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新型コロナウイルス感染症関連の情報

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最終更新日:2021年5月10日

新型コロナウイルス感染症関連の情報

2021年5月

調査情報部
 調査情報部では世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、各国政府の対応など需給に影響を与えるタイムリーな情報を、海外情報としてホームページの以下のURLに随時掲載しております。  
(掲載URL:https://www.alic.go.jp/topics/index_abr_2021.html)  

 ここでは、4月12日までに掲載したものをまとめて紹介いたします。

【欧州】

(令和3年4月12日付)欧州委員会、有機生産の進展に関する行動計画を発表(EU)

 欧州委員会は3月25日、有機生産の進展に関する行動計画を発表した。この計画は、有機農畜産物の生産と消費を促進し、2030年までに有機農業の取組面積を全農地の25%以上に拡大することを目的としており、欧州グリーンディール、「Farm to Fork(農場から食卓まで)」戦略(注1)、生物多様性戦略(注2)に沿った内容のものである。欧州委員会は、有機生産を行う農地では、生物多様性が約30%向上し、有機畜産ではアニマルウェルフェアの水準が高く、抗生物質の投与も限られ、有機農家はより高収入で経営基盤が強化され、消費者はEUの有機認証によって、自分が何を食べているのかを正確に知ることが出来るとしている。

(注1)alicセミナー(2020年12月14日開催)「EUの『Farm to Fork(農場から食卓まで)』戦略について〜2030年に向けて、持続可能性(サステナビリティ)を最優先課題とするEU農業・食品部門〜」https://www.alic.go.jp/content/001184979.pdfを参照されたい。
(注2)生物多様性戦略は、「Farm to Fork(農場から食卓まで)」戦略と同時に発表された戦略であり、自然を保護し、生態系の劣化を食い止めるための包括的かつ体系的な長期計画として、EU域内の自然保護エリアの拡大などの措置などが目標として掲げられている。  


 この行動計画は、以下の通り、消費の促進、生産の増加、持続可能性の向上の三つの軸から構成されている。

(1)消費の促進

 有機生産への転換を奨励し、農家の収益性を高め、経営基盤を強化するためには有機農畜産物の消費拡大が重要となる。行動計画では、需要を喚起し、消費者の信頼を獲得し、有機食品を身近なものにすることを目的としたさまざまな具体策を示している。この中には、有機生産に関する情報提供、有機農畜産物の消費促進、有機農畜産物の公的調達(学校給食や病院などで提供されるもの)の拡大などが含まれている。また、不正行為の防止、消費者からの信頼性の向上、有機農畜産物のトレーサビリティの向上なども具体策に含まれている。

(2)生産増加

 今回の行動計画は、現在の有機農地面積増加率のままでは達成が困難な25%という目標を主に有機農畜産物の需要の拡大によって達成しようとしているが、引き続きEUの共通農業政策(CAP)が有機農業への重要な転換支援策となっている。現在、CAP予算の約1.8%に当たる75億ユーロ(9825億円、1ユーロ:131円)が有機農業の支援に充てられているが、現在協議中の次期CAPには380億〜580億ユーロ(4兆9780億〜7兆5980億円)のエコ・スキーム(注3)が含まれることが見込まれており、この制度も有機農業振興に使うことができる。

 CAP以外の有機生産を支援する対策としては、有機生産の情報に関するイベントや優良事例の紹介、個人ではなく団体への有機認証、研究と技術開発、有機市場の透明性のためのブロックチェーン技術(注4)などを利用したトレーサビリティなどが挙げられる。また、有機生産の認知向上のため、欧州委員会は毎年「オーガニックデー」を開催するとともに、有機フードチェーンにおける各種表彰を行うことを予定している。

(注3)欧州委員会、「エコ・スキーム」として有機農業、総合的病害虫・雑草管理(IPM)、アグロ・エコロジー、アニマルウェルフェアなどの取組みを提案(EU)(海外情報〈令和3年2月5日発〉)https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002882.htmlを参照されたい。
(注4)ブロックチェーン:「分散型台帳」とも言われ、安全性の高さや運用コストの安さなどが特徴であり、仮想通貨などに用いられる技術。

(3)持続可能性の向上

 有機農業における持続可能性をさらに向上させるため、アニマルウェルフェアの向上、有機種子(有機で栽培された作物由来のもの)の供給確保、有機部門の二酸化炭素排出量の削減、プラスチック・水・エネルギーの使用を最低限とすることに焦点を当てた行動を行うこととしている。

 今回の行動計画の発表に関して、欧州委員会のボイチェホフスキ農業・農村開発担当委員は、「有機農業は、持続可能な農法と資源利用を行うものと認識されており、欧州グリーンディールの目標達成のための中心的な役割を担う。有機農業の取組面積の割合を全農地の25%以上にするという目標を達成するためには、有機部門の加盟国間における違いを考慮しつつ、需要がこの分野の成長をけん引することを確保する必要がある。今回の行動計画は、同部門のバランスの取れた成長を促すための方策や考え方を提供しており、CAP、研究、技術革新、さらにはEU、加盟国、地域レベルでの主要関係者の協力によって支えられることになる」と述べた。

 また、欧州連合最大の農業生産者団体である欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(Copa-Cogeca(注5))は同日、今回の市場主導型の戦略を歓迎すると発表した。

 Copa-Cogecaは、「有機農業の取組面積は着実に増加しており、2010年の850万ヘクタールから2019年の1380万ヘクタールまで10年間で62%増加した。これと同時に、この10年間で消費者の有機生産に対する関心も高まっている。消費者の関心の高まりは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって助長されたと考えられる。しかし、現在、EUにおける有機農業の取組面積は、全農地の8.5%にとどまっており、「Farm to Fork(農場から食卓まで)」戦略の野心的目標である25%からはほど遠い状況にある」としている。また、Copa-Cogecaは、有機農畜産物の振興は市場の求めに応じたものであるべきとして、従来から欧州委員会による有機偏重の予算配分による振興策を批判していた。このため、今回の行動計画が消費促進を通じた有機振興であることを歓迎している。

 なお、Copa-Cogecaの有機作業部会のロウン・アンデルセン議長は、「欧州委員会のアプローチは、最も持続可能な方法である。有機農業の取組面積を全農地の25%以上にするという目標は非常に野心的であり、目標達成までに残された時間も9年弱しかないが、市場の混乱を回避しながら、この数値に可能な限り近づけられるよう、欧州委員会などと協力していきたい。そして、今回の決定により、欧州委員会の市場観測サイト(注6)の分析対象に有機農畜産物が含まれたことを歓迎する」と述べている。

(注5)Copa-Cogecaとは、EU加盟国の農業生産者によって構成されるCopa(欧州農業組織委員会)および農業協同組合により構成されるCogeca(欧州農業協同組合委員会)により組織された農業生産者団体。CopaおよびCogecaは、独立した組織であるものの、両者は共同で事務局を設置し、主にロビー活動を行っている。
(注6)欧州委員会、需給動向の情報提供を行う果樹・野菜市場観測サイトを開設(EU)(海外情報〈令和元年10月24日発〉)https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002533.htmlを参照されたい。

 
(国際調査グループ 小林 智也)
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272