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3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2022年5月時点予測)

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最終更新日:2022年6月10日

3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2022年5月時点予測)

2022年6月

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2022/23年度の砂糖生産量はわずかに増加し、輸出量は前年度並みの見込み
 LMC International(農産物の需給などを調査する英国の民間調査会社)による2022年5月時点の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、2022/23年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、大規模な植え替えが計画されているものの、前年度の不作による苗不足から、848万ヘクタール(前年度比2.3%減)とわずかに減少すると見込まれる(表2)。一方でサトウキビ生産量は、中南部地域において平年より乾燥したものの、サトウキビの生育に好条件が続いたことにより6億500万トン(同4.9%増)とやや増加すると見込まれる。砂糖生産量は、好調なエタノール価格を背景に、製糖業者はエタノール製造への仕向け量を増やすものと見込まれ、3775万トン(同0.4%増)と、わずかな増加にとどまると見込まれる。輸出量も同様に、依然として続くコロナ禍や不安定な国際情勢を背景とした海上運賃の高騰を受けて、インドネシアやアフリカ諸国などでブラジル産の粗糖需要が低下していることから、2708万トン(同0.1%減)とかなり大きく減少した前年度並みで推移すると見込まれる。
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2021/22年度の砂糖生産量はかなり大きく、輸出量は大幅に増加する見込み
 2021/22年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、517万ヘクタール(前年度比5.3%増)とやや増加すると見込まれる(表3)。主産地の降雨量は平年並みまたは平均を上回っており、生育状況は順調であることから、サトウキビ生産量は4億4719万トン(同6.0%増)とかなりの程度増加すると見込まれる。砂糖生産量は、北部で発生した収穫期前の大雨の影響が想定より軽微であったことや、主産地のマハラシュトラ州やカルナータカ州のサトウキビ生産量が予想を上回っていることを要因に前月予測から上方修正され、3869万トン(同15.0%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。輸出量は、砂糖の国際価格の上昇による輸出意欲の高まりを受けて前月予測から上方修正され、1075万トン(同25.3%増)と大幅に増加すると見込まれる。なお、インド産砂糖の主要輸出先であるバングラデシュでは、国内消費量の9割以上を輸入で賄っており、平時と比べて砂糖消費量が増加するラマダン(イスラム教徒の断食月)が始まる4月に向けて、国内の在庫を確保する動きがあると現地報道は伝えている。
砂糖消費量、行動制限措置の緩和などを受けて回復する見込み
 USDAが4月19日に公表した資料によると、インドの2021/22年度砂糖消費量は、飲食店などの業種による砂糖需要や、消費者における加工食品需要の高まりを受けて、2900万トン(前年度比3.6%増)と見込まれている(注1)。同国では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大抑制に向けた行動制限措置の緩和に伴い、砂糖需要が高まっているが、結婚式やイベントなどの開催頻度の増加により、最も砂糖消費が顕著な業種の一つであるホテルや式場などの料飲部門の需要も回復しているという。また、同年度はアイスクリーム、砂糖菓子、焼き菓子、郷土菓子のミタイ(注2)(写真1、2)、飲料、加工食品などの消費者需要も大きく回復している。この流れが継続することで、次年度の砂糖消費量は2950万トン(同1.7%増)と見込まれている。特にミタイ業界では、COVID-19の感染拡大をきっかけに、eコマース(EC)への参入が相次ぎ、大手ECサイトとの提携や独自サイトの創設などを講じたことで、ロックダウン発令時であっても消費者に商品を届けられるようになった。

(注1)表3の消費量(2938万トン)との差異は、出典の違いによるものである。
(注2)ミタイ(Mithai)とは、インドを含む南アジアの郷土菓子の総称で、日常的に食されるほか、結婚式などのお祝いの場や祭りでの消費も多い。主に小麦粉や砂糖、牛乳、ナッツなどから作られる。同国の伝統的な菓子産業(塩気のある郷土菓子〈Namkeen〉を含む)の売上は、COVID-19の影響で著しく減少したものの、2022年度には約86億米ドル(約1兆1168億円(注3))まで回復すると予測されている。
(注3)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の4月末TTS相場1米ドル=129.86円を使用。
 





 
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2021/22年度の砂糖生産量はかなり大きく、輸入量は大幅に減少する見込み
 
2021/22年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、112万ヘクタール(前年度比3.6%減)とやや減少すると見込まれる(表4)。サトウキビ生産量は、主産地である広西チワン族自治区や雲南省の好天などを受けて7389万トン(同0.4%増)とわずかに増加すると見込まれる。一方、同年度のてん菜の収穫面積は、トウモロコシへの転作の増加により(注)、14万ヘクタール(同37.8%減)と大幅に減少すると見込まれる。てん菜生産量も、収穫面積の減少や冬季の寒波などを背景に、718万トン(同42.0%減)と大幅な減少が見込まれる。

 砂糖生産量は、原料の減産に加え、てん菜収穫期間中に発生した大規模停電による製糖工場の操業停止や、降雨によるサトウキビ収穫の遅滞などを受けて995万トン(同13.7%減)と1000万トンを割り込む減少が見込まれる。輸入量は、2020年に引き続き2021年も国内生産の不足分を上回る量が輸入され、国内在庫が積み増されたことから、680万トン(同17.5%減)と大幅に減少すると見込まれる。

(注)同国では、アフリカ豚熱からの回復による豚飼養頭数の増加を受けて、飼料用トウモロコシなどの需要が高まりを見せている。詳細は、2021年6月17日付海外情報「中国農業展望報告(2021–2030)を発表(飼料編)(中国)」〔https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002967.html〕を参照されたい。
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国際鉄道によるカザフスタン向け砂糖輸出を初めて実施
 5月7日、白糖2600トン(総額約180万米ドル〈2億3375万円〉(注))を積んだカザフスタン行きの特別列車が広東省湛江市の駅を出発したと現地メディアは報じた。特別列車は、中国国家鉄路集団などが運営し、中国と欧州各国を結ぶ国際貨物列車「中欧班列」によって運行されるもので、今回は広東省から広西チワン族自治区の南寧国際鉄道港を経由し、約3週間かけてカザフスタンへ直接輸送される。カザフスタンの砂糖自給率は約7%と低く、砂糖需要のほとんどをロシアなどからの輸入で賄っているが、ウクライナへの軍事侵攻による国際情勢の変化から、新たな砂糖輸入先を探し始めていた。今回砂糖を輸出した中国企業は、これまで船便で砂糖を輸出していたが、船便はCOVID-19による物流の停滞や海上運賃上昇の影響を受けており、中欧班列の通関の早さや定時性などの利点から、鉄道による砂糖輸出に初めて踏み切ったという。

(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の4月末TTS相場1米ドル=129.86円を使用。
2021/22年度の輸出量は、わずかに増加する見込み
 2021/22年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は、146万ヘクタール(前年度比1.4%減)とわずかな減少が見込まれる(表5)。てん菜生産量は、干ばつの影響を受けた前年と比べ、今期は生育期の降雨量が多く、生育状況が順調であることから、1億1020万トン(同12.0%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。砂糖生産量は、2021年末以降スペイン南部で発生している干ばつの影響があるものの、干ばつを記録した前年と比べて生育期の降雨量が多く、大規模な病虫害も発生していないため、1711万トン(同13.0%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。輸出量は、前年同期と比較して輸入ペースが鈍化しているため前月予測から下方修正され、128万トン(同1.1%増)とわずかに増加すると見込まれる。




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