価格帯のレストランを利用していた者は外食をやめて、高価格帯の食品を小売店で購入するようになった一方、食費を削減する目的で外食を減らしたとする回答者は、より小売店から廉価な価格帯の食品を購入しているとされている。

健康面
 一般的に、消費者の意識が価格などに向けられる場合、健康の優先順位は低いものになる傾向にあり、健康に良いとされる食品の摂取を減らすこともあり得る。しかしながら、ロックダウンによって体を動かす機会が減少していることから、食品を通して健康維持を求める傾向があるという。調査によれば、インターネットで健康的という言葉とともに、レシピを検索する件数はロックダウン期間中である4月において、増加が見られたという。

食肉、乳製品、ばれいしょ(注)
 ロックダウンにより買い物回数が減少したことから、食肉、乳製品、ばれいしょの購入に当たって、消費期限などの重要性が増している。ロックダウン下での購入に当たり重視した点は、食肉に関しては、消費期限などが41%、価格が25%、容量が21%、乳製品に関しては、消費期限などが36%、容量が17%、価格が16%、ばれいしょに関しては、消費期限などが33%、英国産または地元産であることが19%、容量が18%であった。

 AHDBは、ロックダウンの実施以降わずか2カ月の間で、英国の消費動向は大きく変化し、その影響は、ロックダウンが緩和していく中にあっても、大きく残るものと考えている。小売業にあっては、ロックダウンが緩和されていく中、変化する消費者ニーズへの適応が重要であるとしている。

(注) AHDBの業務対象品目
(国際調査グループ)

3 (令和2年6月29日付)EU乳業団体、進展の見られない英国との交渉に懸念を表明し、英・EU間のサプライチェーンが維持されるよう要請

 欧州乳製品輸出入・販売業者連合(EUCOLAIT:European Association of Dairy Trade)(注)は6月16日、英国が移行期間の延長を検討しないと表明していることから、ハードブレグジット(強硬離脱)を回避するためには、批准手続きにかかる時間を考慮すると本年10月末までに欧州連合(EU)と英国の自由貿易協定(FTA)に最終合意しなければならず、残り4カ月しかないとして懸念を表明した。
 EUCOLAITは、今回の問題は、現在進行中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行とその経済的影響によってさらに複雑化しているとした。また、EUCOLAITの基本姿勢は従前から変わらず、「将来のEU・英国間の貿易関係は、関税、割当数量、または不必要な非関税障壁がなく、自由に貿易ができ、できる限り現状に近いものにすべきである」とした。
 英国が今年末に単一市場と関税同盟から離脱することを考えれば、限られた期限内に包括的な貿易協定に合意する強い政治的意思が必要であり、協定は可能な限り簡略にする必要があるとした。

関税、量的制限の非適用
 EUCOLAITは、現在、EUと英国の乳業メーカーは統合されたサプライチェーンの中で事業を展開しているため、2021年1月にEU・英国間の貿易にEU域外関税が適用されることとなれば、その打撃は大きく、試算によれば現在の貿易の90%以上が解消されると見込まれるため、関税のないアクセスを維持することが最も重要であるとした。
 EUから英国向けの乳製品輸出は年間35億ユーロ(4270億円:1ユーロ=122円)を超え、最大の仕向け先となっている。輸出の大半はチーズだが、ヨーグルト、バター、育児用調製粉乳、飲用乳も相当量輸出している。一方、英国からのEU向け輸出は、同20億ユーロ(2440億円)近い。
 移行期間が終わり、英国との貿易に域外関税が課されると、英国からEUに輸出される乳製品の価格競争力が低下するだけでなく、従来英国からEUに輸出されていた製品が英国内の市場に出回ることとなるため、これにより、EUからの輸出品は、さらにシェアを奪われることになる。乳製品の自給率が低い英国では、チーズを主とした多くの乳製品の輸入が継続されなければ、製品不足と価格の高騰などが起こると同時に、EUでは、COVID-19により域内の需給が不安定になっているところに、代替の輸出市場を探す必要性に迫られることとなり、乳価下落は避けられないであろうとした。

特恵原産地規則
 EUCOLAITは、乳製品に関しては、EUが締結しているほとんどのFTAで用いられている一般的な原産地規則と大きく異なる規則は必要ないとした。一般的な乳製品(HS4類)については、EU域外の国との貿易においては「完全生産品」による判定基準を用いる必要があるが、英国との貿易においては、EUおよび英国産原料の両方が認められるべきであり、加工製品(HS19類の栄養機能食品など)については、同製品に利用される一部の原材料について欧州での生産量は限定的であることから、非原産乳成分の閾値を重量ベースで20%かそれ以上に引き上げるなどより柔軟性を持たせるべきであるとした。

公平な競争条件
 EUCOLAITは、今回の交渉で最も難航している公平な競争条件の維持について、打開のためには現実的な解決が急務であるとした。欧州理事会で採択された交渉指令では、広大なEU市場にアクセスするためには、環境保護、労働基準、競争、食品安全などの分野での妥協のない約束を通じた公平な競争条件の維持が条件であると提案されており、両者とも2019年10月に合意したEU離脱に関する政治宣言で定められた原則を実現すべきではあるものの、規制の自由を取り戻すためにEU離脱をするという英国の選択も尊重される必要があると、英国側の立場にも一定の理解を示した。そのため、EUCOLAITは、EUがカナダや日本などの他の貿易相手国に対して、非常に包括的な市場アクセスを認めているにもかかわらず、包括的かつ公平な競争条件に関する規定を設けていないことに言及し、EUの一員であった英国のこれまでの実績を見れば、関連する分野でEUに比較して基準を引き下げるようなことが起きるとは信じがたいことから、英国をEUのアキ・コミュノテール(EUにおいて蓄積された法体系の総称)に縛り付けるのではなく、広く同等の成果を得ることに焦点を当てるべきだとした。

通関の円滑化
 EUCOLAITは、通関の円滑化を強めることが重要であるとした。完全に見解の相違のない国境措置は不可能であり、決まりにのっとった税関手続きと国境管理が必要であるとした上で、英国とEUの長年の関係性による信頼性を考慮し、EUの税関の規約の枠組み内で可能なあらゆる手段を最大限に活用すべきとした。

食品衛生および動物衛生の解決策
 EUCOLAITは、食品安全と動物衛生の分野で、継続的な連携と協力を期待するとした。EUと英国との間にすでに完全な連携が構築されていることに言及し、食品安全に係る規則は将来にわたってEUと英国間で完全に合致する必要はないものの、円滑な取引を維持するために十分な程度の類似性は保たなければならないとした。
 また、EU・スイス間で乳製品を輸出入するに際に衛生検査を求めていないことを例に挙げ、英国との間でも同様の措置をとるよう要請した。さらにEU・英国間で食品安全上の問題に引き続き一貫性を確保するための規制委員会を設置すべきとした。

結論
 EUCOLAITは、関係の維持が両者の利益になることは明らかであるとした上で、英国の要望するEU規則や政策からの離脱には現実的な解決策が必要であるとした。また、EU加盟国以外の国が加盟国と同等の利益を供与されるべきではないとしながらも、不必要なハードルを追加して事態を悪化させるべきではないとし、EUと英国の市民や事業者のため、強固な関係性の維持に焦点を当てる必要があるとした。
 そして最後に、乳製品貿易において、税関手続き上起きうる多少の摩擦への対処は可能であるものの、EU・英国間の乳製品のサプライチェーンが維持されるためには、その他の貿易条件に変更がないままであるべきだと強調した。

(注) EUCOLAIT(欧州乳製品輸出入・販売業者連合)は、EUにおける乳製品の輸出促進のための組織であり、乳業、乳製品輸出業者、卸売事業者などのEU加盟国を中心とした500者以上の主要企業・団体が加盟している。

【参考:新型コロナウイルス感染症関連の情報(欧州)】
海外情報「EU農産物・食品飲料団体ら、英EU・FTA交渉が難航していることにリスクが高まっていると懸念を表明。「合意なし」の場合、移行期間の延長、代替案の措置を要求(1番の情報)」
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002724.html

 
(国際調査グループ)

【南 米】

1 (令和2年6月19日付)新型コロナウイルス感染症の拡大による食肉検査への影響(第3回報告)(ブラジル)

 ブラジル農牧食糧供給省の農牧防疫局 動物製品検査部(DIPOA/SDA/MAPA)は6月16日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大による連邦検査サービス(SIF)の検査への影響について3回目の報告書を公表した。この中で2020年1〜5月の食肉処理場での検査状況および食肉処理場の停止状況について報告している。なお、動物由来の製品検査と衛生認証は、2020年3月20日政令10282号によって国民の生存、健康、安全のために不可欠なものと定義されている。

2020年4月における食肉処理場での検査状況
 ブラジルでは、州を超えた取引や輸出される動物製品の場合には、SIFの検査を受けることが義務付けされている。2020年4月に検査された牛の頭数は、前年同月比19.4%減となった(表1)。なお、牛については、COVID-19がブラジルで本格的に拡大する前である1、2月においても前年を下回っていた。また、豚については同0.2%減とほぼ前年並み、家きんについては同1.4%増と前年をわずかに上回った。
 
 
 5月は集計中であるが、一部の食肉処理場で稼働が停止した一方で(詳細は後述)、SIFに登録されている牛のと畜場のうち、8%に当たる18カ所で通常の勤務に加え、シフト時間の延長やと畜日の増加による追加の検査要請があり、そのうち95%で検査が行われた。また、豚については29%に当たる26カ所、家きんについては38%に当たる49カ所で追加の処理にかかる検査要請があり、それぞれ95%、94%で追加の検査が行われた。
 なお、同報告の中で、5月の家きんのSIF検査件数は前年を上回ると見込んでいる。

食肉処理場の停止状況
 DIPOAは、食肉処理場でのCOVID-19関連状況などの最新情報を得るために、関連企業や生産部門の責任者と連絡を取り合い、監視の役割を果たしている。今回の報告書によれば、5月には47カ所の食肉処理場が活動を停止した(表2)。ただし、停止日数はそれぞれの食肉処理場によって異なり、5月中に稼働が再開した処理場もあるとしている。
 

 

【参考(リンク先)】
・第3回目レポート(2020年6月16日公表、最終閲覧日:2020年6月17日)
https://www.gov.br/agricultura/pt-br/assuntos/noticias/relatorio-mostra-andamento-dos-servicos-de-inspecao-e-fiscalizacao-de-produtos-de-origem-animal-no-pais/copy_of_3RelatoriodeatividadesSIF.pdf

・新型コロナウイルス感染症の拡大による食肉検査への影響(第2回報告)(ブラジル)(7月号 南米1番の情報)
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002697.html
 
(国際調査グループ 山口 真功(現畜産経営対策部))

2 (令和2年6月25日付)食肉処理場などにおける新型コロナウイルス感染症に対するガイドラインを定めた省令を公布(ブラジル)

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の急速な拡大が続いている中、農牧食糧供給省(MAPA)および経済省(ME)、保健省(MS)は共同で、食肉処理場や乳製品工場などにおけるCOVID-19の感染を防止・管理・抑制するためのガイドラインを定めた省令を公布した。なお、当該ガイドラインは労働検察庁(MPT)との協議を経て作成され、労働者の安全と健康、国民への食料供給、雇用、経済活動の確保を目的としている。
 先月、ブラジル政府はすでにCOVID-19拡大に対処するための食肉処理場への勧告を盛り込んだ対策プロトコルを公表していた。しかしながら、6月19日(金)に当該ガイドラインを定めた合同省令第19号が官報に公布され、対策プロトコルの替わりに公布日から施行されたことから、関係者は当該ガイドラインを順守する必要がある。

ガイドライン(一部抜粋)
・COVID-19の感染確認者、感染が疑わしいと思われる者および感染確認者の接触者である従業員を14日間出勤停止にすること。
・従業員間の距離は最低でも1メートル以上とすること。難しい場合には勤務時間帯をずらすことに加え、個人保護具と外科用マスクを着用し、耐水性のパーティションを従業員の間に設置するか、プラスチックのフェイスシールドを使用すること。
・個人保護具などの使用や処分について、COVID-19に対応した手続きを整備し、従業員を指導すること。
・企業は、可能な限りリモートワークを推進し、入退所時の従業員の混雑を避けるための措置を講じること。
・空気の再循環を避け、外からきれいな空気を取り入れるよう対策を講じること。
・企業が食堂や更衣室、従業員の送迎などを提供する場合は、対策を強化すること。

 また、稼働再開の要件として、全従業員の検査は義務付けず、産業医による従業員のスクリーニングでCOVID-19感染者、感染が疑わしいと思われる者および感染確認者への接触者を出勤停止にすることや、再開前に施設などを消毒する必要があること、従業員の検査を実施する場合は、実施方法や検査結果の解釈については、保健省が推奨する方法に従うことなどが義務付けられている。
 テレーザ・クリスティーナMAPA大臣は、「この省令により、COVID-19が拡大している中で、食肉処理場の従業員の安全性を高め、通常業務および生産の継続、ひいてはブラジル国内や海外に向けて食料供給を可能にする、調和のとれた活動がもたらされるだろう」と述べている。

【参考(リンク先)】
ガイドラインを定めた合同省令第19号が掲載された官報(最終閲覧日2020年6月22日)
http://www.in.gov.br/en/web/dou/-/portaria-conjunta-n-19-de-18-de-junho-de-2020-262407973

 
(国際調査グループ 山口 真功(現畜産経営対策部))



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