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【レポート】中国の養豚と環境規制強化

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最終更新日:2018年5月9日

 中国は、世界一の豚肉生産・消費・輸入国です。近年、環境規制が強化され、養豚業も、廃水による汚染源として、取り締り対象になっています。
 今回は、世界の豚肉需給に大きな影響力をもつ中国の養豚の動向と環境規制の影響について紹介します。

豚肉は、中国で最もポピュラーな食肉

 中国語で「肉」というと、一般に豚肉を指し(※1)、また、漢字の「家」は豚を意味する文字をもとに作られています(※2)。中国人にとって豚が古くから身近なものであったためだと考えられます。

また、全世界の豚肉消費量の約半分を中国が占めています。


※1: 大修館書店『中日大辞典 増訂第二版』の「肉」の項では、「豚・牛・羊などの獣肉:ふつう漢族の場合,豚肉のことを指す。」とある。

※2: 角川書店『新字源 改定新版』の「家」の項では、「宀と、豕(いけにえのぶた)とから成る。もと、いけにえをささげて祖先神を祭る「たまや」の意を表した。ひいて、「いえ」の意に用いる」とある。

レポ1-2

常温流通が主流

 生産された豚肉は、半分程度が常温で流通すると言われています。夜明け前にと畜・解体された豚肉は、その日のうちにウェットマーケット(※3)で売り切られます。
 中国では、内臓も含め、すべての部位が食べられており、さまざまな部位の肉や加工品が売られています。
 ※3: 伝統的な生鮮市場。食肉は常温で販売される。

熱帯種

アンガス

強化が図られる環境規制

 社会問題となっている環境汚染を改善するため、中国政府は、排煙や廃水を出す工場などに対し、厳しい取り締まりを行っています(※4)
 養豚業も、廃水で環境を汚染するとして、取り締まりの対象になっています。2014年以降、全国の地方政府は、畜産を禁止する「飼養禁止区域」を次々に定めています。中国環境保護部の発表によると、63.6万平方kmの地域5) が飼養禁止区域に指定されています。
 
飼養禁止区域内の農家は、2017年内に立ち退かなければならないとされていましたが、まだ立ち退きが終わっていない地域が多くあるため、今後もしばらく立ち退きが続くとみられています。


※4: 環境基準に違反する工場に対し、操業停止や責任者の拘留が行われていると言われる。
※5: 中国の国土面積約960万平方kmの6.6%。日本の国土面積の1.7倍。2017年6月末時点。

 
 政府は、全国の省・自治区などを4つのグループにわけ、養豚生産者の再配置を図っています。特に、水路が張り巡らされ、養豚廃水の影響が深刻な南部地域(制約発展地域)から、比較的土地に余裕のある東北地域(潜在発展地域)に養豚経営を移転する計画です。しかし、実際に移転しているのは資金力のある大企業であり、多くの零細農家は廃業していると言われます。
 「重点発展地域」は、伝統的に養豚の盛んな地域で、今後、年平均1%で飼養頭数を増やすとされています。2016年の飼養頭数は1億7500万頭で、最も飼養頭数が多いグループです。

 「潜在発展地域」は、飼料資源が豊富な地域や環境負荷に余裕のある地域で、今後、年平均1〜2%で飼養頭数を増やすとされています。飼養頭数は8300万頭です。
 「適正発展地域」は、あまり養豚が盛んでない地域であり、飼養頭数は2400万頭です。
 「制約発展地域」では、多くの地域が飼養禁止区域に指定されています。飼養頭数は1億5200万頭です。

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依然多い零細経営

 伝統的な産業である養豚は、多くの零細農家によって支えられています。一般に、零細農家は畑作などの副業として豚を飼っているため、豚価格の変動に応じて飼養頭数を急激に増減すると言われています。
 2010年と2015年の生産者数を比べると、全体で約1500万戸減っており、そのほとんどは零細経営です。また、2016年以降は、環境規制の強化によって、多くの零細規模の経営が閉鎖する一方で、大規模経営は高い収益性を背景に積極的に増頭していると言われ、さらに規模拡大が加速していると見られています。
 豚肉の巨大な生産・消費地である中国の需給動向は、世界の豚肉需給に大きな影響力を持っています。中国の豚肉輸入は、2016年に国内消費量の4%にまで拡大しましたが、国内生産の回復と国内価格の低下により、2017年には、3%に低下しました。今後の中国の豚肉需給動向が世界から注目されています。

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