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砂糖の消費拡大と食育を目的とした学校給食へのデザート提供

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最終更新日:2023年3月10日

砂糖の消費拡大と食育を目的とした学校給食へのデザート提供
〜北海道産原材料にこだわったデザート「あずきゼリー」と「ぜんざい」〜

2023年3月

ホクレン農業協同組合連合会 てん菜業務部 てん菜業務課

はじめに

 北海道は、国内耕地面積の4分の1、115万ヘクタールの豊かな農地を有する一大農業地帯です。広大な大地を生かした規模の大きな生産活動が行われており、小麦、スイートコーン、砂糖の原料となるてん菜、ばれいしょ、大豆、小豆、たまねぎ、生乳などは国内シェア1位を誇っています。

 てん菜は日本国内では北海道のみで栽培されており、道内にある8カ所の製糖工場で、てん菜を原料とした砂糖が生産されています。てん菜は北海道農業を支える重要な基幹作物であり、製糖工場は地域の雇用や経済を支える重要な役割を担っています。

 国内で生産される砂糖は、鹿児島県や沖縄県でサトウキビから作られる甘しゃ糖と、てん菜から作られるてん菜糖がありますが、てん菜糖は国産砂糖の約8割を占めています。

 製造されたてん菜糖の多くは業務用として菓子類や清涼飲料、パン類などに使われていますが、近年人口減少や低甘味嗜好(しこう)により、砂糖の消費は年々減少しています(図1)。また、令和2年度以降は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響による外出自粛やインバウンド需要の減少が砂糖の消費量の減少に影響しています。

 

1 学校給食へのデザート提供の目的

 令和3年度にホクレン農業協同組合連合会(以下「ホクレン」という)は、砂糖の消費拡大だけではなく、北海道産農産物のおいしさや北海道農業について、将来の北海道や日本を担う子供たちに知ってもらい、今後も北海道農業が安定して継続発展していくための理解者やファンを増やしていくことを目的に、学校給食へのデザート提供の取り組みを実施しました。

 デザートの調達に当たっては、小豆や砂糖を使ったお菓子などを製造する北海道のお菓子メーカーであるサザエ食品株式会社にご協力をいただき、北海道産の原材料を使った、給食向けのデザートを提案・製造していただきました。

2 あずきゼリー(令和3年度)

 令和3年度に提供した「あずきゼリー」は北海道産の砂糖と小豆を使用し、学校給食用に1カップ当たり70グラムと子供たちが食べるデザートとして適量になるよう市販のものよりサイズを小さくして提供しました(写真1)。

 北海道内の公立の小学校、中学校、特別支援学校の児童生徒は約36万人いますが、その約4割にあたる15万人に、「あずきゼリー」を学校給食へ無償で提供するとともに、砂糖や小豆に対する理解を深めるため各学校に食育を実施していただきました。

 普段、小豆や和のデザートを食べる機会の少ない子供たちの反応はさまざまでしたが、教育関係者からは、北海道産農産物を原材料にした「和」のデザート提供について、食育の教材として好評を得ることが出来ました。

 

3 ぜんざい(令和4年度)

 ホクレンは令和4年度も学校給食へのデザート提供の取り組みを継続し、提供するデザートについては、前回に続きサザエ食品株式会社にご協力を頂きました。いくつかの候補の中から、北海道産砂糖と小豆の北海道産原材料100%で作ることのできる「ぜんざい」に北海道産大豆で作った「きな粉」をトッピングすることとし、全道の公立小中学校・特別支援学校の児童生徒の約6割にあたる、21万人に提供しました(写真2)。

 

 学校給食へ「ぜんざい」を提供した結果、昨年の「あずきゼリー」より甘く、普段食べる機会がある「餡子(あんこ)」に近いものであったこともあり、子供たちの評価は良好でした。また、PRを兼ねて、当別町の小学校に協力をいただき、テレビなどの取材を実施しました。子供たちからはインタビューで、「小豆を食べたことはあまりなかったけど、おいしかった」「また食べたい」など、素敵なコメントを頂き、子供たちの反応からは将来の国消国産につながる期待を感じました。われわれも給食の様子を見学させてもらい、子供たちの元気なあいさつや、デザートを食べている姿を見て嬉しく思うとともに、子供たちからたくさんの元気をもらうことができました(写真3)。

 

 教育関係者からは令和3年度に引き続き、北海道産原材料を使用した「和」のデザート提供に対し、「良い食育教材を提供してくれた」「今後も継続してデザート提供を行ってほしい」など、評価を頂くことができました。また、ホクレンからは食育の教材に使用できるよう砂糖に関する資料などを送りました。各学校ではそれぞれに工夫し、子供たちの学年などに合わせるなどして、分かりやすい教材を作成し食育を実施していただき、北海道農業・農産物への理解醸成が図られたと感じております(図2、写真4)。

 

 

4 学校給食へのデザート提供の取り組みにあたって

 学校給食へのデザート提供にあたっては、北海道農政部、北海道教育庁、札幌市教育委員会、各市町村教育委員会の協力のもと、令和3年度は農林水産省の「国産農林水産物等販路多様化緊急対策事業」、4年度は「国産農林水産物等販路新規開拓緊急対策事業」を活用し実施しました。

 3年度は事業の実施期間が短く、希望があったすべての学校に対し、デザート提供を行うことが出来なかったため、4年度は希望してもらったすべての学校に対し、デザートを提供できるよう計画の立案や取り進めについて関係機関からのアドバイスをもとに、サザエ食品株式会社、公益財団法人北海道学校給食会と検討しました。途中、COVID-19の影響で事業の予定期間にデザートを提供できず、翌月に改めてデザートを提供する学校もありましたが、希望があったすべての学校にデザート提供を実施することが出来ました。

 また、取り進めるにあたり、給食にデザートを提供するにはアレルギー物質の確認や子供たちに合った量であること、当日の栄養のバランスやカロリー計算が必要なこと、給食の2カ月前には献立を考えていること、学校や給食センターには独自の食材の供給・納入網があること、希望の取りまとめや連絡はどこにお願いすればいいのかなど、学校給食に関するノウハウがないわれわれは関係機関からのアドバイスと協力を頂き、なんとか計画通りにデザート提供を行うことが出来ました。

おわりに

 今回の取り組みを通じて、北海道産農産物を使用したデザートを食べた子供たちが将来、砂糖やてん菜を含む北海道産農産物・農業のファンになってくれることを期待するとともに、子供たちから学校給食でのデザートの話を聞いた家族も、北海道の農産物・農業に興味を持ってくれること、さらには生産者への応援につながることを期待しています。

 ホクレンは「つくる人を幸せに、食べる人を笑顔に」というコーポレートメッセージを掲げています。取り組み方はさまざまあると思いますが、北海道農業の発展とおいしい農産物を届けるために、北海道産農産物の消費拡大と、北海道農業・農産物への理解醸成に向けた取り組みを継続していきたいと思います。

 デザート提供にあたり学校給食について何も知識のない中、ご教示とご協力を頂いた関係機関の皆さま、短期間で子供たちに提供するデザートを製造していただいたサザエ食品株式会社の皆さま、広い北海道内各所の学校などにデザートを納入していただいた公益財団法人北海道学校給食会の皆さまに感謝申し上げます。また、事業の実施にあたりご理解をいただいた農林水産省および事業実施事務局の皆さまに感謝申し上げます。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272