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4. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2020年12月時点予測)

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最終更新日:2021年1月12日

4. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2020年12月時点予測)

2021年1月

ブラジル
2020/21年度、砂糖生産量、輸出量ともに大幅増の見込み
 2020/21年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、原油の国際価格の動きに不安定さが見られ、バイオエタノール需要にも不透明感があるものの、バイオ燃料など再生可能エネルギーの生産・利用の促進を図るブラジルの国家政策「RenovaBio」の本格始動が生産意欲を後押しする可能性があることも踏まえ、873万ヘクタール(前年度比0.9%増)とわずかに増加すると見込まれる(表2)。サトウキビ生産量は、生育期間を通じて天候がおおむね良好で生育が順調であることから、6億5800万トン(同2.5%増)とわずかに増加すると見込まれる。

 一方、砂糖生産量は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるバイオエタノール需要の不透明感を背景に、多くの製糖業者が砂糖生産に回帰する動きが見られることから、4479万トン(同40.8%増)と大幅に増加すると見込まれる。この予測の下、ブラジルレアルが米ドルに対して安値圏で推移することで輸出意欲が向上し、輸出量は3390万トン(同66.8%増)と大幅に増加すると見込まれる。

10月末時点での中南部のサトウキビ収穫は、過去5年で最も早いペース
 
ブラジルサトウキビ産業協会(UNICA)が11月23日に公表したサトウキビ技術センター他3機関と共同で作成した報告書によると、2020/21年度10月末までにサンパウロ州を中心とするブラジル中南部地域でサトウキビが収穫された面積は、709万9000ヘクタール(前年同期比1.2%増)となった。これは過去5年間で最も早い収穫ペースであり、同年度に作付けした圃場ほじょうの87.2%で収穫が完了したことになる。

 10月のサトウキビの単収は1ヘクタール当たり63.4トン(同5.3%減)とやや減少したものの、年度前半に当たる4月から10月における平均単収は同79.6トン(同2.4%増)と、前年同期をわずかに上回って推移している。

 10月末時点までに圧搾されたサトウキビは5億6592万トン(同3.7%増)、回収糖分(サトウキビ1トンから回収可能な砂糖の量)は144.9キログラム(同4.3%増)とともに前年同期と比べてやや増加した。同報告書によると、回収糖分の増加は乾燥気候によるもので、4月から10月における同地域の降雨状況などを示す指数は、平年値から約4割減少したとしている。
表2
(参考)ブラジル
インド
2020/21年度、砂糖生産量はかなり大きく増加するものの、輸出量はかなり大きく減少する見込み
 2020/21年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、豪雨による大規模な圃場の浸水被害に見舞われた昨年度からの反動で、473万ヘクタール(前年度比6.5%増)とかなりの程度増加すると見込まれる(表3)。サトウキビの主産地であるマハラシュトラ州では、年間降雨量が集中するモンスーン期(6〜9月)における降雨が順調であることから、ダムの水位回復により、サトウキビ生産量は3億9338万トン(同13.6%増)とかなり大きく増加すると見込まれ、砂糖生産量も3375万トン(同14.7%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。今年度はコロナ禍における厳しい財政状況を理由に砂糖の輸出政策(注)の発表が遅れており、輸出政策が発表されたとしても、輸出契約締結までの期限が前年度と比べて短くなることから、輸出量は696万トン(同13.2%減)とかなり大きく減少すると見込まれる。

(注)インド政府の2020/21年度における砂糖の輸出政策の経緯については、『砂糖類・でん粉情報』2020年11月号のインドの項「ISMA、2020/21年度における砂糖の輸出政策の早期発表を首相官邸に要請」(https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_002327.html)も参照されたい。

ウッタルプラデーシュ州、すべての村でのマイクロかんがいの導入を推進
 現地報道によると、インド最大のサトウキビ産地であるウッタルプラデーシュ(UP)州政府は、2022年末までに同州のすべての村で少なくとも2ヘクタールのマイクロかんがい(注)(主に点滴かんがい)圃場を設置する計画を明らかにした。すでに同州内の約10万7000村のうち約3万村ではマイクロかんがいの導入が進められており、同州政府園芸部は、この取り組みを今後2年間かけて同州内のすべての村へ展開することを目指している。これにより、農業用水の消費量が30%程度削減でき、土壌の物理性や作物の生産性の向上が見込まれている。なお同部は、同国の点滴かんがいを含むマイクロかんがいの利用率が約8%であるのに対し、サトウキビ生産量国内第2位のマハラシュトラ州では、サトウキビ圃場の30%に点滴かんがいが利用され、利用率が10〜12%のUP州よりも回収糖分が多いとしている。UP州でスプリンクラーかんがいに代えてこのようなかんがい設備を導入することは、サトウキビ生産者にとって大きな意義があると述べている。

(注)マイクロかんがいは、給水管路に接続された散水支管内の水圧に対応して比較的少ない流量で作物の根群域に頻繁にかんがいすることである。マイクロかんがいには、点滴かんがい、多孔管かんがいなどがある。
表3
(参考)インド
中国
2020/21年度、輸入量はわずかに増加する見込み
 2020/21年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、雲南省では面積の増加がみられるものの、広西チワン族自治区と広東省での面積減少を受けて、116万ヘクタール(前年度比1.6%減)とわずかに減少すると見込まれる(表4)。サトウキビ生産量は、7360万トン(同1.2%減)とわずかに減少すると見込まれる。

 また、同年度のてん菜の収穫面積は、内モンゴル自治区において、てん菜の買い取り価格が引き上げられたことから、生産者は作付面積を拡大し、収穫面積は23万ヘクタール(同8.8%増)とかなりの程度増加すると見込まれる。てん菜生産量は、単収の増加に伴い、1238万トン(同13.6%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。

 砂糖生産量は、1135万トン(同0.9%増)とわずかに増加すると見込まれる。輸入量は、11月におけるブラジル産糖の輸入量が10月の輸入量と比べて半減したものの、国内の砂糖需要の回復などを受けて、675万トン(同1.3%増)とわずかに増加すると見込まれる。

農業農村部、砂糖の短期的需給見通しを発表
 中国農業農村部は11月10日、主要農産物の短期的需給見通しを発表した。これによると、10月末現在、てん菜糖の主産地である新疆しんきょうウイグル自治区や内モンゴル自治区をはじめとしたてん菜糖生産地域におけるすべての製糖工場で2020/21年度分の圧搾が開始され、中国国内では前年同期比3万3800トン増の43万2600トンの砂糖が生産され、出荷量も同1万3400トン増の14万9700トンであった。一方、サトウキビの主産地である広西チワン族自治区では、ここ最近の降雨や気温低下によるサトウキビのショ糖含有量への悪影響が懸念され、農業農村部は今後、同自治区をはじめとした国内南部のサトウキビ産地の天候やショ糖含有量などの圧搾状況を注視していくとしている。

 なお、国内の砂糖消費量は予想を上回る回復を見せており、2020/21年度の国内消費量は前月予測から10万トン上方修正されて1530万トン(前年度比2.0%増)とわずかに増加すると見込まれている。
表4
(参考)中国
EU
2020/21年度の輸出量は、砂糖減産を受け大幅に減少する見込み
 2020/21年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は148万ヘクタール(前年度比2.8%減)とわずかに減少すると見込まれる(表5)。てん菜生産量は、EU最大のてん菜生産国であるフランスで特に流行している萎黄病の被害を受けて、前月予測から下方修正され、9432万トン(同13.3%減)とかなり大きく減少すると見込まれる。

 てん菜生産量の落ち込みを受け、砂糖生産量は1527万トン(同10.1%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。輸出量は砂糖の減産に伴い、134万トン(同22.6%減)と大幅に減少すると見込まれる。

清涼飲料水への糖類添加量、5年間で約15%減
 欧州委員会は2016年2月に、2015年末を基準として2020年までに、食品に添加される糖類を最低で10%削減する目標を採択していたが、欧州清涼飲料水協会(UNESDA)(注)は11月17日、欧州の清涼飲料水製造企業が2015年から2019年にかけて、清涼飲料水に添加する糖類の量を、平均14.6%削減したと発表した。

 UNESDAによると、欧州の清涼飲料水製造企業は、糖類添加量の削減のために、以下の取り組みを実施してきた。
(1)おいしさを維持しつつも、糖類添加量を削減できるレシピへの変更
(2)さまざまな甘さを選択できる商品の開発
(3)摂取量を調整しやすいようにするため、より小さいサイズの商品を展開
(4)エネルギーや糖類の含有量が少量または含まない商品を選択するよう消費者へ啓発

 UNESDAの代表は「当業界が、EUの目標期限に先駆けて目標を上回る削減を達成したという結果は、清涼飲料水製造企業の糖類添加量削減に向けた自発的な努力が、明白な成果をもたらしたことを証明している」と述べ、今後も健康を志向する消費者の選択が容易なものとなるよう、これらの取り組みを継続していくとした。

(注)欧州連合(EU)加盟国の他、英国、ノルウェー、スイスといったEU域外国を含めた欧州24カ国の清涼飲料水製造企業および24の国単位の協会などが加入する非営利団体(アルコールやミネラルウォーターなどの部門は含まない)。欧州委員会に対する意見具申などを行う。
表5
(参考)EU
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272