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土づくりの原点は森にあり〜長野県南牧村 菊池千春さん〜

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最終更新日:2014年11月5日

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長野県は、日本有数の葉物野菜の産地として有名ですが、なかでも、夏場の冷涼な気候を生かしたレタ
スの出荷量は18万5千tに達し、全国で第1位です。
今回お話を伺ったのは、八ヶ岳の裾野に位置する南牧村でレタスやキャベツを栽培されている「農事組
合法人信州森のファーム」の代表理事菊池千春さんです。
菊池さんは、高校卒業と同時に家業を継いで、就農46年目になります。
8haのレタスを中心に、キャベツを2ha栽培するなど、ご家族と約10名の従業員とともに日々野菜作りに奮闘しています。
収穫されたレタスとキャベツは、約9割を加工・小売業者向けに契約出荷されており、alicの契約指定野菜安定供給事業も利用されています。

◆森は宝の山

「森の落ち葉が良い土を作ります」と菊池さん
「森の落ち葉が良い土を作ります」と菊池さん
同法人の特徴は、何と言っても「土づくり」です。
11月下旬になると、堆肥づくりのために従業員総出で所有している森に入り、手作業で大量の落ち葉を集めます。
「落ち葉についた土着菌が土づくりには欠かせません。
土着菌は、化学肥料が必要ないくらいの栄養素を生み出してくれるのです。
落ち葉が沢山ある森は、まさに宝の山です。」と話されます。
具体的には、森で集めた落ち葉、木炭、地域の牧場や業者から購入した牛糞、稲わら、飼料用トウモロコシ、飴の粉末、キノコの菌床培地等をもとに堆肥を作り始めます。
これらの材料は、約1年間かけて土着菌の発酵作用で熟成された堆肥となり、翌年の秋には圃場へ鋤き込まれ、有機質たっぷりの土が生まれます。
手探りで土づくりをしていた菊池さんは、かつては市販の微生物資材を使用してみましたが、南牧村の気候にはうまく適合できず、最終的には落ち葉の土着菌に辿り着いたそうです。
菊池さんは各地の土着菌について調べたり、研究会に積極的に参加したりするなど、土づくりの研究を
20年以上続けており、「微生物の様子を発酵の香りで確認しながら、配合を微調整する。」など、長年の経験で培った独自のノウハウを確立されています。

◆人+ 土+ ¥= 倖せ

海上コンテナを改造した自前の予冷庫
海上コンテナを改造した自前の予冷庫
手間がかかる土づくりですが、菊池さんは、「倖せ(しあわせ)という字は、人(ひと) + 土(つち) + ¥(お金)と書くでしょう。
つまり、人は土にお金をかけないと幸せになれないんです。これが私の持論です。」
と語られ、大切な土づくりのために手間とコストを惜しみません。
この土づくりを経営の原点とした上で、海上コンテナを改造した自前の予冷庫の導入や、通いコンテナの使用など経営全体のコスト削減にも力を注いでいます。
土づくりを重視する菊池さんのレタスは、「食味、ツヤともに良い。」と、スーパーなどのバイヤー
の間ではとても評判です。

◆将来は途上国で技術普及を

コストと手間を掛けた自家製堆肥
コストと手間を掛けた自家製堆肥
菊池さんの今後の夢は、海外にも向けられています。
「ネパールには、南牧村に似た気候の高原地帯がたくさんあります。
しかし、多くの人は、生活が貧しく、都市部や外国に出稼ぎに行くのが現状です。
せっかくの好条件にも関わらず、野菜を自国で生産できていません。
だからこそ、農業技術を伝え、産業としての農業を根付かせて、貧しい人々の力になりたい。」
と、将来は途上国へ貢献する夢を力強く語られていました。

◆契約取引を支える仕組み

土づくりを大切にしている同法人は、土づくりの原点である「森」に因んで「森のレタス」、「森のキャベツ」などの自社ブランドを冠することで、他社との差別化を図り、加工・小売業者向けの契約出荷に取り組んでいます。
これらの契約取引には、リスクもあります。
例えば、契約価格が市場に連動している場合、市場価格が著しく低下すると、生産者の収入が減少しま
す。
a l i c では、このリスクを軽減するため、「契約指定野菜安定供給事業」を実施し、市場価格低落時は、平均取引価格と保証基準額の差額を一部補てんするなど、契約取引を支える様々な取り組
みを推進しています。
事業図

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このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196