砂糖 砂糖分野の各種業務の情報、情報誌「砂糖類情報」の記事、統計資料など

ホーム > 砂糖 > 視点 > サトウキビ産業を盛り立てる!日本一早い収穫たねがしま“さとうきびフェス”

サトウキビ産業を盛り立てる!日本一早い収穫たねがしま“さとうきびフェス”

印刷ページ

最終更新日:2022年11月10日

サトウキビ産業を盛り立てる!
日本一早い収穫たねがしま“さとうきびフェス”

2022年11月

大東製糖株式会社 業務課 松本 侑之

はじめに

 サトウキビの日本北限の産地である種子島では11月からサトウキビの収穫が始まる。「日本一早い収穫たねがしま“さとうきびフェス”」はその初物のサトウキビの収穫を皆で祝い、新砂糖を日本で一番早く味わうイベントとして開催している。主催として「さとうきびの島“種子島”実行委員会」が企画から運営までを行っている。

1.さとうきびフェスの始まり

 「さとうきびの島“種子島”実行委員会」の発足は、新光糖業株式会社を筆頭に種子島の五つの製糖企業(沖ケ浜田黒砂糖小屋、日昇製糖、有限会社りんかけ堂、大東製糖種子島株式会社)が、サトウキビの文化を継承し発展させたいという想いから集まったことがきっかけだ。種子島ではサトウキビの育て方や文化、歴史など、サトウキビについてまだまだ認知されていないのが現実だった。そこで、種子島が長年育んできたサトウキビや砂糖を取り巻く文化、歴史を継承し、発展させる活動を行い、島内のサトウキビ産業を後世にわたって盛り立てるための活動を行う組織として、2019年に「さとうきびの島“種子島”実行委員会」を発足した。種子島を“さとうきびの島”として島内外にPRしていくため、実行委員会が主催となって、毎年11月30日(いい砂糖の日)にさとうきびフェスを開催している(写真1)。

 

2.実行委員会各社の紹介

 「さとうきびの島“種子島”実行委員会」の5社は、種子島に工場を構える砂糖メーカーで、それぞれ個性豊かな商品を製造、販売している。

(1)新光糖業株式会社

 鹿児島県最大の製糖工場(写真2)。1日当たり1600トンものサトウキビを圧搾、製糖することができる。主に砂糖の原料となる原料糖を製造しており、砂糖メーカーへ出荷している。

 

(2)沖ケ浜田黒砂糖小屋

 昔ながらの黒糖づくりを手作業で行っている砂糖小屋(写真3)。砂糖を作っている時は、小屋から湯気が立ち上がる。黒糖の味は、サトウキビで決まると言われており、丁寧に育てて1本ずつ味を確認しながら手狩りしたものを搾り、(まき)だけで三段登り窯で焚き上げる、昔ながらの製法にこだわっている。

 

(3)日昇製糖

 創業以来、伝統製法を守り、南国の自然の恵みを受けて育ったサトウキビから種子島黒糖やさとうきび酢を製造している(写真4)。1番人気の「こくとう豆」は、香ばしく煎った落花生に種子島の手作り黒糖をからめた種子島名産品で、全国菓子大博覧会栄誉金賞を受賞している。

 

(4)有限会社りんかけ堂

 1950年に「柿内喜一商店」として創業し、その後「りんかけ堂」として種子島に長く続くお菓子屋(写真5)。1番人気の落花生に黒糖をからめた「衛星りんかけ」は1964年に商標登録され、種子島を代表するお菓子として親しまれている。

 

(5)大東製糖種子島株式会社

 2018年に設立した新しい製糖メーカー(写真6)。サトウキビの栽培から、砂糖、きび酢の製造や、種子島特産品の安納いもから冷凍焼き芋の製造などを行っている。種子島の原料だけで作った砂糖「(たね)(おうぎ)(とう)」は、サトウキビの植物らしい青々とした香りが広がる、滋味深い味わいの砂糖で全国のユーザーにご愛顧いただいている。

 

3.第1回目の開催

 さとうきびフェスは、実行委員会を発足した2019年に初開催された。11月30日(いい砂糖の日)に島内3会場で一般の方々を招き、工場見学や体験コーナーなどのイベントを行った。地元自治体の鹿児島県、西之表市、中種子町、南種子町、種子屋久農業協同組合に後援いただくことで島外からのお客様も訪れ、延べ1000人が来場するイベントとなった(写真7)。

 鹿児島県最大の製糖工場である新光糖業会場では、種子島のサトウキビ産業を支える工場の見学と巨大な作業用重機の展示を行った。普段はなかなか見ることができない工場内や、製糖の工程に興味津々の来場者が印象的だった。

 昔ながらの黒糖づくりを手作業で行っている沖ケ浜田会場では、伝統的な黒糖づくりの見学会が行われた。煮詰めたサトウキビの搾り汁を木製の撹拌(かくはん)機で混ぜ、冷やし固めていくと深い甘さと香りが魅力の伝統的な黒糖が出来上がる。白い湯気が立ち込める工場内で、初めて見る黒糖づくりに来場者からは歓声があがった。

 大東製糖種子島会場では、2メートルを超える刈り取ったばかりのサトウキビを新鮮なうちに搾り、メロンにも似た芳醇な香りのするきび汁を煮詰めて砂糖にする、その全工程を見学できるツアーを実施した。サトウキビ畑に囲まれた高台の工場で、種子島のサトウキビのおいしさを深く体験できる場となった。また、中種子町のゆるキャラ「きび太郎」が急きょ参戦し、大いに盛り上がりをみせた。

 

4.コロナ禍での開催

 2020年1月に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が大流行し、世の中の経済活動は落ち込んだ。当時、種子島ではまだコロナウイルス感染者は出ていなかったが、感染拡大を防ぐために各種イベントは相次いで中止となっていた。実行委員会でも話し合いが行われ、さとうきびフェス中止の声もあったが、コロナ禍で落ち込んでいる島民を少しでも元気づけたいという思いから、2回目の開催が決定した。規模を大幅に縮小し、Aコープ中種子町店の店頭を借りての黒糖の即売会やりんかけの実演試食、インスタグラムを使った投稿キャンペーンなど、密集しないで参加できるイベントを行った(写真8)。約1000人が来場し、子どもからお年寄りまで笑顔あふれる会となった。また、来場者には種子島における製糖の歴史が分かる年表を配布し、種子島の歴史と文化を継承する良い機会となった。

 

 2021年もCOVID-19の影響は続いていたが、感染症対策のもと、休日に合わせて11月28日に規模を縮小して第3回を開催した(写真9)。当日は、前回同様Aコープ中種子町店の店頭を借りて、各社の商品を販売した。また、インスタグラムキャンペーンの他、フェスオリジナルのベストを着用して盛り上げたり、各社の紹介を載せたチラシを配布したり、気軽に参加できるようなイベントにした。来場者数は約1000人に上り、物販が完売するなど大盛況のうちに終わった。

 

おわりに

 第4回さとうきびフェスも、開催について、国のイベント開催のガイドラインに基づき、十分な感染症対策のもと2022年11月27日(注)に開催することが決定した。来場される方はもちろん、来場が難しい方にも楽しんでもらえるよう、SNS投稿やプレゼントキャンペーンも行うなど、さらに進化したイベントを企画している。

 今後も、サトウキビや砂糖を取り巻く文化、歴史を継承し、島内のサトウキビ産業を後世にわたって盛り立てるための活動を行っていきたい。

(注)状況により予告なく変更する場合がある旨ご了承いただきたい。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272