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3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2021年5月時点予測)

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最終更新日:2021年6月10日

3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2021年5月時点予測)

2021年6月

ブラジル
2021/22年度の砂糖生産量はかなりの程度、輸出量はかなり大きく減少する見込み  
 LMC International(農産物の需給などを調査する英国の民間調査会社)による2021年5月時点の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、2021/22年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、871万ヘクタール(前年度同)と同程度で推移すると見込まれる(表2)。サトウキビ生産量は、生育期間における降雨量が少なく、単収が減少することで、6億500万トン(前年度比8.0%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。砂糖生産量は、国際価格の上昇や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるバイオエタノール需要の不透明感などを背景に、前年度に引き続き多くの製糖業者が砂糖の生産割合を高めると予想されるものの、原料の減産や、1トン当たりの平均回収糖分(ATR)のわずかな減少を受けて、4118万トン(粗糖換算〈以下、特段の断りがない限り砂糖に係る数量は粗糖換算〉、同7.7%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。輸出量も、砂糖の減産を背景に、2985万トン(同12.2%減)とかなり大きく減少すると見込まれる。
表2
(参考)ブラジル
インド
2020/21年度は増産するも、輸出促進政策の発表の遅れなどを受け、輸出量はかなりの程度減少する見込み
 2020/21年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、豪雨による大規模な圃場(ほじょう)の浸水被害に見舞われた前年度からの反動で、489万ヘクタール(前年度比5.3%増)とやや増加すると見込まれる(表3)。ウッタル・プラデーシュ州で赤腐病(red rot)(注1)の被害が確認されているものの、マハラシュトラ州では、年間降雨量が集中するモンスーン期(6〜9月)における降雨が潤沢であったことから、サトウキビ生産量は4億249万トン(同8.9%増)とかなりの程度、砂糖生産量は3300万トン(同12.1%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。輸出量は、COVID-19による物流の混乱は解消しつつあることで、足元の輸出は復調傾向にあるものの、輸出促進政策の政府発表の遅延(注2)も影響するなどして、結果として前年度ほどの輸出水準には届かず、768万トン(同7.3%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。

(注1)真菌の感染によって引き起こされる病気で、茎の内部が腐り、赤色に変色する。サトウキビの単収や砂糖の回収率に深刻な影響を与えるとされている。
(注2)インド政府の2020/21年度における砂糖の輸出政策の経緯については、『砂糖類・でん粉情報』2020年11月号のインドの項「ISMA、2020/21年度における砂糖の輸出政策の早期発表を首相官邸に要請」(https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_002327.html)を参照されたい。


砂糖200万トン相当の圧搾汁や糖みつ、エタノールの原料となる見込み  
 5月4日付の現地報道によると、インド国内の製糖工場と公営石油販売会社(OMC)との間で2020/21年度(12月〜翌11月)分の燃料用エタノール約300万キロリットルの供給契約が締結されている中、4月19日時点で前年度供給量の約66%に当たる約118万キロリットルがOMCに供給された。インド製糖協会によると、すでに供給されたエタノールの約77%は、サトウキビの圧搾汁または糖みつ(Bモラセス)を原料としており、圧搾汁や糖みつの一部がエタノール生産に仕向けられることで、過剰傾向にある同国内の砂糖生産量約200万トン相当が削減できると見込まれている(注)。現在、同国内におけるガソリンへのエタノール混合率は平均で7.36%に達し、製糖工場が多いウッタル・プラデーシュ州やマハラシュトラ州、また、首都デリーを含む11の州ではこの平均値より高い10%近くまで上昇している。

(注)砂糖の製造工程では、サトウキビの圧搾汁を煮詰めて結晶化させ、これを遠心分離機で脱水し、砂糖と糖みつを分離する。このとき得られる糖みつをAモラセスと呼び、これを再度煮詰め、脱水する作業を繰り返して取り出した糖みつをBモラセスと呼ぶ。インドでは2018年7月、砂糖の余剰在庫削減などを目的に、圧搾汁およびBモラセスを直接バイオエタノール生産に仕向けることが認められた。
表3
(参考)インド
中国
2020/21年度の輸入量は、わずかに減少する見込み  
 2020/21年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、雲南省では面積の増加が見られるものの、広西チワン族自治区と広東省での面積減少を受けて、116万ヘクタール(前年度比1.6%減)とわずかに減少し、サトウキビ生産量も、7360万トン(同3.5%減)とやや減少すると見込まれる(表4)。また、同年度のてん菜の収穫面積は、内モンゴル自治区において、てん菜の買い取り価格が引き上げられたことから、生産者は作付面積を拡大し、収穫面積は23万ヘクタール(同8.8%増)とかなりの程度増加すると見込まれ、てん菜生産量も、単収の増加に伴い、1238万トン(同13.6%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。  砂糖生産量は、1148万トン(同1.9%増)とわずかに増加すると見込まれる。輸入量は、生産量の増加や砂糖の国際価格の上昇による輸入価格の上昇が見込まれる(注)ことを受けて、659万トン(同1.4%減)とわずかに減少すると見込まれる。

(注)砂糖の国際価格が高水準で推移していることで、関税割当枠外での輸入価格が国内価格を上回る状況にある。中国では、輸入糖について関税割当を設けており、割当枠外の関税は50%となっている。詳細は2020年6月12日付海外情報「関税割当枠外の砂糖への追加関税を撤廃(中国)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002725.html)を参照されたい。

砂糖消費および輸入量、今後10年間も高水準で推移の見込み  
 中国農業農村部は4月20日に開催された中国農業展望大会において、今後10年間の農畜産物需給を見通した「中国農業展望報告(2021−2030)」を発表した。このうち、砂糖の需給について、同国の砂糖消費量は今後も着実に増加し、輸入も比較的高い水準で維持されると予測した。  

 同報告によると、同国の砂糖生産量は、甘味資源作物の作付面積と収量の微増により2029/30年度(10月〜翌9月)には2020/21年度比で7.2%増の1135万トンに達すると予測されている(注1)。また、砂糖消費量も、代替甘味料の普及や健康志向の高まり、出生率の低下や都市化の進展などの影響を受けるものの年平均0.9%の増加が見込まれ、同年度には1644万トンに達すると予測されている。砂糖輸入量については、国内生産量を上回る需要が続くことに加え、輸入糖は国内産糖より安価であることから、年平均5.8%の増加が見込まれ、同年度には552万トンに達すると予測されている(注2)

(注1)中国農業農村部が5月に発表した短期的需給見通しによると、2020/21年度の砂糖生産量は1059万トンと予測されている。
(注2)同見通しによると、2020/21年度の砂糖輸入量は450万トンと予測されている。
表4
(参考)中国
EU
2020/21年度の輸出量は、かなりの程度減少する見込み  
 2020/21年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は147万ヘクタール(前年度比2.9%減)とわずかに減少すると見込まれる(表5)。てん菜生産量は、EU最大のてん菜生産国であるフランスで感染が広がる()(おう)(注)の被害を受けて、9911万トン(同9.9%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。てん菜生産量の落ち込みにより、砂糖生産量は1516万トン(同10.6%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。輸出量は、砂糖生産量の減少によって輸出余力が低下し、131万トン(同9.0%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。

(注)アブラムシによって媒介されるウイルス性の病気で、葉が黄色く変色し、てん菜の単収や砂糖の回収率の低下を引き起こすとされている。
表5
(参考)EU
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