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砂糖産業における技術革新と持続可能性について

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最終更新日:2022年3月10日

砂糖産業における技術革新と持続可能性について
〜第30回国際砂糖機関(ISO)セミナーと持続可能性に配慮した砂糖の販売状況調査報告〜

2022年3月

調査情報部 水野 崇、塩原 百合子

【要約】

 2021年11月23〜24日に開催された第30回国際砂糖機関(ISO)セミナーでは、世界の砂糖の需給見通しや新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が砂糖産業に及ぼす影響に対する、主産国における取り組みの他、EUやブラジル、タイなどにおける砂糖産業の技術革新や持続可能性について報告された。
 また、機構ではセミナーテーマに関連し、世界5カ国における持続可能性に配慮した砂糖の販売状況について店頭調査を行い、各国における消費者の嗜好の多様性や、それに応える企業の姿が確認できた。

はじめに

 国際砂糖機関(ISO:International Sugar Organization)は2021年11月23〜24日、「技術革新と持続可能性(Innovation and Sustainability)」をテーマに対面およびオンラインによるセミナーを開催し、世界47カ国から総勢約207人が参加した。同セミナーは、1991年から開催され、今回で30回目の開催となった。

 本稿では、同セミナーで発表された国際的な砂糖情勢などの概要に加え、持続可能性に配慮した砂糖の販売状況について世界5カ国で行った店頭調査結果を報告する。

 なお、本稿中、特に断りの無い限り砂糖年度は10月〜翌9月とし、砂糖の重量は実数(tel quel:粗糖換算前の重量)で示すものとする。

 また、本稿中の為替レートは、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の1月末TTS相場である1ユーロ=130(130.16)円、1米ドル=116(116.44)円、1フィリピンペソ=2.41円、1ポーランドズロチ=29.30円、1ポンド=159(158.72)円、1豪ドル=83(82.78)円を使用した。

I 第30回国際砂糖機関セミナー報告

1  世界の砂糖需給などの短期見通し

 ISOが発表した2021年11月現在の世界の砂糖需給予測を基に、2021/22年度末までの砂糖需給の見通しは以下の通りである。

(1)世界の砂糖需給の概況

 世界の砂糖生産量は、エルニーニョ現象の影響などにより主産国で軒並み減産となった2015/16年度以降、増加傾向で推移し、2017/18年度には過去11年間で最多となる1億7983万トンを記録した(表1)。

 しかし、その後は再び減少に転じ、2020/21年度はEUでの乾燥気候の影響や萎黄病いおうびょう の流行などを受けて1億6900万トン(前年度比0.1%減)と前年並みで推移した。2021/22年度は、ブラジルでの干ばつや霜害などの影響で生産量が減少するものの、EUでの生育の回復から1億7047万トン(同0.9%増)とわずかな増加が見込まれている。

 一方、砂糖消費量は、2017/18年度以降、減少傾向で推移し、2019/20年度は世界規模で実施された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大抑制策による経済活動の低迷から、1億6918万トン(同0.3%減)と前年並みで推移した。しかし、2020/21年度は、経済活動の再開を受けて1億7102万トン(同1.1%増)、2021/22年度は1億7303万トン(同1.2%増)とわずかな増加が見込まれており、3年連続で消費量が生産量を上回る見通しとなっている(図1)。

表1

図1

(2)主産国の状況

 砂糖生産量について、2021/22年度の主産国(生産量上位10カ国(注))の状況を見ると、世界最大の生産国であるブラジルは、干ばつや霜害などの影響などを受けて3468万トン(前年度比10.4%減)とかなりの程度減少が見込まれている(図2)。また、第2位のインドは、主産地で降雨に恵まれたものの、3073万トン(同1.2%減)とわずかに減少が見込まれている。一方、EUは、乾燥気候や萎黄病の流行などの影響を受けた前年度からの回復が見込まれることで1469万トン(同5.9%増)とやや増加し、中国は比較的天候が安定していたことなどから1031万トン(同3.3%減)とやや減少が見込まれ、タイは、降雨量の回復を受けて、957万トン(同34.2%増)と、大幅な増加が見込まれている。

(注)日本は第26位(75万トン、同6.7%増)。

 同年度の砂糖消費量は、タイ、メキシコ、ロシアおよび豪州を除いた主産国でいずれも増加が見込まれている。最大の砂糖消費国であるインドは2643万トン(同2.4%増)、中国は1605万トン(同1.6%増)とアジア圏の消費が堅調に増加するほか、ブラジルは1030万トン(同2.5%増)、EUは1535万トン(同3.1%増)と同じく増加が見込まれている。

 同年度の砂糖輸入量は、第1位のインドネシアは542万トン(同4.7%増)、第3位の米国は278万トン(同5.6%増)と増加が見込まれる一方、世界第2位の砂糖輸入国である中国は509万トン(同17.1%減)と大幅な減少が見込まれている。

 同年度の砂糖輸出量は、第1位の砂糖輸出国であるブラジルが生産量の減少見込みを受けて2613万トン(同13.4%減)とかなり大きく減少する一方、第2位のタイは700万トン(同50.5%増)と大幅な増加が見込まれている。

図2

2  COVID-19の影響と今後の砂糖消費

 オランダに本部を置く農業組織向け金融機関のラボバンク社は、COVID-19が世界の砂糖需給に与えた影響と今後の砂糖消費について、また、欧州の脱炭素化への取り組みを発表した。その概要は以下の通りである。

(1)COVID-19の砂糖需要への影響

 COVID-19の流行初期は、ほとんどの国々で大規模なロックダウンが行われ、外出制限などから外食産業は大きな影響を受けた。このため、消費者の喫食する場所が家庭外から家庭内へと移り、家庭消費向けの食料品の購入量が増えた結果、それに伴い砂糖の消費量も伸びている。その後は、感染拡大の沈静化とともに、持ち帰り需要などに向けて徐々に外食産業が再開されるようになり、近時では特段の影響は見られず、むしろ増加基調に戻りつつあるとしている(図3)。

図3

(2)世界の砂糖消費量

 砂糖産業が抱える課題としては、気候変動や病気・害虫による収量の低下、砂糖価格の変動、バイオエタノールなどの競合する製品や作物、先進国での砂糖需要の減少が挙げられる。その中で、世界の消費動向を地域別に見ると、アジアとアフリカで消費量が伸びていることが分かる。先進国では、消費者の健康志向の高まりとともに、砂糖の消費量はほぼ横ばいで推移するか、減少する傾向にある(図4)。

 一方、アジアやアフリカなどの発展途上国では消費量が増加しており、5年間の平均成長率は、アジアで1.5%、アフリカで3%近くに達している。このことから、世界の砂糖消費は、人口の増加が見込まれるアフリカのほか、アジアではインドやインドネシアなどがけん引すると見込まれる。

図4

(3) EUの脱炭素化がバイオエタノール需要に与える影響

 EUでは、自動車から排出される二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする、脱炭素化に向けた取り組みが強化されている。今後、ガソリン車のCO2排出基準の厳格化が既定路線となる中、欧州委員会は、ハイブリッド車を含むガソリン車などのEU域内での新車販売を2035年に終了することを決定している。この決定は、温室効果ガスの大幅削減に向けた取り組みによるもので、ガソリンの補完・代替燃料としての利用が期待されていたバイオエタノールの需要にも影響を与えると考えられ、20年と比較して25年までは5%の増加が見込まれるが、その後、30年には5%減少し、50年には半減すると予測されている。

3  砂糖産業における技術革新と持続可能性

 本セミナーでは、世界および各国の砂糖産業の技術革新や持続可能性について紹介された。その概要は以下の通りである。

(1)技術革新

ア 製造過程における自動化の再検証と改善への取り組み
 生産設備の製造やシステム・ソリューション事業などを手掛けるドイツのシーメンス社からは、砂糖産業の技術革新において、製造過程における自動化の再検証が重要な要素の一つであると指摘している。現状、製糖工場は、原料の受け入れ、破砕から、最終製品の砂糖の完成まで約1000の工程があり、すでに多くの工程が自動化されているが、その中には、エネルギー消費の削減、作業工程の簡略・省略などといった多種多様な課題が、工場や企業ごとにさまざまな形で存在している。よって、現状の自動化の状態について改めて見直し、再考し、新しい技術を積極的に導入し、改善・解消に取り組むことが、産業全体の効率性を高めるポイントになるとしている。また、国連の掲げるSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みに対する社会的な関心の高まりから、製糖工場をより効率的に稼働し、CO2排出量の削減に向け、排出量を正確に把握する必要がある。さらに、COVID-19の拡大により、遠隔地で仕事ができることの重要性が増しており、製糖工場を継続して稼働させるためには、より効率的な遠隔操作技術の導入が重要だとしている。

イ 品種改良と新技術
 ブラジルのカナヴィエイラ技術センター(CTC:Centro de Tecnologia Canavieira(注1))からは、環境課題への解決策として品種改良による生産性の向上が紹介された。

 CTCは、サトウキビが世界で最も重要なバイオマス作物であるとし、品種改良により生産性が向上することで、環境課題への解決策になるとしている。農業分野のバイオテクノロジーは、未開拓な分野であり、サトウキビの生産性を向上させる役割を果たすと期待している。具体的には育種、遺伝子組み換えによる品種改良、新品種の植え付けの三つの技術を融合することで、サトウキビの生産性を大きく向上できるとしている。

 また、CTCが開発した遺伝子組み換え(GM)サトウキビから生産される粗糖・精製糖の安全性および栄養価について、18年8月、米国食品医薬品局(FDA)が現在流通している非GMサトウキビ由来のものと実質的に同等であると発表したことを紹介し、改良された品種の正当性や適格性についても言及した。

(注1)サトウキビのバイオテクノロジーに特化した世界で唯一の民間企業であり、同国内の主要な製糖業者が株主となっている。

(2)持続可能性

ア ブラジル
 ブラジルのハイゼン社(注2)からは、再生可能エネルギーとして注目する「第2世代」バイオエタノールに関する情報が紹介された。

 「第2世代」とは、従来のバイオエタノール(第1世代)がサトウキビの搾り汁を原料とするのに対し、バガスやサトウキビの葉などに含有されるセルロースを主成分とするバイオマスを利用して製造されるもので、従来の砂糖やバイオエタノール生産後の過程において、追加的にバイオエタノールが製造できるメリットがある。また、副産物利用の観点からも、持続可能な取り組みとしても考えられている。同社では、砂糖は先物取引の対象として価格変動リスクがあるため、経営リスクの軽減を図るべく業態の多角化を目指し、粗糖以外のサトウキビ由来バイオマス燃料の生産比率を上げている。

 同社は、太陽エネルギーを燃料に変換するために、サトウキビが最適な植物であり、世界ではサステナビリティへの注目度が増す中、これほどまで自社ビジネスに追い風が吹いていることはないと述べている。なお、従来の第1世代に加えて、第2世代のバイオエタノールを生産することで、サトウキビの作付面積を増やすことなく、5割の増産が可能であるとしている。

(注2)2010年に石油元売大手シェルグループとブラジルの製糖大手コサン社が共同出資して設立された合弁企業で、中南米で最大級のバイオマスプラントを所有している。

イ タイ
 タイの最大手製糖企業であるミトポン社(注3)からは、同国のサトウキビ産業の課題と解決策が紹介された。

 タイでは、サトウキビの収穫の際に、梢頭部しょうとうぶ や余計な葉などを取り除く手間を省く理由から、これらの葉を燃やしてから手作業で刈り取る焼き畑が慣例化している。しかし、同国では焼き畑による大気汚染が広がっており、健康被害なども生じている。

 タイ政府は状況打開に向け、サトウキビ収穫機の導入に対する助成や、焼き畑によらないサトウキビのみを製糖工場に搬入した農家への財政支援などの対策を打ち出し、23年までには、焼き畑による収穫をゼロにするという目標を掲げている。

 また同社によると、同国では圃場ほじょう が8ヘクタール以下の小規模農家の割合が8割を占め、小さな圃場が入り組んで存在しているという問題もあるという。このため、収穫機での作業効率を上げるため、圃場の区画整理を行い、合わせてかんがい施設の整備やドローンの農業利用など、農業現場における変革の必要性をうたっている。また、タイ政府は低炭素経済・社会の実現に向けた対応の一環として、ガソリンへのバイオエタノール混合を推進しているが、サトウキビ産業においても、糖みつやバガスなどの副産物からバイオエタノールを製造することで、関係者の収入向上を図ることが重要であるとしている。

(注3)同社を中心とするミトポングループは、タイを中心に事業を展開する世界的な製糖企業で、砂糖生産量は世界第2位(18/19年度)。砂糖生産だけでなく、バイオエタノールの製造、バガスを使った木質ボードの生産、熱電併給による売電なども行っている。

ウ フランス
 フランスの大手製糖企業であるクリスタルコ社(注4)からは、温室効果ガス排出量の削減に向けた取り組みが紹介された。

 同社では、原料となるてん菜の大半を製糖工場の近隣(平均約30キロメートル圏内)の生産者から供給を受けている。また、スペイン、イタリア、スイスなど国外向けには、主要区間の輸送に鉄道を利用するインターモーダル輸送を採用するなど、サプライチェーン全体の環境負荷の低減を図っている。

 さらに、18年から、工場で使用する燃料の全量を石炭や重油などの化石燃料からバイオマス燃料に切り替えており、10年比で、30年には燃料消費量で17%減、CO2の排出量では35%の減少を見込んでいる。また、砂糖の製造過程で使用される水はすべて再利用され、年間で500万立方メートル(東京ドーム約4杯分)の節水が実現している。

 同社では、てん菜の栽培方法の見直しや砂糖の製造過程における取水量の制限、製糖工場の脱炭素化など、砂糖生産における持続可能性の取り組みをさらに推し進めるとしている。

(注4)フランスの大手製糖企業で、国内に8カ所の製糖工場、3カ所のエタノール工場を所有し、約9000戸のてん菜農家から原料を調達しており、フランスの食品業界への砂糖供給量では最大手、バイオ燃料生産でも有数の企業である。

U 各国における持続可能性に配慮した砂糖の販売状況

1 5カ国における持続可能性に配慮した砂糖の販売状況の比較

 近年、食の安全や自然環境、エシカル消費(注1)などに対する消費者の関心は世界的に高まりをみせている。砂糖業界では、消費者ニーズを満たす商品として以下の4商品に注目が集まっている。

①有機(オーガニック)栽培の原料のみで作られたオーガニックシュガー(注2)
②持続可能なサトウキビの生産や加工、取引を推進する世界的な組織ボンスクロ(Bonsucro)による認証を取得した砂糖
③フェアトレード(注3)認証を取得した砂糖
④環境に優しい包装を使用した砂糖

(注1)地域の活性化や雇用などを含む、人・社会・地域・環境に配慮した消費行動。
(注2)ブラジルやEU、タイにおけるオーガニックシュガーの生産動向の詳細については、以下の記事を参照されたい。

ブラジル:『砂糖類・でん粉情報』2020年5月号「砂糖の国際需給 3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向」のブラジルの項(https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_002209.html
EU:同誌2020年10月号「生産割当廃止後のEUにおける砂糖および異性化糖産業の動向」の「コラム:EUにおけるオーガニックシュガーの生産状況(https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_002302.html
タイ:同誌2019年6月号「タイにおける砂糖産業の動向」の「コラム2 タイにおけるオーガニックシュガーの製造」
(https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_001986.html
(注3)発展途上国で作られた原料や商品を適正な価格で取引し、生産者の生活向上につなげる貿易の仕組みのことで、コーヒーやチョコレートなど、発展途上国での生産が多いものについて、国際フェアトレードラベル機構がフェアトレード認証を行っている。


 こうした中、機構では、日本、米国、英国、ベルギー、豪州の5カ国で持続可能性に配慮した砂糖の販売状況を調査した(表2)。すべての国において、持続可能性に配慮した商品が確認できたが、中でもオーガニックシュガーの浸透が顕著であった。
 

 
 例えば、ベルギーのように、国内で原料の有機栽培からオーガニックシュガーの製造まで手掛ける商品もある一方で、他国では南米諸国などからオーガニックシュガーを輸入し、販売するケースが多いようである。また、オーガニックシュガーの小売価格を比較すると、豪州の商品が一番安く、日本の商品が一番高いなど、国によって価格の多寡が確認された。豪州では、他国と比較してボンスクロ認証商品が多く、その他の認証も含め、一つも認証を受けていない商品の方が少なかった(次項で詳述)。また、日本では、有機食品専門スーパーマーケットなど限られた店舗での販売が多くみられるが、海外では、一般的なスーパーマーケットでも広くこれらの商品が販売されており、消費者の意識の違いが垣間見えた(写真1〜4)。
 
 

   

2  豪州の持続可能性に配慮した砂糖などの販売状況

 米国農務省によると、豪州は世界第4位の砂糖輸出国であり、豪州農業資源経済科学局の予測によると、2021/22年度(6月〜翌7月)の輸出額は約20億豪ドル(1660億円)と見込まれている。近年、輸出量は減少傾向にあるものの、日本向けは増加傾向にあり、2019年は87万1540トンで、15年の56万8090トンに比べて53.4%増と大幅に増加している(図5)。

 現地報道によると、近年豪州では、従来の砂糖よりもオーガニックシュガーなどの持続可能性に配慮した砂糖生産が行われているとされる。主産地であるクイーンズランド州のサトウキビ生産者団体CANEGROWERSでは、土壌管理のほか、化学物質や肥料の散布に関する目標を設定し、CO2排出量を削減するなど、生産性を向上させながら環境負荷の軽減を推進している。

 以下では、豪州シドニー市内の大手スーパーマーケット4社および有機食材を扱う地元小売店における持続可能性に配慮した砂糖の販売状況を紹介する。

図5

ア ウールワース(Woolworth)(写真5〜9)
・ウールワースで健康志向の購買層向けに販売されているプライベートブランド(PB)「Macro」製品群として、オーガニックシュガーも販売
・有機認証マークおよびボンスクロ認証マークをパッケージに記載
・粗糖(Raw Sugar)以外にも、上白糖(Caster Sugar)やソフトアイシングミクスチャー、ココナッツシュガーなどを販売
 
    

    

  
 
イ コールス(Coles)(写真10〜15)
・PBでボンスクロ認証の砂糖を販売
・ココナッツシュガーやステビアなども砂糖コーナーに陳列    
 
   

  

  
 
ウ アルディ(Aldi)(写真16〜17)
・アルディで健康志向の購買層向けに販売されている「Oh So Natural」製品群として、オーガニックシュガーを販売
・ボンスクロ認証の低GI粗糖は、「nucane」という健康面に配慮した製品であることの認証マークが記載
 
    

        

エ アイジーエー(IGA)(写真18〜20)
・何の認証もない通常の粗糖を0.16豪ドル/100gで販売されているのに対し、ボンスクロ認証の粗糖などは0.21〜0.32豪ドル/100gで販売
・持続可能性や低GIをうたう有機ココナッツシュガーを販売
 


    

オ テイスト・オーガニック(Taste Organic)(写真21〜27)
・有機食材を主に取り扱い、シドニー市内に3店舗出店している地元小売店
 


    

    

おわりに

 本セミナーでは、昨年に続いてCOVID-19が砂糖産業に及ぼした影響について、調査・研究機関などから発表があったが、当該テーマに割かれた時間は昨年よりも大幅に減少した。COVID-19の流行初期は、多くの国々で大規模なロックダウンが展開され、一時的に砂糖消費が大きく落ち込んだが、近時では、アジアやアフリカがけん引する形で、再び増加基調に回帰している。今後の需給見通しについては、旺盛な需要に対し、供給面ではCOVID-19の長期化、世界的な天候不順、気候変化などを背景に、依然として不透明な状況にあり、COVID-19の感染状況や経済活動の回復、砂糖の主要生産国の天候状況などについて、引き続き注視する必要がある。

 また、本セミナーでは、砂糖産業における多様性への新たな取り組みや、SDGs達成に向けたバイオマス燃料の生産拡大、CO2の排出削減に向けた取り組みが数多く発表された。各国の砂糖産業関係者においては、環境や社会問題解決の一端としての砂糖産業の役割に対する自覚が強く意識されている印象を受けた。その一方で、EUでは、ガソリン車などのEU域内での新車販売が将来的に終了することで、バイオエタノール原料となる砂糖の生産への影響も懸念されており、引き続き世界的な流れである脱炭素化の進展についても、注視が必要である。

 さらに、今回は実態調査として、持続可能性に配慮した砂糖販売の店頭調査を試みた結果、世界各国で消費者ニーズに応える形で、さまざまな商品形態を確認することができた。今後、日本においても諸外国のように持続可能性に配慮した商品の需要がさらに高まる可能性が想定されるため、今後も引き続き消費ニーズや販売実態などに係る調査を通じ、広く関係者への周知を図っていきたい。

 最後に、コロナ禍の制約下における砂糖の販売状況調査にご協力いただきました岡田卓也氏(米国)、根本悠氏(英国)、平石康久氏(ベルギー)、赤松大暢氏(豪州)に、この場を借りて深く御礼申し上げます。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272