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特集:海外の食肉需給の動向について〜新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえて〜畜産の情報 2021年2月号

近年の米国の豚肉需給状況〜新型コロナウイルス感染症の影響も踏まえ〜

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調査情報部 国際調査グループ

【要約】

 欧州やアジアにおけるアフリカ豚熱の発生、中国との貿易摩擦に伴う報復関税、昨春以降の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、米国の養豚業界は多くの困難にさらされた。COVID-19により、米国産豚肉の需給状況は一時的に大きな影響を受けたものの、現在は落ち着きを取り戻している。COVID-19の再流行による大規模な都市閉鎖や米国へのアフリカ豚熱の侵入などの特殊要因がなければ、今後の豚肉生産量や輸出量は堅調に推移すると考えられる。

1 はじめに

 近年、米国の豚肉生産量は堅調に増加し続けており、今後も生産量の増加傾向は続くものとみられていた。しかし、直近では欧州やアジアにおけるアフリカ豚熱の発生や、中国との貿易摩擦に伴う報復関税などにより、国際的な豚肉需給状況は大きな変化が見られている。また、昨春以降の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、食肉処理場(以下「処理場」という)の一時閉鎖やそれに伴う豚の殺処分、一時的な生産体制の混乱による豚肉価格の乱高下など、米国の養豚業界は大きな影響を受けている。本稿では、こうした米国の豚肉需給状況について報告する。
 なお、本稿中の為替レートは、1米ドル=105円(2020年12月末日TTS相場:104.5円)を使用した。

2 近年の米国豚肉需給をめぐる情勢

 2018年における米国の豚肉産業は、米国の農畜産物販売額の6%に相当する209億米ドル(2兆1945億円)の販売額を記録し、主要な畜産業界の販売額では、肉用牛、酪農、ブロイラーに次ぐ第4位の産業となっている(図1)。


 
 米国は世界的な豚肉需給において、生産量および消費量では中国とEUに次ぐ第3位、輸出量ではEUに次ぐ第2位であり、米国産豚肉の需給動向が世界需給に与える影響は大きいものとなっている(図2〜5)。近年、中国では2018年8月に確認されたアフリカ豚熱が国内でまん延した影響により、2019年には豚の飼養頭数が前年比で最大約40%減少するなど、豚肉生産量が大きく減少したため、同国は輸入量を大幅に増加させている。
 






 
 米国の過去10年間における豚肉の需給状況に関する各データは以下の通りとなっている(表1)。

 
 
 過去10年間の推移を見ると、生産量については、2013年4月以降に発生が確認された豚流行性下痢(PED)の影響により、一過性の減少が見られたが、2015年以降は毎年増加傾向にある。消費量に関しても2014年以降は増加傾向にある。米国の人口は毎年増加しているが、1人当たりの消費量が拡大し続けていることから、単純な人口増加に伴う消費量の増加だけでなく、消費者の豚肉嗜好が高まっている傾向があると思われる。
 輸出量に関しては生産量の増加に相関するように増加傾向にあり、おおむね生産量の20%超を輸出が占めており、輸出に依存する割合は大きい。輸出量を輸出先別に見ると、2010〜14年は日本が最大の輸出先であったが、2015年以降はメキシコが最大の輸出先となっている(図6)。輸出額では、日本は長年にわたり最大の輸出先であったが、2019年にはアフリカ豚熱の影響を受けた中国・香港向けが急増し、日本に肉薄している(図7)。


 
 
 
 なお、米国は世界有数の豚肉生産国かつ輸出国であるため、輸入量は消費量の5%弱と量は少ないが、カナダからは一定量が毎年輸入されている(図8)。

3 米国産豚肉の中国向け輸出について

 2018年3月、トランプ政権は通商拡大法232条(注1)に基づき、多くの国々からの鉄鋼とアルミニウム製品に対して追加関税を賦課した(表2)。この鉄鋼とアルミニウム製品に対する追加関税をきっかけに、同年4月には中国が米国産豚肉に対して報復関税を賦課することになった。米国は、増加し続ける対中貿易赤字や中国による知的財産権の侵害などの問題を抱えていたこともあり、同法301条(注2)に基づき、中国に対してさらなる報復関税を賦課し、双方で報復関税を掛け合う事態となった。これまでは、中国は米国産豚肉に対しては、世界貿易機関(WTO)協定に基づく最恵国待遇(MFN)関税を適用し、冷蔵豚肉は20%、冷凍豚肉は12%の水準であった。その後、関税率が徐々に引き上げられ、2019年9月には冷蔵豚肉は80%、冷凍豚肉は72%というピークに達した。しかし、2020年は冷凍豚肉の暫定税率が8%に引き下げられ、第1段階の米中経済貿易協定が発効した同年2月14日以降は2019年9月に追加した報復関税の一部の関税率が引き下げられた。その後、同法301条に基づく追加関税に対する報復関税分が2020年3月2日から1年間免除された(輸入業者が関税当局に申請し、承認された場合に限り1年間免税される)。以上のことから、本年1月14日現在、冷蔵豚肉は45%、冷凍豚肉は33%となっている。

(注1) 対象製品の輸入が米国の安全保障を損なう恐れがある場合、当該製品の輸入を是正する措置を講じる権限が大統領に与えられている。
(注2) 貿易協定違反や米国政府が不公正と判断した他国の措置について、貿易協定上の特恵措置の停止や輸入制限措置などの貿易制裁を行う権限が米国通商代表部(USTR)に与えられている。
 
 
 上述の報復関税の影響により、米国産豚肉の総輸出量に占める中国向けの割合は2017年の6.8%から2018年には5.7%と減少したが、中国国内のアフリカ豚熱の影響が大きくなったために、2019年は16.0%まで増加しており、高率な報復関税が賦課された影響はあまり見られなかった。米国関係者の声として、中国向けに大きく依存していた米国産大豆は別として、中国が米国産農産物に対して高関税を賦課したとしても、中国はこれまで米国から輸入していた分を他国からの輸入に振り替え、米国は中国に輸出していた分を他国への輸出に振り替えるだけであり、中国による米国産農産物への報復関税の影響は大きくないという話が聞かれたこともあった。
 今後、懸念される事項として、中国は国内への新型コロナウイルスの侵入経路として、食肉や水産物などの輸入冷凍食品が原因の一つと考え、2020年6月以降、食肉や水産物の加工処理場の従業員にCOVID-19が確認されたことなどを理由にして、一部の加工処理場からの食品の輸入を停止するなどの措置を講じていることが挙げられる。本件については、米国だけでなく、カナダや豪州などの国々も中国の措置に抗議する一方で、同年9月21日、中国はWTOに対して、海外から輸入される冷凍食品に対して新型コロナウイルスの検査を実施する旨を通報し、輸入冷凍食品に対する監視を強化しており、今後の動向が注目される。

4 米国のアフリカ豚熱対策について

 2021年1月6日時点において、米国では豚熱やアフリカ豚熱が発生しておらず、アフリカ豚熱などの侵入防止対策に力を入れている。米国は世界有数の豚肉輸出国であり、生産量に占める輸出量の割合も大きいことから、国内でアフリカ豚熱などが発生し、同疾病が収束するまでに10年以上を要した場合には、輸出停止などの各種の損失額は最大で500億米ドル(5兆2500億円)に達するという試算も存在する(後出のコラム参照)。
 米国の養豚業界はアフリカ豚熱の侵入防止を図るため、人や物を介して伝播でんぱする同疾病の特性を考慮し、毎年アイオワ州で開催され、世界中から関係者が参加していたWorld Pork Expoについて、2019年の開催を中止した。これは、科学的な事実に基づく侵入防止対策というよりも、生産者の心理的な不安に配慮した判断であったように思われる。

空海港などの水際対策
 USDAは、米国税関・国境取締局(CBP)と協力し、中国を含むアフリカ豚熱の発生国・地域から到着した乗客や貨物に対して入国時検査を強化している。
 2020年3月3日、トランプ大統領は米国の食料農業保護法(Protecting America's Food & Agriculture Act of 2019)に署名し、同法が成立した。これにより、アフリカ豚熱などの動植物の病原体や病害虫の米国への侵入を防ぐため、CBPの職員や検疫探知犬の増強などが可能となった。同法により、2020年3月〜2022年9月の3会計年度において、毎年度、240名の農業検疫官および200名の農業技術者の増員、20の探知犬チームの追加、配置に必要な資金が確保された。
 米国では1984年にロサンゼルス空港に初めて検疫探知犬が配置されてから、全米各地の空港などへ配置が拡大し、2020年10月末時点で全米88カ所以上の空港に179の探知犬チームが配置されている。
 カナダやメキシコなど国境を接する国々とも協力して水際対策を行っており、同年6月には米国とカナダの首席獣医官が、アフリカ豚熱が発生した場合においても地域主義を適用し、発生区域以外からの豚肉などの輸出を認めることに合意した。
 一方、関係者によれば、COVID-19の影響に伴う米国への旅行者の激減により、水際検査のための資金確保が課題となっている。これまで、検査員や探知犬の配置拡充に要する費用の一部には旅行者による検査手数料が充当されていたが、COVID-19の影響により旅行者数は大幅に減少しており、このまま旅行者が激減した状態が長引けば、水際対策の資金確保が問題となる可能性も指摘されている。

地域や農場におけるアフリカ豚熱などの侵入防止対策
 万が一、国内でアフリカ豚熱、豚熱やFMD(口蹄疫)などの重大な家畜伝染性疾病が確認された場合、連邦政府による防疫対策指針に沿って、発生農場における豚の殺処分や消毒などの防疫措置や、他の地域へのまん延防止のために家畜や人の移動制限が行われることになっている。しかし、農場のバイオセキュリティを高め、これらの疫病の発生を未然に防ぐことを目的として、全米豚肉委員会(NPB)(注3)は、日本における飼養衛生管理基準に一部相当するような豚肉の安定供給プログラム(SPS:Secure Pork Supply)の実践を推奨している。SPSはUSDAの動植物検疫局(APHIS)と協力して設計され、2010年から開始された任意のプログラムであり、SPSに参加することにより、農場のバイオセキュリティ向上が期待され、万が一、米国内で重大な家畜伝染病が発生した場合、SPS参加農家は肥育豚の処理場への出荷などに関する移動制限の除外認定を受けやすくなるなどの利点がある。
 SPSでは主に以下の事項の実践が求められる。
・農場識別番号(PIN)の取得および提出
・農場バイオセキュリティ・プランの作成
・アフリカ豚熱などの家畜伝染性疾病を早期発見するための日常の観察、記録、報告
・豚、人、物などの移動記録の保管

 農場バイオセキュリティ・プランで求められる主な事項として、以下が挙げられる(図9)。
 
・バイオセキュリティ管理者の任命およびバイオセキュリティ・プランの作成
・農場作業者に対するバイオセキュリティに関する研修の実施
・病原体の侵入を防ぐために、豚を飼養するエリアを境界緩衝エリア(PBA)として設定
・豚舎など特に感染リスクの高いエリアに境界線(LOS)を設定
・農場労働者が豚を飼養する上で必要な作業はPBA内で実施し、外部との必要なやりとりはPBA出入り口で実施
・PBA内へ車両や物が出入りする必要がある場合、事前に洗浄・消毒ポイントで洗浄・消毒を実施
・LOSへの出入り口でも洗浄・消毒を実施
・各エリアや出入り口などは誰が見ても明らかであるように、ロープや標識などで明示
・農場や各エリアへ移動する豚、精液、人、物などのすべての出入りを記録
・死体の適切な処理(特に野生動物との接触を避ける)
・排せつ物の適切な処理
・野生動物やハエなどの害虫対策を実施
・家畜飼料の適切な保管
 

 
 これらの農場バイオセキュリティ・プランを作成し、SPS事務局に提出すると、その内容について検証が行われ、不備があれば修正が行われる。承認されれば、その後は実践が求められる。
 全米で最も養豚が盛んなアイオワ州のアイオワ州豚肉生産者協会によれば、同州内には約5600戸の養豚農家が存在するが、SPSには約500戸の養豚農家が参加しているという。

(注3) 法律に基づいて豚の取引の際に一定金額を徴収し、マーケティングや調査研究を行うチェックオフ機関。

コラム AgView

 2020年11月、全米豚肉委員会(NPB)はポークチェックオフ(注)による基金を活用して、豚の飼養情報に関するデータをオンライン上に集約し、関係者とそれらの情報を共有・活用するAgViewというプラットフォームの供用を開始した。

(注) 米国では生体豚の売買時や豚肉製品の輸入時に100米ドル(1万500円)当たり40セント(42円)がポークチェックオフに徴収され、その徴収金を養豚業界の研究や豚肉の販売促進費などに活用することが制度化されている。

 AgViewは任意かつ無料のプログラムであり、養豚農家および州の家畜衛生当局が参加するプログラムである。養豚農家がAgViewに豚の移動や健康状態など、豚の飼養状況に関する情報を入力し、その情報をプログラムの参加者と共有することにより、豚に関する情報がリアルタイムで入手可能となるだけでなく、農家と州の当局者との関係性が強化されることも期待されている。さらに、AgViewはアフリカ豚熱などの海外悪性伝染病などの疑い事例や家畜伝染性疾病の発生が確認された際に、現場となる農場の情報を関係者の間で即座に共有することで、その後の移動制限区域の設定などの迅速なまん延防止対策につながり、養豚業界全体に大きな効果があると期待されている。

AgViewに入力する基本情報
・農場の情報(農場識別番号(PIN)、経営形態(繁殖または肥育)、飼養頭数)
・州内および州外のすべての豚の移動に関する情報
・AgViewに参加している診断施設からの各種の検査結果

アフリカ豚熱が発生した場合に共有される情報
・発生農場の場所、経営形態、豚の飼養頭数
・発生農場における直近の豚の移動情報
・診断施設からの各種の検査結果
・豚肉の安定供給プログラム(SPS:Secure Pork Supply)の順守状況
・豚の移動許可に必要な基準の証明

 すべての米国の養豚農家は、AgViewを農業経営に取り入れることにより、利益が得られるとしている。AgViewはすべての養豚農家に向けて設計されており、導入に際し、農場の規模、飼養されている豚の頭数や種類、事業の目標などは問われない。
 アイオワ州立大学のエコノミストが2020年4月に行った研究によれば、アフリカ豚熱の発生によって起こりうる米国の経済的影響は以下の通り。

・アフリカ豚熱を収束させるのに、10年以上費やした場合、豚肉業界は延べ500億米ドル(5兆2500億円)以上のコストを支払うことになり、14万人の雇用が失われる。
・アフリカ豚熱を2年以内に収束させ、輸出を再開した場合、年間15億米ドル(1575億円)の損害に収まり、失われる雇用もわずかである。
・アフリカ豚熱発生1年目に肥育豚の生体価格は47%下落する。
・アフリカ豚熱を迅速に収束させられなかった場合、長期的には豚肉の年間生産量は約30%減少する。

5 COVID-19による米国豚肉需給への影響

 米国畜産業界におけるCOVID-19の影響は、すでに『畜産の情報』2020年11月号で報告しているが、豚肉の需給状況に関して改めて振り返ることとする。昨春、米国の処理場の従業員にCOVID-19が確認されたことにより処理場の一部が閉鎖され、豚肉生産量が一時的に大きく減少した。当時の状況について、USDAは処理場の稼働率と推計豚肉生産量の日ごとの推移を公表している(図10)。2020年5月末と7月上旬は米国の祝日、8月4日は養豚業界で慣例の操業休止日であることを除けば、処理場の稼働率が最も低下した日は4月29日の53.9%であり、4月の平均稼働率は78.3%、5月の平均稼働率は72.0%となり、それぞれの豚肉生産量を見ると4月は前年同月比11.1%減、5月は同9.0%減となり、約2カ月間は豚肉生産量が大きく減少した。その後、7月の平均稼働率は94.7%とほぼ例年並みの水準まで回復し、同月の豚肉生産量は同6.1%増となっている。
 

 
 7月以降の処理場はほぼ例年通りの稼働率となっているが、4〜5月にかけて処理場の稼働率が低下したことも含め、COVID-19の影響がいつまで続くのかという見通しは非常に不透明であった。これにより、昨春には生産量を調整しようとする動きが見られたため繁殖豚の更新などが進み、2020年9月1日時点の豚の飼養頭数においては、繁殖豚は前年比1.5%減の633万3000頭となった(表3)。繁殖豚の減少に伴い、同年6〜8月の産子数は前年同期比3.4%減の3511万5000頭、50ポンド未満や50〜119ポンドの離乳豚や育成豚も同3.5%減となっている。一方、180ポンド以上の出荷が近い肥育豚は前年をかなりの程度上回る同9.8%増となっており、生産現場においても依然としてCOVID-19の影響が残っている。

 
 米国の養豚は、厳密に管理されたスケジュールに基づき、主に分業体制で行われているため、肥育農家で出荷可能な体重に達した豚が出荷できなくとも、次の肥育もと豚が農場に導入されてしまう。これにより、先行する肥育豚集団を飼養し続ける場所が不足し、大量の豚が殺処分されることが危惧されていた。豚の殺処分を回避するために、養豚関係者の話によれば、年間の豚肉生産量全体の約10%に相当する豚に対して給餌量の調整が行われ、できる限り豚の出荷を遅延させる対策が講じられたとされる。アイオワ州豚肉生産者協会とアイオワ州立大学は、協力して給餌量の調整による豚の飼養調整に取り組んだ。2020年4月の予測では、殺処分される肥育豚頭数はアイオワ州だけで300万頭に達すると見込まれていたが、同協会によれば、この飼養調整により、同州での殺処分頭数は肥育豚の約8万頭、離乳豚および育成豚の約15万頭にとどまったと推定されている。なお、全米単位では実際に殺処分された肥育豚数は約200万頭に上るとの見方もあるが、詳細は不明である。

6 今後の見通し

 直近の米国産豚肉に関する需給状況は以下の通りとなっている(図11〜14)。 
 豚のと畜頭数は昨春以降、前年並みまたは前年を上回る傾向が続いていることと、豚のと畜時の出荷重量が増加している影響などにより、2020年の豚肉生産量は前年を上回ると予想されている。
 豚肉卸売価格は処理場の稼働率が低下した際に一時的に高騰したが、生産量が回復するにつれ卸売価格の高騰は落ち着いた。直近の豚肉卸売価格は例年よりも高い水準で推移しているが、生産量は増加傾向にあり、今後は例年並みの水準に落ち着くと思われる。
 輸出量については、COVID-19の影響により、現在も外食産業からの需要が低迷した状態が続いている。しかし、アフリカ豚熱の影響を受けた中国の国内豚肉生産量が回復するまでの間は同国からの引き合いがしばらく続くと予想されている。また、EU域内で最大の豚肉生産国であり、スペインに次いで2番目の豚肉輸出国であるドイツの野生イノシシでアフリカ豚熱の発生が確認されている影響により、多くの国々が同国産豚肉の輸入を禁止している。これらの要因により、米国産豚肉の需要が相対的に高まっており、今後も輸出量は増加するとみられている。







7 おわりに

 COVID-19の影響により、処理場では労働力の確保という長年の課題が改めて注目された。また、関係者によれば、COVID-19の影響により豚の殺処分を強いられる可能性に直面し、大量の豚の殺処分を実際に行うことを想定した場合、人員や処理能力に限界があることが再確認され、これによりアフリカ豚熱などの重大な家畜伝染病が発生した際の防疫計画の再考など、新たな課題が浮き彫りになったとのことである。
 2020年12月以降、米国の新型コロナウイルスの1日当たり新規感染者数が20万人を超えるなど、感染者数は増加傾向にあるが、幸いにも処理場が昨春のような稼働停止に追い込まれるほどの事態には陥っておらず、処理場内のCOVID-19の防止対策が一定の効果を上げていると考えられる。一方、同年12月11日、米国食品医薬品局(FDA)がCOVID-19のワクチンに対して緊急使用承認を行い、医療関係者などの必要不可欠な業種に従事する人々に対するワクチン接種が順次実施されている。特に、優先接種対象者の中には、農家や食肉業界関係者も含まれている(本誌130ページ参照)。しかし、米国でワクチン接種を希望する人々に対する接種が完了するのは2021年後半になるとみられている。また、ワクチン接種によりCOVID-19が直ちに撲滅されるわけではなく、COVID-19の拡大状況が落ち着くにはまだ長い時間がかかるとみられている。COVID-19だけでなく、アフリカ豚熱に関しても世界的に発生は拡大し続けており、米国産豚肉の需給状況には不透明な要素が存在するため、今後の米国産豚肉の需給動向が注目される。

(鈴木 浩幸(JETROニューヨーク))

(参考)
・海外情報「多品目の米国産農産品の追加関税の免除を公表(中国)」
 (https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002635.html
・海外情報「米中経済貿易協定の第1段階の合意と農業団体の声明(米国)」
 (https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002600.html
・海外情報「米中経済貿易協定第1段階合意の進捗に関する中間報告(米国)」
 (https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002811.html
・『畜産の情報』2020年11月号「新型コロナウイルス感染症による米国畜産業界への影響」
 (https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_001381.html
 



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