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【トップインタビュー】「外食産業と農業振興」

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最終更新日:2013年9月4日

ロイヤルホールディングス株式会社 代表取締役社長 菊地唯夫氏に聞く

 1951年の創業以来、ファミリーレストランの草分けである「ロイヤルホスト」をはじめとして多くの外食、コントラクト、機内食、ホテルを展開するロイヤルホールディングス社長の菊地唯夫氏に外食産業と農業振興についてお話を伺いました。

最近の経営概況は、どのような状況でしょうか。

外観
 2008年はご記憶に新しいと思いますが、リーマンショックで日本の企業が本当に苦労した年で、ロイヤルグループも非常に大きな損失を計上しました。そこから、2013年に至りますが、まだリーマンショックの傷が癒えていないという状況です。
 ロイヤルグループはロイヤルホストをはじめとする外食、コントラクト(給食等受託事業)、機内食、ホテルという4つの事業セグメント(収益の単位)をもっています。グループ全体で約750店舗以上の拠点を展開しているグループですが、2008年の段階では全体が非常に悪くなってしまいました。
 私が2010年に社長に就任して最初に手掛けたことは、しっかりしたグループの長期ビジョンを持つということでした。
 同年 10 月に「ロイヤルグループ経営ビジョン2 0 2 0」を策定し、その中で、「日本で一番質の高い食&ホスピタリティグループ」を目指すというグループビジョンを決定しました。次に、2011年 11 月に新中期経営計画「Fly to 2014」を策定し、持続的成長(=増収増益の継続)という基本方針を発表しました。
 市場全体が縮小している今、既存店のマイナスを新店でカバーし拡大していくという戦略は持続性があるとは言えません。当社グループの目指すものは、まず、第一に既存店、既存事業において、質を高めることにより、持続的な成長の基盤を構築することです。
 外食事業の他、少子高齢化社会においてニーズが高まるコントラクト事業や高い収益性を確保している機内食やホテル事業など、すべてのセグメントにおいて、新しい時代に対応した、「日本で一番質の高い食&ホスピタリティグループ」を目指しています。

国産食材の利用については、どのような取り組みをされていますか。

菊池氏
 日本の消費者の方々は「安全安心」を大きなテーマと認識されていますので、まずは、第一条件として、これをしっかりお届けするというのが我々の責任です。そういった視点からロイヤルグループは、原産地表示を外食産業の中では一番早く、2005年からスタートさせました。
 また、輸入食材も、国産食材同様に、安全安心を担保できることを確認した上で使用していますが、国産食材は、生産者との距離が近いので、お客様に対する説明責任をしっかり発揮できます。これが国産野菜、畜産物の大きな強みだと思います。
 最近、新しく手がけているのは、食品のリサイクルです。いわゆる循環型のリサイクルループというものです。一部試験的に、九州、埼玉地域のロイヤルホスト、セントラルキッチン等で残った食品残さを食品リサイクル事業者に回収いただき堆肥にします。堆肥は野菜などの生産者で使用され、生産されたものを再度、当社グループが食材として活用する取り組みをしています。先ほど、持続的成長というお話をしたんですが、やはり、日本はこれだけ資源が少ない国ですから、このような取り組みも経営の一環として実施しています。

国産食材の調達や使う上でのご苦労などはありますか。

 いま、グループ全体の青果物と青果加工物のうち、国内産が9割で、輸入が1割です。ただ、畜産に関してはUSビーフやポーク、ブラジルチキンが多くなります。国産の割合は牛肉、豚肉等に限ると約3割です。
 ロイヤルホストの人気メニュー No .1は「黒黒ハンバーグステーキ」です。このハンバーグミンチは、国産の黒毛和牛と黒豚を使用していますが、その開発には1年以上の期間がかかりました。特に、黒毛和牛7.5と黒豚2.5の黄金比率は、100通りもの組み合わせを検討した上で、開発部門のコックの試食、女性モニターの方々の試食、店舗の従業員から選ばれた方々などの試食を行って決定いたしました。
 黒黒ハンバーグは国内の黒豚と黒毛和牛があって初めてできるんですね。品質の良さとトレーサビリティ(食品の追跡可能性)を実際に食しているなかで感じていただくことが大事だと思います。食味などの品質と検査履歴の明確さなどの安全安心、両方そろってお客様に満足していただけると思いますので。

ロイヤルグループの野菜の取引はどういう方向にありますか。

 野菜の種類に関係なく、そこは、デリカフーズさん(加工販売業者)を通しています。日本はやっぱり北海道から九州まで生産者のネットワークが非常に広いので、生産のタイミングも南から北へと少しずつ違います。調達に関しては、畑までは指定しませんが当社の規格を守っていただきます。この仕組み、ネットワーク化をうまく作っていきますと、農家さんからすれば安定的な供給先の確保になりますし、お客様に対しては、より付加価値の高い食材の提供が可能になると思っています。

ロイヤルにとって農業への思いや期待は?

 少子高齢化になっても生き残れるモデルを日本で構築したいと考えています。これが持続可能なというコンセプトです。このコンセプトをベースにすると、生産者との関係も、おのずとネットワーク化ができ、安定的かつトレーサビリティを維持した形で、既存事業を生かした6次産業化が可能であると考えています。
 国が6次産業化といって、新しいものをどんどん農業法人中心に作っていこうという流れがありますが、私は新しいことを作っていくのも一つの考え方だと思うんですが、いまある外食事業者と生産者のルート、既存のものをより緊密に結び付けていくことにも価値があると思っています。いまあるものをもっと活かしていきましょう、いまあるネットワーク、我々自身と生産者との関係などをもっと強固なものにすれば、日本の農業を強くしていくことに繋がるんじゃないかと、いつも思っています。

日本人のお客様のもっている食生活習慣はどのように変化していると思いますか?

 一番大きな影響は少子高齢化でしょう、今後 10年、20年は続くと思います。当然、それに応じて食の環境は変化してきます。例えば、最近、家でてんぷらを揚げるという機会が減ってきたと聞いています。そういったときに、日本のてんぷらという文化を守っていくという意味でも当社グループの「てんや」に大きな意味があると思うんですね。
 また、外食の選択肢が増え、デフレ経済の中で、価格の安い業態にロイヤルが押されていた部分があったんですが、家族でいいものを食べようというときに、「やっぱりロイヤルホストだよね」と言われることが、非常に大事だと思うんですね。

小さいお子さんがいても安心していけるのがファミレスの魅力。

 小さいお子さんをもつご両親は、お子さんの食べ物を気にしますし、それに応えるため我々は産地表示やアレルゲン対応などに取り組んでいます。時代の変化とともに、安全安心に対する意識が高まると同時に、多様性が増した食生活において、本源的に多様な食を提供しうるファミリーレストランの役割は大きいと考えます。
 例えばロイヤルガーデンカフェという新しい業態のレストランを展開しており 7月に4店目がオープンしましたが、ここでは店舗のイス、テーブルなどの家具やその他の内装品においても、リサイクルに取り組んでいます。また提供する野菜の中で、ジャガイモ、人参など、3割程度は季節の有機野菜を地元で調達し、店で出た食品残さはそこで堆肥化して、ご希望のお客様にお配りしています。お店のなかでループを回していくという、新しいことに取り組んでいます。私たちでは、このような取り組みを「サスティナブルコミュニティ(持続可能な街の基盤)」という言い方をしています。

これからの外食産業の展望を伺えますか。

ガーデン
 私の印象は常にサスティナビリティ(持続可能性)が重要だと思います。会社の経営における持続性だけではなく従業員もそうです。外食は離職率が非常に高いといわれますが、我々の昨年の離職率は5%です。産業としてのサスティナビリティに人材の定着は不可欠です。また。お客様に何度もご利用いただくということもサスティナビリティの大事な要素です。お客様にとって、一回しか行かないというのはサスティナブルとはいえません。生産者との関係にしても、今回はおたくの、次は違うところというのではサスティナブルではありません。企業には従業員、お客様、生産者、株主、金融機関、オーナーなど、様々な利害関係者がいますが、すべてのネットワークを持続可能なものにしていくことが大切なことと思います。(了)
ロイヤルホールディングス株式会社代表取締役社長
菊地 唯夫(きくち ただお)
菊池氏
昭和40年生まれ 早稲田大学政治経済学部卒
昭和63年4月 株式会社日本債券信用銀行(現 株式会社あおぞら銀行)入行
平成 5年5月 フランス ESSEC経済商科大学院大学(ビジネススクール)卒業
平成 9年6月 株式会社日本債券信用銀行秘書室秘書役(頭取担当)
平成12年3月 ドイツ証券会社東京支店入社
平成16年4月 ロイヤルホールディングス入社、執行役員総合企画部長兼法務室長
平成21年5月 取締役管理本部長兼総合企画部長兼法務部長
平成22年3月 代表取締役社長

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