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海外情報 ポーランド牛肉 畜産の情報 2023年1月号

ポーランドの牛肉産業の現状と対日輸出動向

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調査情報部 渡辺 淳一

【要約】

 ポーランドは、EUにおける主要な牛肉生産国の一つである。同国では牛肉生産量が多いものの国内消費量は少なく、また飼料費や人件費といった生産費が西欧諸国と比較して安価であることから価格競争力を有し、生産量に対する輸出量の割合はEUの主要牛肉生産国の中でもとりわけ高く、約68%が輸出されている。また、日本への牛肉輸出量は近年急増しており、EUやポーランド政府からの支援も受け、今後も日本への輸出を増やしていく意向であり、同国の生産および輸出動向が注目される。

1 はじめに

 ポーランドは国土面積が日本をわずかに下回るものの、農用地は国土の50%弱に及び、日本の農用地の3倍強となっている(表1)。また、伝統的に食肉消費は牛肉より豚肉を食する文化を持ち、2004年のEU加盟から13年ごろまでの牛肉生産量は30万〜35万トン程度であった。現在の牛肉生産量は55万トンを超えEU第6位の牛肉生産国となり、20年の農業産出額のうち畜産物に占める肉用牛の割合は11%を占める(表2)。
 


 
 牛肉生産量はEU第6位であるものの、その輸出量はEU第2位であり、日本向けの牛肉輸出量も近年大きく増加し、21年にはEU最大の日本向け牛肉輸出国となった。
 本稿では、ポーランドの牛肉産業の概要、牛肉の輸出動向、および輸出関連政策や支援などについて報告し、ポーランド産牛肉の日本向け輸出が増大する背景を探るものとする。
本文中の為替相場は、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」2022年11月末TTS相場の1ユーロ=145.08円、1ズロチ=31.88円を使用した。

2 ポーランドの牛肉産業の概要

(1)飼養頭数

 ポーランドの牛の飼養頭数(経産牛を含む)は、2012年の552万頭から増加傾向で推移し、21年には638万頭になった(表3)。また、牛を飼養する生産者戸数は16年時点で約34万戸であり、その半数以上は30頭以下を飼養する小規模経営とされている。
 ポーランドはEU第3位の生乳生産量を誇る酪農大国(注1)であり、経産牛のほとんどは乳用牛である。経産牛のうち乳用牛の占める割合は、12年の95.0%から、近年の肉用牛の増加を裏付けるように21年には88.9%まで低下している。


(注1)ポーランドの酪農業については『畜産の情報』2021年1月号「ポーランドにおける牛乳・乳製品の生産および輸出動向について」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_001472.html)を参照されたい。
 

(2)主要生産地

 前述の通りポーランドの肉牛生産者戸数は半数以上が飼養規模30頭以下の小規模家族経営とされ、牛は国内各地で飼養されている。2020年の牛の総飼養頭数に占める県別牛飼養頭数の割合は、中東部マゾフシェ県(MAZOWIECKIE)が18.0%、中西部ヴィエルコポルスカ県(WIELKOPOLSKIE)が17.4%、東部ポドラシェ県(PODLASKIE)が16.3%であり、この3県で同国全体の牛飼養頭数の半数を超え、主要な牛飼養地帯と言える(図1)。残りの13県の飼養頭数割合を見ると、いずれも10%以下となっている。

 

(3)主な品種

 ポーランドの主要食肉処理・加工業者(約130者)で構成する食肉産業生産者・雇用者連合(UPEMI)によると、肉牛経営で飼養される牛の多くは酪農から供給されるホルスタイン種である。残りはホルスタイン種と肉専用種の交雑種および肉専用種が占めるとされる。肉専用種は赤身の割合が高いリムジン種が7割を占めるほか、シャロレー種、ヘレフォード種、ベルジアン・ブルー種などが飼養されている。
 ポーランド農業支援センター(KOWR)によると、輸出される牛肉はホルスタイン種が多く、次いで交雑種となる。交雑種はリムジン種とホルスタイン種の交雑が多いが、最近ではベルジアン・ブルー種とホルスタイン種との交雑も増えている。これは、雄の場合は増体の良さが、雌の場合は肉質が評価されていることによる。

(4)飼養形態

 牛の飼養は放牧を主体としており、放牧地を含む永久草地が農用地の21%(305万ヘクタール、日本の国土の8.4%)程度を占めるため、低い生産費で粗飼料を賄えるとしている。牧草の高さが10センチ程度になる早春から秋にかけて放牧される。また、放牧牛の特徴として、疾病に対する抵抗力が強いという点もある。
 KOWRによると、肉用牛は肥育期間を経て平均23カ月齢で出荷される。肥育期間は牧草や粗飼料に加えて配合飼料も給与され、牛は、牧草地と牛舎内の餌場を自由に移動できるのが基本とのことである。年間120〜140日間はこの放牧を基本とした形態で飼養され、冬の間の220〜240日間はフリーストール牛舎で飼養されている。また、肥育期には、白い脂肪を好むアジア向けにはトウモロコシを給与し、クリーム色の脂肪を好むスペイン向けにはわらやサイレージを給与するなど、輸出先ごとに飼料を分ける工夫をしている。
 さらに、ポーランドで油糧種子作物として広く栽培されている菜種や亜麻を搾油した後の副産物も牛の飼料として広く用いられているほか、放牧地では、さまざまな種類の牧草、マメ科植物、ハーブも使われている。

(5)牛肉生産量の推移

 ポーランドの牛肉生産量は、人件費や粗飼料費など生産費が低く価格競争力が高いこと、また、地理的に平地が多く生産規模の拡大が容易なことなどから全体的に増加傾向にあり、2012年の37万1000トンから21年には55万5000トンに増加している(図2)。21年時点でポーランドは、フランス、ドイツ、イタリア、スペインおよびアイルランドに次いでEU第6位の牛肉生産国となっている(図3)。



 

(6)ポーランド産牛肉の特徴

 ポーランド産牛肉は、EUの共通農業政策(CAP)の下で、他のEU諸国と同じ品質水準にあるにもかかわらず、その価格はEUの主要牛肉生産国を下回る。これは、牛肉の生産コストが低いことに加え、同国の食肉業界は中小企業が多く、供給網が単純で仲介業者が少ないことが一因とされる。このため、直売に近い販売形態となり、牛肉の生産者や生産地を特定することが容易となる。そのほか、脂身が少ない点もポーランド産牛肉の特徴と言える。
 UPEMIによると、ポーランドの食肉処理・加工業者は、EUレベルで制定されている品質基準(適正衛生規範、適正製造規範、HACCPなど)に適合しているほか、輸出競争力の強化に向けて自主的にISO規格(注2)やCODEX規格(注3)、BRC規格(注4)のような任意の品質規格も導入し、製品の品質認証に取り組んでいるという。

(注2)国際標準化機構(International Organization for Standardization)による国際的な品質保証基準。
(注3)コーデックス委員会(Codex Alimentarius Commission)により策定される国際的な食品規格。
(注4)英国小売協会(British Retail Consortium)による食品安全規格。


 また、ポーランド国内市場では、同国の肉牛生産者協会(PZPBM)による牛肉の品質認証制度(QMP:Quality Meat Program)が導入されている。同制度は、EU域内に向けたポーランド産牛肉の品質の向上やマーケティング力の向上のために導入された。農業農村開発省は、2008年にQMPを公的支援対象の制度として承認している。
 QMPは、「飼養管理」、「飼料」、「家畜輸送」、「食肉処理場での取り扱い」の牛肉生産に関する供給網の四つの工程ごとに認証規格を制定している(表4)。認証取得のための監査は独立した認証機関によって実施され、QMPに従った生産を行う事業者に対し認証が付与される。例えば、牛肉生産者の要件には、適切な品種の選択(交雑種や純粋種)やアニマルウェルフェアの強化などが含まれる。

 
 さらに、UPEMIによると、ポーランドの牛肉生産は、主に小規模な家族経営により行われているが、純粋種肉用牛飼養や有機飼養に専門的に取り組む大規模生産者、交雑種の肥育を行う生産者、乳用牛の肥育を行う生産者など、さまざまな生産者がいるため、ポーランドの輸出事業者は、製品や価格の面で、多様な要求に対応可能な点も特徴であるとしている。
 以下にポーランドにおける牛肉生産の特徴と捉えられる点をまとめた。

● 高い価格競争力(他のEU諸国に比べ相対的に製造コストが低い)
● 放牧を主体とした飼養管理
● 肥育ホルモンおよび抗生物質の不使用
● 衛生的な農場および牧草地での生産
● 環境やアニマルウェルフェアに配慮した生産
● EU水準で制定される食品安全基準と適切な管理の確保
● 直売に近い販売形態のため、生産者の特定が容易
● 小規模生産者による肉牛生産

(7)ポーランドにおける牛肉の消費状況 

 ポーランドには、肉牛生産に適した地理的条件が揃っている一方で、伝統的に牛肉を料理に利用する習慣があまりないことや、豚肉や鶏肉に対する相対的な価格の高さから国内の牛肉消費量は多くない。同国の1人当たりの年間牛肉消費量は、2〜3キログラム程度と日本の半分以下である。国民所得の向上などから牛肉の消費量は増加しているが、2012年の同1.6キログラムから21年の同2.5キログラムにとどまる(表5)。

 
 

コラム 伝統的な牛肉料理と販売方法

 ポーランドでは昔から酪農業が盛んであり、一定数の乳用種の雄牛が産出される。このため、消費量は少ないものの牛肉料理は存在している。ポーランドの家庭などで昔から食べられている伝統的な牛肉料理をいくつか紹介する。

● フラキ:トマト風味の西洋風モツ煮込みである(コラム−写真1)。こしょうなどの香辛料が効いていて栄養豊富なポーランドの家庭料理である。
 
 
● ピエロギ:小麦粉で作った生地にさまざまな具材を包んでゆでた、ギョーザに似た料理である(コラム−写真2)。大きさはギョーザより一回り大きく、具材として伝統的に仔牛肉が使われるところはポーランドが酪農国であることを表している。

 
● タルタルステーキ:細かく刻んだ生の牛肉に卵やレモンを加えて食べる料理(コラム−写真3)。同名のフランス料理がポーランドに持ち込まれたという説や、かつてこの一帯を支配したモンゴル帝国のタタール人によって持ち込まれたという説がある。タルタルのポーランド語表記は「tatar」である。

 
 また、牛肉の販売場所は、市場の一角で古くから牛肉を販売する精肉店や牛肉の熟成庫を設置している新興の食肉・食肉加工品専門店もあるが、多くは外資系大手スーパーマーケットで販売されている(コラム−写真4、5)。同国首都ワルシャワの中心街のステーキ専門店では、鹿児島県産黒毛和牛(A 5)のステーキが提供されていた(コラム−写真6)。このステーキ専門店も熟成庫を導入しており、欧米のはやりのステーキ文化が浸透している。

 

3 ポーランド産牛肉の輸出動向

(1)冷蔵・冷凍別の輸出量・輸出額の推移 

 前述のように、ポーランド国内の牛肉消費量は決して多くないため、牛肉の生産量の増加は輸出量の増加に直結する。現に、ポーランドはEU加盟国の中でもオランダに次ぐEU第2位の牛肉輸出国であり、生産量の約68%を輸出に仕向けている(図4)。日本向けの牛肉輸出量も近年急増しており、2021年にはEU最大の日本向け牛肉輸出国となった(図5)。

     
 

 
 また、21年の冷蔵および冷凍牛肉の輸出量も、それぞれEU第2位である(図6、7)。特に冷凍牛肉の輸出量の増加が継続しており、21年の冷蔵牛肉の輸出量は12年比20%増であるのに対し、冷凍牛肉の輸出量は同116%増と2倍以上に拡大した。

          
 

 
 21年の冷蔵および冷凍牛肉の輸出量は合計37万5000トンとなり、輸出額は15億9700万ユーロ(2316億9276万円)となった(表6)。その内訳は輸出量では冷蔵牛肉が71%、冷凍牛肉が29%となり、輸出額では冷蔵牛肉が74%、冷凍牛肉が26%となった。
 21年の冷蔵牛肉の輸出量の内訳を見ると、EU域内向けが24万2000トンと輸出量全体の91%を占め、主要な輸出先はイタリア、ドイツ、オランダ、スペインであった(表7)。20年の主要輸出先も同じ4カ国であり、輸出先に大きな変化はない。一方、冷凍牛肉のEU域内への輸出量は7万7000トンと同71%を占め、冷蔵牛肉に比べてより多く域外に輸出されている。

     
 
 
 冷凍牛肉については、EU域内ではフランス、ドイツ、スペインなど、EU域外では日本、イスラエル、英国および香港などが主要な輸出先となっている(表8)。日本向けの輸出量は、20年の3363トンから21年には9244トンと、米国や豪州などの輸出量と比べて少ないながらも急激に増加している。

 

(2)内臓肉の輸出量の推移

 ポーランドは、タンやレバーなどの内臓肉も輸出しており、それらは冷凍されて主にEU域外へ輸出されている。
 2021年の冷凍のタンの輸出量は2120トン、うちEU域外への輸出は全体の約60%を占める1280トンとなった。冷凍のタンに関しては増加傾向で推移しており、12年の560トンから21年には約4倍に伸びている。特にEU域外への輸出量が増加しており、主な輸出先は日本およびウクライナである。21年は日本への輸出量が850トンとなり、EU域外への輸出の約70%を占めた。
 冷凍のレバーに関しては、21年の輸出量は9360トン、うちEU域外向けは全体の約90%を占める8730トンとなった。EU域内向けは過去10年で減少傾向にある一方で、EU域外向けは16年ごろから増加傾向にある。なお、同品目の日本への輸出は16年以降確認されていない。

(3)日本向け輸出の動向

 UPEMIへの聞き取りによると 、日本の輸入業者からの需要が多いポーランド産牛肉(内臓肉を含む)の部位は、タン、ハンガーステーキ(サガリ)、ブレストボーン(カタバラ)、トリミングとのことである。これらの部位は2021年に1300トン程度が日本に輸出されている。また、前述の通り21年にポーランドから日本に輸出された牛肉は、冷凍がほぼ100%であり、冷蔵肉の輸出はほとんどない。ポーランドから日本への冷凍牛肉の輸出量は19年以降、大幅に増加している(表9)。

 
 このように、ポーランド産牛肉の輸出が近年急増しているが、輸出量は14年から少しずつ増加してきた。これは、BSEにより02年から禁止されていた日本向け牛肉などの輸出が14年に再開されたためである。なお、同年、ポーランドにおけるアフリカ豚熱の発生により、日本への豚肉輸出が禁止された(注5)。豚肉に代わって牛肉が日本に輸出されるようになったものの、牛肉の輸出額は豚肉のピーク時の半分以下に過ぎない(図8)。
 UPEMIが作成した「ポーランド産牛肉を日本の食卓へ」プログラムでは、日本から需要のある部位として、図9の部位が挙げられている。
 
 

 
(注5)『畜産の情報』2018年12月号「EUの豚肉輸出見通し〜デンマークとスペインの動向など〜」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_000395.html)を参照されたい。

(4)今後の日本への輸出見通しや輸出拡大に向けた課題など

 UPEMIによると、今後の日本向け輸出はさらに拡大していくものとやや楽観的な見通しをしている。これは、日本の牛肉消費量の増加が見込まれる中で、豪州産や米国産の隙間に入り込める可能性があるとするものである。さらに、日EU・EPA下で、日本の牛肉関税が今後9%まで削減されることで、価格面では豪州産や米国産に差を広げられることもないとしている。また、日本の輸入牛肉の供給元を多様化する機会になるとも期待されている。
 輸送面において、東アジア沿岸までの鉄道輸送は、欧州とアジアの線路の幅の違いなどの問題があるが、輸送経路の一つとして検討されている。空輸に関しては、現在は、ホテル・レストラン・カフェ向けの高級なステーキ肉などの一部に使用されているとのことである。
 このほかUPEMIにより、ポーランド産牛肉の日本への輸出をめぐる弱点、今後の展望および障壁やリスクが表10の通りまとめられている。



4 牛肉産業の輸出促進戦略

 ポーランド産牛肉の輸出促進に向けた取り組みは三つある。一つ目は、同国政府による「ポーランド産食品」の輸出促進活動。二つ目は、EU予算による品目別(ここでは「牛肉」)の輸出支援。三つ目は、民間牛肉取引業者の拠出金およびEU予算を財源とした牛肉輸出促進支援である。これらは共産政権時代にはなかった輸出促進であり、現在、その成果がさまざまな形で実を結びつつある。

(1)農業農村開発省の食品輸出促進戦略

 農業農村開発省は、2017年にポーランド政府が採択した国家開発戦略「責任ある開発戦略」の一環として、EU域内外を対象としたポーランド産農産物の知名度向上を目的とした「食品輸出促進戦略」を策定し、以下の三つの取り組みを実施している。

ア 輸出促進活動
 監督機関となる農業農村開発省は、輸出促進活動の方針策定、海外の政府機関との調整などを行う。実施機関となるKOWRは、国際見本市などへの参加や、ポーランド企業と外国企業のマッチング、外国企業やジャーナリストの招致などを行うとしている。

イ 輸出市場の特定
 EU域内市場の農産物需要は、新興国や発展途上国の拡大していく需要に比べると長期的な成長は見込めない。そのため、ポーランドの輸出先を多様化する候補国として日本、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、イラン、中国、台湾、インド、シンガポール、ベトナム、カザフスタン、アルジェリア、エジプト、南アフリカ、カナダ、米国、ベラルーシなどを挙げている。

ウ ポーランド産農産物のブランド構築
 ポーランド産農産物のブランド化に向けて、共通のロゴ「Polska Smakuje(:Polish Taste)」を制定し、プロモーション政策の一貫性を高めるため、オール・ポーランドとして同ロゴの使用を推奨している(図10)。また、英語版のロゴ「Poland tastes good」も使用している。

 

(2)EU予算による牛肉輸出促進

ア 欧州委員会が主導で取り組む欧州食品輸出促進政策
 財源はEU全体予算から賄われ、日本、韓国、カナダ、メキシコなどを高成長国としている。
 ポーランド産牛肉を対象としたプロジェクトには、UPEMIが22年4月から日本と香港を対象とした2年間のプログラム「EUbeef2Asia」がある。同プログラムの下、日本の輸入業者向けに東京で開催されるスーパーマーケットトレードショーなどに参加している。
 また、食肉加工業者からなるポーランド精肉・燻製業界団体(SRW)などによるプロジェクトでは、中国、香港、日本、韓国、ベトナムを対象とした牛肉、豚肉、鶏肉などやこれらの加工品の輸出促進「Europe full of flavours – tradition and quality」が実施されている。

イ CAPの下で加盟国の農村開発計画に基づき実施される支援
EUまたは加盟国の品質認証制度などの特定の制度に参加している生産者団体が取り組む、製品の情報提供および輸出拡大を対象とした支援であり、PZPBMのQMPも対象となる。

(3)牛肉振興基金による支援

 ポーランドでは、消費拡大や食料品振興を目的に設立された農業食品振興基金がある。2009年7月に牛肉や牛乳など九つの振興基金の運用が開始された。19年に油糧種子が追加され、現在は10基金となっている。各基金には、生産者5人、加工業者3人、農業会議所1人の計9人で運営委員会が構成され、同委員会が財務計画や分野別の戦略などを策定する。
 牛肉振興基金は、国内外における牛肉の輸出販売促進活動の支援を目的とした基金であり、KOWRが基金を運営している。牛のと畜業者および生体牛の輸出業者は、供給元から取引額の0.1%を拠出金として徴収することが義務付けられている。本拠出金およびEU予算による資金が財源となる。
 牛肉分野における支援の対象は、消費促進活動、市場調査、また品質向上および消費拡大を目的とした研究開発や、肉用牛の飼養または生産に関する展示会などである。
輸出関連のプロモーション活動を実施する団体にはUPEMIやSRWなどがある。
 なお、19〜21年にはUPEMIにより、日本市場への進出を目的としたプロジェクトが実施され、「ポーランド産牛肉を日本の食卓へ」のウェブサイト作成、またポーランドの牛肉輸出業者向けの日本人講師による情報セミナーや日本への視察などが実施された。

5 おわりに

 ポーランドの牛肉輸出はEU域内外の両面で増加傾向にあり、輸出需要の増加に押し上げられる形で牛肉生産量も増加している。
 特に、日本への牛肉の輸出量は、少ないながらもこの2年で少なくとも2倍以上と目を見張る勢いで増加しており、そのほぼすべてが冷凍牛肉である。
 日本の輸入牛肉は、冷蔵の9割および冷凍の7割を、豪州産と米国産が占めている(表11、12)。このような中、長期の輸送日数を必要とするにもかかわらず、南米ウルグアイ産の冷蔵牛肉の輸入量は増加しており、長期の輸送日数を逆手にとって輸送中に熟成させ差別化を図っている。これは、ポーランド産についても、冷蔵牛肉の日本への輸送の可能性があることを物語っている。KOWRにおいても、現在は輸送距離の長さから冷凍牛肉が主であるが、熟成させながらの冷蔵輸送も検討しているとの声が聞かれた。
 日本市場で豪州産や米国産がこれだけの輸入量を誇るのは、USビーフやオージービーフといった日本におけるブランドとしての認知度の高さにある。また、2019年から輸入が解禁されたウルグアイ産牛肉は、日本における認知度の向上が近年の輸入量の増加につながっているものと考えられる。
 現地関係者によれば、日本でのさまざまな販売促進活動を継続することで、今後さらに冷凍牛肉の輸出を拡大するとともに、冷蔵牛肉については、輸送技術の工夫をブランディングと併せて行うことで、輸出の実現を目指したいとの話もあり、今後の同国の日本向け輸出への取り組みが注目される。