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【第一線から】四万十川流域で育てるこだわりの「四万十牛」 〜高知県四万十市 横山 大河(たいが)さん〜

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最終更新日:2017年9月6日

「日本最後の清流」四万十川

地図

 四万十市は高知県西南部に位置しています。市の東南部は太平洋に面しており、北部から東南部にかけて、「日本最後の清流」として有名な四万十川が流れる、自然環境に恵まれた地域です。四万十川は、天然アユなどの漁場として名高く、水質が良好であることから、環境省の「名水百選」に選定されています。

高校3年生で牧場長に

 四万十川に程近い場所に構える牛舎で、黒毛和牛約150頭を飼養しているのが「西土佐中央牧場」の横山大河さん(26)です。
 西土佐中央牧場は、横山さんの祖父母が50年ほど前に経営を開始した牧場です。横山さんの両親も子牛から食肉になるまでの牛を育てる肥育経営を営んでいたことから、子どもの頃から牛が身近な存在でした。横山さんは、牛の世話を手伝ううちに肉用牛肥育の魅力に惹かれ、高校3年生のときに牧場長として本格的に肉用牛肥育に携わるようになりました。

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きめ細やかな飼養管理と高い肥育成績

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 黒毛和牛の特徴は牛肉のサシ(霜降り)ですが、牛肉にきれいなサシを入れるためには、餌として与える稲わらが必要不可欠です。西土佐中央牧場では、餌の稲わらを地元産にこだわり、四万十市内の近隣農家から収集しています。このことは、餌代の削減にもつながっていますが、何よりも、「牛がおいしそうな顔をするから」と笑いながら話してくれました。
 また、横山さんは、牛のブラッシングが重要だと考えています。ブラッシングは、牛の健康状態のチェックだけではなく、牛のストレス軽減となり、餌の食い込みが良くなる、牛の血行が良くなる、皮下脂肪が均一になるなど、肉質の向上にも効果があるといわれています。毎日欠かさず牛をブラッシングして、牛一頭一頭の状態を把握することで、きめ細やかな飼養管理をすることができます。こうして育てられた西土佐中央牧場の牛は、上位等級の4等級、5等級の格付割合が約8割と、優良な成績となっています。平成21年に開催された、枝肉の品質を競う第23回全農こうち肉牛枝肉共励会では、最優秀賞を受賞するなど、高い評価を受けています。
 西土佐中央牧場では、このような好成績にも関わらず、出荷までの飼養期間は短くなっています。通常、肉用牛肥育では、導入した子牛を約20カ月間飼養した後に出荷します。飼養期間を十分確保することによって、脂肪交雑などの肉質の向上や枝肉の重量増加が期待されます。しかし、西土佐中央牧場の飼養期間は、きめ細やかな飼養管理によって、肉質・枝肉重量ともに平均以上の成績を確保した上で1カ月程度短い19カ月となっています。このことにより、牛を育てるために必要な餌代などのコストの削減と高収益を実現しています。

牛肉は地元の精肉店や焼肉店で販売

 西土佐中央牧場で生産された牛肉の一部は、牧場から約2kmの場所にある「横山精肉食品センター」の店頭に並びます。ここは、横山さんの母親の真紀さんが店長を勤める精肉店です。
 精肉店では、平成9年から、西土佐中央牧場で生産された牛肉を「四万十牛」という独自ブランドで販売しています。一昨年には、四万十市内に開店した焼肉店でも四万十牛の提供を開始しており、ここでも、牧場で生産された牛肉が店頭のショーケースに並びます。四万十牛はお客さまから、甘みがあり、柔らかく、とてもおいしいと評判です。

顔が見えるからこその強み

 地元精肉店や焼肉店での牛肉の販売は、生産者にとって消費者の声が届きやすいという強みがあります。「質の悪い肉を出したら文句を言われる。質の高い肉しか出せない」と横山さんは言います。自分が育てた牛肉を食べるお客さまの顔が見えるからこそ妥協はできない。消費者との距離が近いからこその意識の高さが好成績につながっていることが伺えます。
 西土佐中央牧場では、四万十牛の供給量を増やし、ブランドとしての地位の確立を目指すため、平成28年3月末に、牛舎を新設したところです。これにより、約200頭の収容が可能となり、現在飼養頭数の増加に励んでいます。西土佐中央牧場が、今後さらなる躍進を遂げることを願って止みません。

「牛マルキン」で経営の安定を支援

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 さまざまな取り組みを行っている西土佐中央牧場ですが、それでもなお、黒毛和牛の肥育には多くのリスクがあります。黒毛和牛は、子牛を導入してから出荷するまで、約2年もの期間がかかります。この間、牛の販売価格、餌代、子牛の購入価格などはその時の相場に左右されるため、結果として収益が大幅に変動する可能性があります。特に、子牛の購入費用は、黒毛和牛の肥育にかかるコスト全体の半分以上を占めており、子牛の価格が収益性に及ぼす影響は大きなものとなります。近年、子牛の価格が高騰しており、肥育事業者の収益性への影響が懸念されています。こうしたリスクに備えるため、alicでは、肉用牛肥育経営安定特別対策事業(通称「牛マルキン」)を実施しています。
 牛マルキンとは、経営の収益がマイナスとなった場合に、積立から補てん金が交付される制度です(制度の仕組みは左図参照)。西土佐中央牧場も牛マルキンに加入し、もしものときの備えとしています。
 
(畜産経営対策部)
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