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【トップインタビュー】日本の野菜をおいしく食べる! 〜長崎ちゃんぽん・皿うどんの野菜、麺の小麦、餃子はすべて国産品〜

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最終更新日:2017年7月5日

株式会社リンガーハット代表取締役会長兼CEO 米M和英 氏に聞く

正面
「新鮮な国産野菜はおいしい」と、お店で使用するすべての野菜の国産化に取り組み、外食産業をサポートする一般社団法人日本フードサービス協会(JF)の理事としても活躍されている株式会社リンガーハットの米M代表取締役会長兼CEOにお話を伺いました。

はじめに米M会長が理事をされているJFについて教えてください。

 JF(ジェフ)の正式名称は、一般社団法人日本フードサービス協会といい、日本の外食産業の発展をサポートし、豊かな食文化の創造に貢献するため、昭和49年に設立されました。
 外食産業は、関連する産業をつなぎ発展させる存在です。外食産業が元気なら、食材を提供する農林水産業や食品製造業、食材を運ぶ流通業も元気になります。外食産業が店舗を開けば新たな雇用を生み、店舗が賑わえば来訪者も増え、その街も元気になります。また、外食産業はいつでも誰にでも、安全・安心な食を届けることで、人々の健康で豊かな生活に貢献しています。現在の外食産業は、市場規模が25兆円、従業員は約500万人となり、日本の雇用と地域経済を支える大きな産業へと成長しました。外食と社会のつながりが深まる中、JFは消費者の関心の高い安全・安心への対応などについて、外食産業各社のサポートをしており、会員は800社を超えています。

JFではどのようなことに取り組まれましたか。

 外食産業では、質の高い食材をいかに早く、効率的に調達できるかが大きな課題です。私が会長を務めた平成18年から2年間は、その課題に取り組むため、産地見学交流会の開催を推進しました。それまでより開催回数を増やして、産地が対応してもらえるか不安もありましたが、始めてみると知事や市長から、次はぜひうちの産地を取り上げてほしいと陳情に来るくらい反響があったんです。
 畑を視察した後の商談会では、「今日は、仕入れの決定権を持った人が60〜70人来ているわけですから、どんどんアピールしてください。一度名刺交換して話しただけじゃ駄目です。仕入責任者は、10年も20年も付き合ってきた取引業者をやめて新しいところに切り替えるかどうか、我々もプレッシャーを感じて交渉しているので、生産者の方もそのことをわかった上で生産物を売り込んでください」と、私はいつも言っていました。産地では、生産者の方が昼ごはんのおにぎりと野菜を出してくれたのですが、畑で食べる採れたての新鮮な野菜はおいしいと、いつも感じていました。
 今では、産地見学交流会はだいぶ定着してきて、過去の商談会で交渉が成立した取引が継続される事例が増えています。

リンガーハットの創業について教えてください。

 リンガーハットの創業は、昭和37年に私の兄が、長崎で開いたとんかつ屋が始まりです。それからしばらくは、うどん屋、すき焼き屋、結婚式場など、いろいろなことをやりましたね。
 昭和40年代は札幌ラーメンの全盛期みたいな感じで、長崎にも1店オープンしました。1年くらいは盛況だったんですが、その勢いがスーっと落ちてきて2年半くらいしたら閉店したんですね。他の地域では人気があるのに、どうしてと考えた時に、長崎にはちゃんぽんがあるからではないかと思ったんです。しかし、ちゃんぽんをお店で提供するには、具材を炒めて煮込む工程があって、手間が掛かって難しいんです。そのため、すぐにはできませんでしたが、試行錯誤を重ね、昭和49年に「長崎ちゃんめん」をオープンして、ちゃんぽんを始めました。「リンガーハット」に名前を改めたのは、福岡県にオープンさせた3年後の時です。
 

全国各地でお店を見かけますが、どのようにチェーン展開してきたのですか。

 大阪万博が開催された昭和45年は、日本初のファミリーレストランチェーンのすかいらーくが登場するなど、「外食産業元年」といわれていて、日本の外食産業が大きく動き出した時期でした。我々は、早くからチェーンストアの研究団体のセミナーに参加するなど、勉強を始めていました。そのため、ちゃんぽん1号店の出店の時から、自社の小さな工場で麺も餃子も作っていました。兄は、1号店の出店時から100店を目標に掲げ、チェーンストア化をもくろんでいたわけです。本格的にチェーンストア化を目指したのは、長崎で11店出した後に次の商勢圏として少し離れた福岡に出店してからです。すると、そこでも爆発的に売れて「これでいけるな」と確信しました。それから11年かけて昭和60年に100店を達成しました。平成29年4月末現在では、「リンガーハット」653店、「Mかつ」109店、その他1店、内数になりますが海外にも13店を営業しています。

ちゃんぽんの魅力とは。また、味の工夫は。

 ちゃんぽんの魅力は、野菜や肉、魚介類も入っていて、ラーメンに比べても栄養バランスがよいところです。ちゃんぽんは、長崎の家庭でもよく食べられており、それぞれの味を持っています。また、給食にもちゃんぽんの日があります。長崎では、何かの物の価格をみるときに、ちゃんぽんの価格を基準に、高い安いと判断するくらい身近な食べ物です。ちゃんぽんという名前も親しみやすさがあり、魅力の一つだと思います。
 リンガーハットでは、お客様の健康志向に応え、具材を炒める時は動物性のラードの代わりに、ラードの風味を持たせた植物性の油を使用するとともに、減脂減塩にも取り組んでいます。また、飽きがこないよう、ちゃんぽんの味のブラッシュアップを工夫しています。この他、今までのお店では味わえないお客さまの好みにお応えするため、スープや麺、追加の具材を選んで「myちゃんぽん」を作ることができる店舗も誕生しています。
 

インパクトのある「国産野菜100%」、取り組んだきっかけは。

 創業当初からしばらくは、国産品を使っていましたが、昭和57年頃から海外調達を始めたことで、原料代を国産原料の2分の1〜3分の1くらいに抑えることができました。しかし、輸入品は冷凍したものを使うこととなり、生と比べると味の違いは歴然です。以前は、品質が悪い輸入品を調達してしまい、商品の変更を余儀なくされたこともありました。
 野菜の国産化に取り組んだのは、平成20年にJFの会長を辞めて、経営が悪化していたリンガーハットに復帰した時でした。JFでの産地見学交流会の経験から、生の国産野菜を使用し、そのおいしさを伝えることで、お客さまにも喜んでもらいながら業績の回復ができればと思ったのがきっかけです。しかし、国産野菜は価格が高く原材料費だけでも10億円も上がってしまうため、社員の中には本当にできるのか不安に感じる声もありました。私自身は、JFの会長時代には国産野菜を使おうと言ってきただけに、それを自社で実行しないのはおかしいんじゃないかと、プレッシャーに感じることもありました。それでも、畑で味わった「新鮮な国産野菜はおいしい!」という感動が後押しをして、翌年の平成21年にリンガーハット全店において、使用する全ての野菜の国産化を実現させました。今では、麺の小麦や餃子もすべて国産です。
 

「国産野菜100%」の取り組み開始から、1年間で達成できた理由とは。

 リンガーハットでは、キャベツの契約栽培に昭和55年くらいから少しずつ取り組んでいたため、生産者の方との間に信頼関係ができていました。国産野菜100%の取り組みから1年間で達成できたのは、昔からお付き合いのあった契約栽培の生産者さんたちが協力してくれたからだと思います。
 今でも、リンガーハットでは野菜の栽培段階から深く関わり、基本的に農薬や化学肥料を減らした契約栽培を行っています。また、安全で、味わいにも栄養価にも富む高品質の野菜づくりに熱心な生産者の方との結び付きを大切にしています。

海外展開で、日本の農産物について改めて感じたことはありますか。

 現在、海外には13店出店しています。海外でもメニューの半分は、日本のメニューを忠実に再現していますが、残りの半分は現地流にアレンジしたメニューとしています。
  タイに出店した時に、日本と同じメニューを日本と同じように作っても味がおいしくなりませんでした。それで、原因は何かとキャベツの糖度を計ってみると、当社の国内基準は通常より高めの8度に対し、タイのキャベツは糖度が半分以下しかありませんでした。これでは本当の味は出せないということで、送料を含めたコストは2倍〜3倍も掛かるのですが、日本から送ることにしたんです。輸送に時間が掛かるため、タイでの糖度は6度まで落ちてしまいますが、それでも現地で炒めてスープで炊いたらおいしさが変わりました。やはり、日本の農産物はすごいなと感じましたね。今でも、タイの店舗にはキャベツの他、たまねぎや麺を送っています。
 タイの他、香港やインドネシアにも麺を送っているのですが、2020年を目指してASEAN地域で50店を達成したら、その地域に工場を作ろうと頑張っています。

農畜産物の生産者へのメッセージをお願いします。

 去年、オランダの大規模な農業施設を視察した際に現地で言われたのは、「日本は野菜を作ることばかりで、売ることを考えていないんじゃないか」ということでした。オランダでは、農産物を作る前から売り先を考え、EUのコック長たちとどういう農産物を作るか、話し合って作るものを決めています。そのため、できあがった野菜は、彼らが宣伝してくれて、一挙に広がり販売に結び付けることができるのだそうです。
  確かに、日本の生産者は作ることに一生懸命で、もう少し販売することにも力を注ぐべきではないかと思います。外食産業側でも、質の高い農畜産物の安定的な調達を求める声があるので、産地見学交流会の場に限らず、さまざまな場面で実需者と意見を交換して、意思の疎通を図っていくことが必要と感じています。今後も、リンガーハットとして、またJFとしても、引き続き国内の生産者を応援していきたいと考えています。
 

株式会社リンガーハット 代表取締役会長兼CEO 米M 和英(一般社団法人日本フードサービス協会 理事)

昭和18年生まれ
昭和37年 鳥取県鳥取西高等学校卒業
昭和39年 株式会社浜かつ(昭和57年 株式会社リンガーハットに商号変更)設立
昭和51年 同代表取締役社長に就任
平成17年 同会長に就任
平成18年 社団法人日本フードサービス協会会長に就く
平成20年 事業の立て直しのため、株式会社リンガーハット社長職に復帰
平成26年より現職。なお、平成21年には、外食産業の振興を評価され「藍綬褒章」を受章している。
プロフィール
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196