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3.世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2023年5月時点予測)

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最終更新日:2023年6月9日

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増産見込みやインド産の輸出抑制などを背景に、2023/24年度の輸出量はかなり大きく増加する見込み
 2023/24年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、大豆やトウモロコシなどの競合作物の影響を受ける一方、世界的な砂糖価格の高騰や供給不足の懸念により増産意欲が高まったことで相殺し、852万ヘクタール(前年度比0.1%増)と引き続き横ばいで推移すると見込まれる(表2)。サトウキビ生産量は、主産地の中南部地域が降雨に恵まれサトウキビの生育に良好な条件が続いたことなどから、6億5150万トン(同7.5%増)とかなりの程度増加すると見込まれる。

 砂糖生産量は、4月後半の降雨によりサトウキビの集荷の一部で遅れが見られたものの、砂糖価格の上昇などを背景に、4338万トン(同8.9%増)とかなりの程度増加すると見込まれる。輸出量は、インドの輸出枠の拡大の可能性は低いとする報道などを背景に、3282万トン(同12.1%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。
 
ガソリンのエタノール混合率の引き上げを検討
 ブラジルの鉱山エネルギー省のシルベイラ大臣は4月28日、ガソリンのエタノール混合率を現行の27%から30%に引き上げる検討部会の設置を明らかにした。

 同大臣は、砂糖・エタノール業界のイベントで、温室効果ガスの排出削減は次世代エネルギーへの転換に貢献すると発言した上で、混合率引き上げの可能性は予測可能でかつ透明性の高いものでなければならず、今後も継続的に意見交換を行うとした。また、アルクミン副大統領も報道機関に対し、エタノール混合率の増加はガソリン輸入の減少につながり、わが国のエネルギー安全保障に貢献するとして、同国におけるエタノール利用の加速を視野に入れた発言を行った。

 サトウキビとトウモロコシから生産されるエタノールは、ガソリンに比べてCO2排出量が最大で9割削減されるとされ、同国ではエタノール利用により過去20年間で、約6億2000万トンのCO2を削減したと試算されている。そのため、同国におけるエタノール利用は、SDGsへの取り組みのモデルケースとして、世界的に注目を集めている。
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2022/23年度の減産見込みを受け、輸出量は大幅に減少する見込み
 2022/23年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、主産地であるウッタル・プラデーシュ州やタミルナードゥ州における作付面積の拡大などから、557万ヘクタール(前年度比5.4%増)とやや増加すると見込まれる(表3)。サトウキビ生産量は、ウッタル・プラデーシュ州やカルナータカ州で増産が見込まれるものの、マハラシュトラ州での天候不順による減産が影響し、4億6041万トン(同2.4%減)とわずかに減少すると見込まれる。

 一方で、砂糖生産量は、天候不順による早期によりCCS(注)が低下したことなどから、3535万トン(同8.3%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。インドの全国協同組合砂糖工場連盟によると、4月末時点で9割近くの工場(531工場のうち464工場)が製造を終了し、5月末にはすべての工場で製造が終了する見込みとしている。輸出量は、減産見込みに加え、同国政府が昨年11月上旬に22/?23年度の砂糖輸出枠を600万トンと発表したものの、今後の輸出枠拡大の可能性が低いことを踏まえ763万トン(同38.8%減)と大幅な減少が予想される。

(注)可製糖率:サトウキビのショ糖含有率、繊維含有率および搾汁液の純度から算出される回収可能な糖分の割合。

国内選挙を見据え、砂糖価格安定に向けて、輸出抑制の恐れ
 4月28日付け現地報道によると、「2022/23年度のインドの砂糖生産量は、昨年9月から12月の収穫期における天候不順によりサトウキビの収穫作業が停滞したことで、3270万トン(前年度比8.9%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。このため、輸出拡大による国内の砂糖価格の上昇を懸念する政府は、今後、砂糖輸出の禁止に動き出す可能性が高い」としている。

 現在、同国では国内の年間需要に相当する2750万トンの在庫が確保されているとみられるが、政府は年内の州議会選と年明けの連邦議会下院選を前に、砂糖輸出を禁止することで、国内在庫確保の姿勢を示すとともに、国内価格の鎮静化を図る狙いがあると考えられている。

 21/22年度は、期中に輸出を1000万トンから1120万トンに拡大したものの、今年度の輸出枠拡大は厳しいとされ、22/23年度は砂糖輸出枠600万トンに対し、すでに約400万トンが輸出されたと見込まれている。
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2022/23年度の砂糖生産量は1000万トンを割り込み、輸入量も引き続き減少する見込み
 2022/23年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、113万へクタール(前年度比0.8%増)とわずかに増加すると見込まれる(表4)。サトウキビ生産量は、主産地の広西チワン族自治区で昨年7月から11月の間で続いた干ばつの影響や病虫害の発生により、6424万トン(同10.9%減)と落ち込み、7000万トンを割ると予想される。中国気象局によると、広西チワン族自治区では2月に再び干ばつに見舞われたとした報告もあり、春植えの生育への影響も懸念される。一方で、同年度のてん菜の収穫面積は、16万ヘクタール(同7.7%増)とかなりの程度の増加が見込まれる。これによりてん菜生産量は、順調な生育を見込み、859万トン(同21.5%増)と大幅に増加すると予想される。

 砂糖生産量は、サトウキビの減産予測から、973万トン(同5.8%減)とやや減少し、1000万トンを下回ると見込まれる。輸入量は、これまで国内生産の不足分を上回る量が輸入され、国内在庫が積み増しされてきたことから減少見通しが続いている。22/23年度も、国内での砂糖生産が減少予測となっているものの、世界的な砂糖供給のひっ迫懸念を理由に、624万トン(同10.3%減)と前月予測からかなりの程度減少する見込みである。
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2022/23年度の輸出量は、100万トン割れの大幅減少見込み
 2022/23年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は、ロシアによるウクライナ侵攻の影響により、世界的な規模で深刻な食糧不足や価格高騰への懸念が広がる中、収益性が高く価格が高騰しているトウモロコシなどの穀物への転作が進んだことなどから、140万ヘクタール(前年度比4.0%減)とやや減少すると見込まれる(表5)。てん菜生産量は、昨夏の記録的な熱波や干ばつの影響のほか、肥料価格高騰による施肥の減少やEU域内でのネオニコチノイド系農薬の緊急的使用の禁止などから収量が平年を下回るものと予測され、9914万トン(同11.0%減)とかなり大きく減少すると見込まれる。

 砂糖生産量は、フランスなどでエタノールへの仕向量が減少したものの、てん菜の減産のほか、干ばつなどの影響を受けたてん菜が12月中旬の急激な冷え込みと霜により含糖量が一層低下したことや、一部のEU加盟国での収穫作業の遅れなどから、1571万トン(同9.1%減)とかなりの程度減少すると予想される。輸出量は、砂糖の減産などを背景に前回予測から下方修正され、97万トン(同25.9%減)と大幅に減少し、100万トンを割ると見込まれる(注)
 
(注)詳細については、2023年5月11日付海外情報「欧州委員会、てん菜および砂糖の短期的需給見通しを公表(EU)」https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003509.htmlを参照されたい。
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