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【第一線から】夢のある農業を実現 〜北海道恵庭市 余湖 智(よご さとる)さん〜

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最終更新日:2017年11月1日

アメリカで見た「かっこいい農業」が原点

地図

 北海道の新千歳空港と札幌市のほぼ中間に位置し、交通の便と穏やかな気候に恵まれた恵庭市で、余湖さんは45年前に家業の農家を継ぎました。就農当初、7.5haだったほ場も現在55haに拡大させながら、水耕栽培と土耕栽培を組み合わせ、トマト、にんじん、小松菜、キャベツなど70品目に及ぶ大規模野菜経営に発展させてきました。
 「その道のりは苦労の連続だった」と話す余湖さんの原点は、26歳の時、北海道が企画したアメリカでの農業実習ツアーに参加して目の当たりにした、アメリカの「かっこいい農業現場」です。アメリカの農家はみな良い暮らしをしている一方、日本にはまだトラクターもない時代。アメリカと日本では30年の差があると感じ、どうせやるなら、自分もかっこよくて儲かる夢のある農業にしよう、と決意しました。帰国後ほどなくして農園を設立し、それ以降、道内でも先駆的な、さまざまな取り組みを行ってきました。
 

有機栽培、特別栽培、JGAP。いつも「アニマトーレ」な存在に

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 まだ有機栽培も産直も一般的でなかった30年ほど前、余湖さんは消費者グループからの依頼で、野菜の有機栽培に取り組み、宅配を始めました。有機栽培や特別栽培に対する意識を深めてもらうため、消費者との勉強会や、自治体、農業普及センターなどへの説明会を何度も行いました。
 平成24年にはJGAPを取得し、取引のあるスーパーでは「JGAP産直コーナー」が設置されました。JGAPに対する消費者の支持、ファンを増やすため、スーパーと一緒に「JGAPとは何か」をわかりやすく噛み砕いた解説を考えました。
 余湖さんが数年前に視察で訪れたイタリアには「アニマトーレ」という職業があるそうです。イタリア語で「元気にする人」という意味で、生産者と消費者を繋ぐ専門の人。現在も生協と一緒に食育に取り組む余湖さんは長年「アニマトーレ」の役目も果たしてきました。
 
※特別栽培とは、その農産物が生産された地域で慣行的に行われている節減対象農薬および化学肥料の使用を、半分以下の量に減らして栽培すること。
 

就農当初から興味のあった6次化

 余湖さんは、6次化にもいち早く着手しました。農園の敷地内には直売所があり、そこには獲れたて野菜のほかにも自社作物を使った加工品が並びます。種類が多いのが調理用トマトを使った商品。トマトジュースやトマトソースといった一般的なものから、トマト醤油、トマト鍋の素、トマトソフトクリーム等々、余湖さんの豊富なアイデアから生まれた珍しい商品が数多くあります。また、国産のトマトでホールトマトの缶詰を作りたいという名古屋の学校給食からの要望で、調理用トマトをそのまま卸すこともしています。
 

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理想の観光農業

 国産はもちろんのこと、地産地消の観点からも、これからは「届けるより来てもらう」観光農業が理想だと話す余湖さんの農園では、野菜の収穫体験や、トマトソース作りなどの農産加工体験、そのトマトソースを使ったピザ作り体験などを行っています。また、園内にはバーベキュースペースもあり、農園で収穫した野菜を焼いたり、お肉とたっぷりのたまねぎに、トマト鍋の素で甘い味付けをしたジンギスカンも人気です。余湖さんは、来園者に楽しんでもらえるようにと、ほ場管理の合間をぬって、施設見学の案内役やピザ作りの講師を務め、現在では年間約5000人が訪れるいつも賑やかな農園になりました。
 「苦労も多かったが、様々なことにチャレンジし続けてきた甲斐あって、今は楽しいことが多い」と話す余湖さんは、26歳の時にアメリカで見て志した「夢のある農業」を、40年以上経った今、見事に実現させています。
  

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(野菜需給部)
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