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【レポート】 中国の人たちの大事な食材、豚肉の需給について

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最終更新日:2012年7月25日

経理部 調整課 (前調査情報部) 平石 康久

はじめに

中国は、高度経済成長と人口増加を背景として、食肉需要が年々高まっています。食肉需要は飼料穀物の需要とも密接に関わることから、中国の食肉需要を把握することは重要です。特に、豚肉は中国国民の主食であり、今後も需要が伸びることが見込まれています。

そこで、農畜産機構は、平成23年12月、中国の豚肉の需給動向を調査しました。調査結果は以下のとおりです。

中国の豚肉の消費量

2006年のデータですが、中国は1人あたり年36kg(骨付き重量で換算)を消費している上、世界で生産される豚肉の約半分を消費しています。現在、中国で消費されている豚肉は、ほぼ中国国内で自給されています。
しかし、政府は豚肉も、飼料となるトウモロコシも自国で供給していく政策を維持していくとしていますが、消費量の増加、価格の高騰等が今後とも生じることがあれば、輸入を増加させるのではないかと見る人もいます。(表)
(表) 肉類、魚介類およびトウモロコシの需給データ(2006年)
(表) 肉類、魚介類およびトウモロコシの需給データ(2006年)

中国で飼育されている豚

大規模な養豚企業
大規模な養豚企業
中国で飼育されている豚の品種は「生まれる子供が多い」、「肉付きが良い」、「肉質が良い」といった優秀な遺伝子を持つ豚の品種を掛け合わせた3元交雑種といわれる品種がほとんどです。これは、日本を含め、商業的に豚を飼っている多くの国と同じです。

飼料も地域による違いはありますが、トウモロコシなどの穀物と、大豆から油を絞った後の大豆かすを混ぜ合わせた配合飼料を与えています。
地方の養豚農家の豚舎内
地方の養豚農家の豚舎内
一方、他の国と大きく違うのは農家の規模で、1農家の飼養頭数が7頭というデータがあります。

日本でも家族経営が主体ですが、だいたい1農家で平均して1500頭飼養しています。ただし中国でも近年何万頭の豚を飼う企業が増加しています。

中国の豚・豚肉の流通と販売

生きている豚の輸送
生きている豚の輸送
さらに日本と違うのが流通と販売のやり方です。日本のように冷蔵・冷凍の豚肉を流通させる施設が整っていないことから、農家から消費地の近くまで生体で運ばれていきます。
小売市場のお肉屋さん
小売市場のお肉屋さん
と畜された後、スーパーのようなお店で売られることもありますが、多くは露店が集まる小売市場で、冷蔵などを行わず生鮮肉の固まりの状態で切り分けて販売され、ほとんどその日のうちに消費されることになります。

豚肉の価格

中国経済を観察するうえで、消費者物価指数は重要な指標となっています。経済発展が進んでも、国民の収入の伸びより物価の上昇が上回ってしまえば、国民から不満が出るからです。

その指数の中で最もウェイトを占めているのが豚肉といわれており、政府は豚肉価格の安定に大変気を使っています。
具体的には安値時に豚肉の買入保管、高騰時には冷凍豚肉や契約をしていた農場から生体豚の出荷を行うなどの政策をとっています。

しかし、ピッグサイクル(※)と呼ばれる周期的な価格変動に加え、豚の病気の発生、経済情勢等が価格に大きな影響を与えることから、価格の高騰、低落を繰り返しています。(図)
(図) 中国の豚肉価格の推移
(図) 中国の豚肉価格の推移

まとめ

中国では既に豚肉を多く消費しており、これ以上の消費量の伸びる余地は少ないと見る意見もあります。

流通の改善による輸送途中の損失が少なくなれば、今の生産量でもより多くの消費が賄えることになります。また、鶏肉や魚に消費が移る可能性も考えられます。
一方で、所得の伸びとともに豚肉の消費は引き続き増加していますが、飼料の価格上昇や環境問題などで生産の増加は容易ではないことから、豚肉の供給が消費に追い付いていけるか懸念する声も聞かれます。

豚肉の世界需給に大きな影響を与える国であることから、今後とも中国の豚肉需給をよく観察していくことが大事であると思われます。
なお、今回紹介しているレポートの詳細は、機構のホームページでご覧いただけます。

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このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196