消費者コーナー 「食」の安全・安心や食育に関する情報、料理レシピなど

ホーム > 消費者コーナー > 広報誌 > 【レポート】イタリアにおける加工用トマトの生産状況およびトマト加工品の生産、輸出動向

【レポート】イタリアにおける加工用トマトの生産状況およびトマト加工品の生産、輸出動向

印刷ページ

最終更新日:2017年5月10日

 イタリアでは、トマト食文化の発展とともにトマト加工業が盛んになりました。現在、アメリカ、中国に次ぐ世界で第3位のトマト加工品生産国であり、主要輸出国となっています。イタリア産のトマト加工品は日本のトマト加工品輸入量の4割を占めており、スーパーなどでもイタリア産トマト缶などは常に陳列されています。

トマト生産に適したイタリアの気候

地図

 イタリアは、大部分が夏の日差しが強く、年間を通じて降水量の少ない地中海性気候に属し、トマト生産に適しています。トマトの作付面積の9割近くが加工用であり、品種は「トンド」と呼ばれる丸い形をしたトマトと「ルンゴ」と呼ばれる長筒形の長トマトがありますが、生産の約8割が丸トマトのトンドです。また、南部のプーリア州とポー平原が広がる北部のエミリア=ロマーナ州が二大産地で、生産面積では、5割以上、生産量では、7割弱を占めています。
 2013年の加工用トマトの生産量は約430万tで、アメリカに次いで2番目となっています。イタリア産の加工用トマトは、加熱により粘りのある独特のうま味が出るといわれ、特にトマトソースに向いているとされています。

トマト加工品の生産・輸出動向

トマト生産

 もともと輸出産業として発展したイタリアのトマト加工業は、伝統的な産地であるカンパニア州ナポリを中心に18世紀後半から発展しました。トマトの缶詰の生産が始まったのは1800年代で、完成品が1878年のパリ万博で紹介されたことが記録されています。元々は缶詰のホールトマトのみでしたが、その後トマトピューレなど他のトマト加工品も作られるようになりました。立方形に切ったダイストマトやそれをさらに細かくしたポルパフィーネなどの生産が始まったのは比較的最近のことです。ホールトマトは長トマトから、ダイストマトは丸トマトからそれぞれ作られます。
 地域別でみると、北部では主にピューレやペーストなどの濃縮されたトマト加工品が生産され、南部ではホール・ダイスなどの固形トマトの入った加工品の生産が主体となっています。
 生産されたトマト加工品の6割は輸出向けで、EU域内(輸出量の約6割弱)、アメリカ、日本を中心に世界各国へ輸出されています。主な輸出品目は、固形のホール・ダイスのトマト加工品であり、同国のブランド力も手伝って、このカテゴリーでは世界最大の輸出量を誇っています。また、ピューレ、ペーストなどのトマト加工品も中国に次いで世界で2番目となっています。
 2015年のトマト加工品輸出量は、前年比2.4 % 増の188 万t でした。内訳は、ホール・ダイスが65%に当たる123万t、ピューレ・ペーストなどの濃縮された加工品が残りの35%に当たる66万tとなっています(図2)。輸出量は、どの品目も近年ほぼ横ばいで推移していますが、今後は、中東(アラブ首長国連邦、カタールなど)、アジア(タイ、インド)、東欧(ブルガリア)など、経済発展に伴い食生活の多様化が見込まれる新興国に対する伸びが期待されています。

グラフ

トマト陳列

日本市場におけるイタリア産トマト加工品

 日本のトマト加工品輸入量は、リコピンブームで需要が伸びた2012年をピークに、2013年以降、緩やかな減少傾向となる、イタリア産は、中国産やアメリカ産と比較して高価ではあるものの、ブランド力などにより維持されています(図3)。イタリア産は、一般家庭向けに多く販売されているホール・ダイストマト加工品で9割以上と圧倒的なシェアを誇っています。
 イタリアのトマト加工業にとって、日本は、安定的な供給先として重要な市場となっています。
 イタリア産トマト加工品は、価格面では競合する主要生産国と比較して高価ですが、長い伝統によるブランド力などを背景に、今後も国際市場をリードしていくとみられています。
(調査情報部 大内田 一弘)

グラフ

前のページ         次のページ
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196