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地域だより

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最終更新日:2014年8月18日

〜沖永良部島〜 第19回さとうきび生産者大会の開催

2014年8月

鹿児島事務所 丸吉 裕子  


 平成26年7月5日(土)、和泊町民体育館において、第19回さとうきび生産者大会(主催:沖永良部さとうきび生産対策本部(以下「生産対策本部」という))が開催された。同大会には、島内の生産者、糖業関係者、JAおよび行政関係者など約550名が参加した。  

 沖永良部島における平成25/26年期のさとうきびの生産実績については、収穫面積は1157ヘクタール(前年比88%)、生産量は4万8784トン(同91%)となり、10アール当たり収量(以下「単収」という)は4.2トンと、県平均5.4トンを22%下回った。これは、夏期の干ばつや登熟期の台風襲来などの影響を受け平成24/25年期に記録した過去最低のさとうきび生産量を更新する厳しい結果となった。  

 池野豊生産対策本部長(JAあまみ和泊事業本部専務理事)は、開会に際し、「昨年の収穫面積は約1157ヘクタールと、前年の約1313ヘクタールからかなり減少し、さとうきび生産量は5万トン以下にまで下がった。一方、今年産は7月1日の生育調査によると1472ヘクタールの収穫面積が見込まれ、さとうきび生産量は約8万トンを計画している。これは、平成元年の1500ヘクタールに次ぐ面積を確保できており、夏場も引き続き適期の管理作業を実施して単収向上に取り組めば、生産量10万トンも夢ではない。体調に十分注意して、増産に向けて頑張っていただきたい」と生産者に呼び掛けた。また、伊地知実利和泊町長は、「沖永良部は糖業で島の経済が成り立っている。生産者の皆さまには、それぞれの立場で改めてそのことを認識いただき、ますますの砂糖産業の発展に貢献いただきたい」と激励した。
 
 
 大会では、平成25年産において、高生産量、高品質、高単収であった優良生産者や島内糖業の功労者への表彰式が行われた。併せて、公益社団法人鹿児島県糖業振興協会主催の「平成25年度さとうきび生産改善共励会」で、独立行政法人農畜産業振興機構理事長賞を受賞した重信善一氏に、当機構の飯悟副理事長から表彰状(注)が授与された。

(注)当機構理事長賞 表彰状この賞状は、さとうきびと鹿児島県にちなんだもの。台紙は、島内の南栄糖業株式会社(製糖工場)から提供いただいたバガス(さとうきび圧搾工程後の残渣)と楮(こうぞ)を材料としたさつま和紙で、縁には大島紬の糸がちりばめられている。額は、鹿児島県産のヒノキを用い、釘やビスは一切使用せず昔ながらの工法により作られている。
 
 
 
 また、来賓祝辞として、飯副理事長から「生産者の皆さまがさとうきび生産に勤しまれることによって、国民の食生活に欠くことのできない砂糖が消費者の皆さまに提供されている。また、さとうきび産業および島の人々の生活が成り立っていることによって、我が国の国土や領海が守られている。関係者の皆さまが一体となった取り組みにより、さとうきびの増産と地域経済のより一層の活性化につながることを祈念する」と関係者の皆さまへ応援メッセージを送った。また、鹿児島県大島支庁の芝敏晃農林水産部長は「沖永良部島における単収低下には、台風被害が大きく影響している。防風林の植樹など地域ぐるみの取り組みを計画的かつ地道に実行してほしい。今年こそは豊作の年になることを願っている」と激励した。
 
 
 その後、当機構の松宮 勤生特産製品課長が「我が国の砂糖をめぐる事情」と題し、国内外における砂糖の需給や生産概況などを報告したほか、砂糖の価格調整制度の仕組みについて解説し、当機構としても広報誌などを通じて同制度の周知・浸透の取り組みを行っている旨紹介した。
 
 
 続いて、サトウキビコンサルタントの杉本 明氏による「サトウキビ産業の昨日・今日・明日」と題した講演があり、「現状5トンとなっている沖永良部のさとうきびの単収を、いかにして無理せず向上させるか、ほ場で茎数や伸長を観察しながら、サトウキビの「声」を聞いて取り組んでほしい。」と述べた。さらに、「ゆくゆくは、 1)サトウキビの非利用部分の飼料化や堆肥の導入による地力安定化を図る耕畜連携により循環型農業を確立すること 2)エタノールなど砂糖以外の価値物質を抽出して収穫期間を長期化すること 3)多収で株出し能力が高く、台風・干ばつへの抵抗性が高いサトウキビ品種を利用すること−により、「沖永良部型サトウキビ産業(砂糖・エタノール・電力・有機質資源複合生産」)が実現可能だ」と提唱した(注)

(注)杉本 明氏の近年の研究内容については、当機構情報誌「砂糖類・でん粉情報」2013年9月号「サトウキビ産業の進む道」を参照
 
 生産対策本部からは、平成26/27年期の収穫予定面積が、 1)春植え:147ヘクタール、 2)夏植え:554ヘクタール、 3)株出し:771ヘクタールの、合計:1472ヘクタールと見込まれることから、生産目標を7万9779トン(前年産実績比 約6割増)とする生産計画が報告されたのち、下記のスローガンが採択された。最後は、出席者全員でのがんばろう三唱、生産対策本部の島 元嗣 副本部長のあいさつで式典は幕を閉じた。

〔大会スローガン〕
  • 土づくり・適期植付・適期管理等、基本技術励行を徹底しよう。
  • 担い手農家の育成と、支部活動の活性化を図り、沖永良部糖業の再構築に努めよう。
  • 積極的な畑かん施設の活用により、品質・単収向上を図ろう。
  • さとうきび作りを通して地域と共生し、環境に優しい農業の推進に努めよう。
 
 前年産において大変厳しい結果となった沖永良部島のさとうきび生産であるが、今年産の収穫予定面積は大幅に拡大しており、生産回復が大いに期待される。大会終了直後の7月8日に襲来した台風8号で葉部裂傷や塩害などの被害を受けたほ場もあったとのことだが、生育旺盛期に入り、生産者の皆さまによるかん水などの適期管理の実施などによって今後の順調な生育が望まれる。

 当機構としても、生産者の皆さまが安心してさとうきびを作ることができるよう、今後も交付金交付業務の適切な運営に努めてまいりたい。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713