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【レポート】中国における酪農・乳製品需給の現状と見通し

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最終更新日:2019年11月6日

 中国では、経済発展による生活水準の向上により乳製品の消費が急速に増加しています。消費の85%は牛乳やヨーグルトなどの飲用乳で、朝食やおやつなどとして日常的に消費されています。ここ数年の間にさまざまな商品が開発されており、今年5月の北京取材には、スーパーマーケットやコンビニエンスストアには驚くほど多くの乳製品が並んでいました。また、チーズやバターについても、ピザなどの外食や菓子パンの普及により消費が増加しています。さらに、2016年から「一人っ子政策」が廃止されたため、粉ミルク(幼児用調製粉乳)の消費も急増しています。
 今回は、このように急速に変化する中国の乳製品消費を支える酪農や乳製品生産について紹介します。
 

レポ1-1

生乳生産量は2000年以降4倍に増加

 中国の酪農業は、冷涼な気候で牛の飼養に適する北部を中心に発達してきました。近年はヨーロッパやオセアニアなどの酪農先進国から牛や機械などを導入することで、乳製品の原料である生乳の生産量は2000年と比べて約4倍に増加しています(図1)。
 

レポ1-2

ぐらふ

増加を続ける乳製品輸入

 国内で生産する牛乳・乳製品の9割以上は飲用乳などで、1割弱が粉ミルクなどの原料となる全粉乳(生乳から水分を除去して粉末状にしたもの)です。チーズやバターは生産技術が十分でないことや輸入品の方が安いことから、国内ではほとんど生産されていません。特に飲用乳などは生乳以上の勢いで生産量が増加しており、2000年と比べて19倍になりました(図2)。
国産原料の不足分や国内生産が難しい製品については、輸入品で賄っています。
 2016年以降のここ3年間の状況をみると、全粉乳は供給量の約3割を輸入に依存しており、輸入量は毎年10%程度増加しています。特に消費が増加しているヨーグルトの輸入は約4倍にまで増加しました。また、粉ミルクについては、高品質な輸入品の人気が高いうえに「一人っ子政策」が廃止されたことにより、輸入量は毎年30%程度増加しています。チーズやバターも毎年5%以上増加しており、2018年の総輸入量は264万tでした。
 

熱帯種

勢いは落ち着くものの今後も輸入は増加する見込み

 このように、数年間で大きく状況が変化してきましたが、まだ経済発展の余地がある農村部を中心に、今後も牛乳・乳製品の消費は伸びていくと考えられています。一方で、生産コストの上昇や環境規制などに対応できなかった中小規模の酪農家の廃業が進んでいます。今後は、飼養技術の向上や規模拡大に伴う効率化により生乳生産量は増加する見込みですが、需要の増加を満たすには十分でないと考えられています。このため、今後もあと数年は輸入増が続くと見込まれています。
 中国は巨大な人口を抱えており、日本を含めた世界の乳製品需給や価格に大きな影響を及ぼす可能性があります。引き続き動向を見ていく必要があるでしょう。
 
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農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
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