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【トップインタビュー】冷凍食品から考える食の未来

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最終更新日:2020年3月4日

ベフロティ株式会社 代表取締役社長 西川 剛史 氏に聞く

ベフロティ株式会社 代表取締役社長 西川 剛史 氏
ベフロティ株式会社 代表取締役社長 西川 剛史 氏
 近年、冷凍食品の国内における生産・消費量が増加し、冷凍の食材を活用したビジネスに参入する事業者も多くなっています。こうした中で、これらの商品化のためのコンサルティングを行うとともに、冷凍学の知識や冷凍食品の活用方法に関する普及活動を行う西川剛史氏(ベフロティ株式会社代表取締役社長)に、お話を伺いました。

Q.冷凍食品に関わる仕事に就くこととなったきっかけを教えてください。

認定NPO法人フードバンクふじのくに 副理事長 池冨 彰 氏
 冷凍食品に関心を持ったのは高校生の頃です。家庭での食事に利用されていたことから、冷凍食品を利用すれば簡単においしい料理を食べられると気づきました。料理に手間をかけずに味のクオリティーを高めることができる点に魅力を感じ、これからのニーズにも合っていると考えて、冷凍食品の開発に従事したいと思うようになりました。大学で食品の栄養や食生活を専攻する中で、時間がなくても健康的な食事を摂る重要性を意識するようになり、冷凍術・冷凍食品の分野の仕事に携わりたいとの思いから、大学卒業後は冷凍食品のメーカーに勤務し、生産管理や商品開発等を経験しました。
 現在は独立し、冷凍食品の商品化を目指す事業者向けのコンサルティング事業に加え、一般向けに冷凍学の知識や冷凍食品の活用方法等を伝える活動等を行っています。コンサルティングでは、冷凍した市販用又は業務用の調理食品の製造・販売を行おうとする飲食事業者や、農畜産品を冷凍することで販路を拡げようとする生産農家からの相談を受けています。提供しようとする商品に見合った食材の処理方法や急速冷凍(※1)のための技術・ノウハウに関し、凍結機の選定も含めてアドバイスを行うほか、商品開発のための試作等のお手伝いもしています。
 一般向けの普及活動では、意識の高い消費者層や関連業種の社員等を対象に「冷凍生活アドバイザー」の養成講座を開講し、食材の栄養や保存等冷凍に関する理論を体系的に教授しています。これまでに260人程が受講を修了しており、その修了生を集めて、自作の家庭料理の冷凍レシピをプレゼンしてもらうコンテストを昨年10月に開催しました。このほか講演や出版、TV出演等も行いながら、冷凍術・冷凍食品の紹介に努めています。

(※1) 食材内の水分が凍る温度帯(マイナス5℃からマイナス1℃)を30分以内に通過する凍結方法。食材の細胞破壊を防ぐことで、栄養価や風味を損なわずに冷凍保存ができる。

Q.現代の食生活において冷凍食品を利用するメリットはなんでしょうか。

 冷凍食品はさまざまな点で優れていますが、まず栄養価が落ちにくいことが挙げられます。食品の加工工程で加熱や乾燥等を行うと栄養や風味を損なうことも多いですが、冷凍では元の品質を保ちやすいということがあります。次に、ほとんどの食品が冷凍可能であり、野菜や肉だけでなく果物なども冷凍の商品とすることができます。上手に選択すれば冷凍食品だけでも健康的な食事を実現できますが、他の加工食品では同じようにはいかないと思います。このように消費者にとっての選択の幅が広いところが、冷凍食品の大きな魅力だと考えます。
 購入した冷凍食品を使うのと併せて、家庭で冷凍術を活用することも有用です。家庭用の冷凍庫では急速冷凍はできませんが、余った食材を冷凍すれば食品ロスの防止になりますし、あらかじめ下処理・味付けをして冷凍保存しておけば、忙しい中で調理をする際の時短になります。市販の冷凍野菜などに自分で冷凍した素材も組み合わせて、手軽に栄養バランスがとれた食生活を送っていただきたいですね。

Q.家庭で冷凍した食材をおいしく食べるコツを教えてください。

 家庭では緩慢冷凍(※2)を行うことになりますが、特に鮮度が落ちる前に冷凍することや、保存容器の空気をしっかり抜くこと等に気を付ければ、良い状態で冷凍できます。
 家庭で冷凍した食材を利用する場合、解凍後に品質や風味を保つのが難しいというデメリットがあります。冷蔵庫に生鮮品を入れて取り出すのであればそのままの状態で使えますが、冷凍する手順を踏む場合には、解凍のやり方次第で味が落ちてしまいます。
 解凍方法も食材ごと、また何の料理に使うかで変わってきます。大まかに言えば、野菜は加熱解凍です。凍ったまま沸騰したお湯に入れたり、フライパンで強火で炒めたりするなどして、できるだけ高温、短時間で加熱するのが理想です。肉や魚は、氷水に漬ける氷水(ひょうすい)解凍がおすすめです。ドリップ(※3)を抑え、食感や味が悪くなるのを防ぐことができます。

(※2) 食材内の水分が凍る温度帯に30分以上とどまる凍結方法。通常の家庭用冷凍庫では、緩慢冷凍しか行われない。
(※3) 緩慢冷凍を通じて食材の細胞が破壊され、細胞内の氷が解凍時に水分として流れ出るもの。肉や魚のうまみ成分を損なう原因となる。

Q.事業者による冷凍食品・食材の商品化では、どのような点が課題でしょうか。

 冷凍食品・食材は、事業者にとってもビジネス拡大のきっかけになると考えます。事業としての製造・販売のためには急速冷凍を行うこととなりますが、冷凍前後に適切な処理を行うことが重要という点は、家庭で行う緩慢冷凍と同じです。コンサルティングを受けに来られる方にも性能の良い急速凍結機さえあれば良い商品ができると考えている方が多いのですが、食材や販売形態等に応じて適切な凍結機を選択する必要もあります。  急速凍結機の機種・性能には幅があるので、目的に合わせて過不足のないスペックのものを利用し、冷凍前の処理、野菜であれば収穫後の保管やカットを適切に行わなければ、いくら急速冷凍したとしても鮮度を保った良好な状態で提供することはできません。機器のスペックと前後の処理を上手に組み合わせる、その両方の知識・ノウハウが必要とされるのです。その点のアドバイスが、事業者向けのコンサルティングにおける重要なポイントになっています。

Q.農業生産者からの相談もあると伺いましたが、冷凍農畜産物の販売についてどのようにご覧になっていますか。

 農畜産物に付加価値を付けて販売する6次産業化に関心を持つ生産者は多いですが、農作業が大変でなかなか加工までは手が回らず、中途半端に終わってしまう例も少なくないようです。この点、冷凍であれば比較的労力をかけずに、常温やチルド(冷蔵)よりも販路を拡大する可能性を広げられると思います。急速凍結機の導入費用はかかりますが、中小企業支援のための補助を受けられる場合もあり、6次産業化の中では取り組みやすいのではないでしょうか。農畜産物はそのまま冷凍して素材として販売できるのはもちろん、加工してから冷凍で販売することもできます。例えば、リンゴはそのまま冷凍リンゴとしても出荷できますし、パイやタルトといった加工食品にして冷凍販売することもできるので、アイデア次第で商品としての可能性を広げ、魅力を高める余地があります。ただし果物などの種類によっては、単純に素材として冷凍したものは生のものと同列には売れないので、やはり加工度を高めるなどして付加価値を付ける必要はあります。
 これまで畜産農家から相談を受けたことはないのですが、食肉についても可能性があると思っています。先述のように凍結前に適切な処理をした上で急速冷凍を行えば、肉も冷蔵のものと遜色なく食べられるのですが、現状ではチルド販売が中心になっています。そのチルド販売の過程で保管時に緩慢冷凍されるケースがあったりすることで、冷凍肉は解凍するとドリップが出ておいしくないというイメージに結びついているようです。冷凍して質が低下するのは、適切な処理と急速凍結を行っていないからであるということを、皆様に知っていただきたいです。
 
 

Q.冷凍食品分野における国産農畜産物のシェア拡大のために、何が必要だと思われますか。

 最近は、輸入される冷凍食品の品質も高くなってきています。中国産の冷凍野菜も一時期の事故を契機として品質管理を徹底することで、ものすごくレベルが上がってきています。品質面で安全、かつ価格も安いものが手に入るのは消費者にとっては良いことですが、国内の生産農家からみれば脅威ということになるでしょう。
 国産の素材を使っているため輸入品より価格が高くなることに理解を示す消費者は増えていると思いますが、その点だけで勝負するのは難しいので、さらに付加価値を付けていく必要があるでしょう。冷凍野菜でいえば、ブロッコリーを例に挙げると、重量にすれば茎も房も同じなので茎の部分を多くして廉価で販売し、利益を上げる販売方法があります。その逆に、茎の部分を極力減らして房を多くすれば価値の高い商品となります。当然、販売価格も高くなりますが、どのみちコスト的に海外産のものに比べて割高になるとすれば、「高くても売れるもの」を作ることが重要ではないでしょうか。
 

Q.国産農畜産物を使った冷凍食品の海外における需要についてはどう思われますか。

 国産農畜産物の輸出促進との関係でいえば、生鮮食品の場合、チルドでは日持ちせず物理的に配送できない地域もあることを考えれば、海外に輸出するには冷凍技術は必須だと考えます。
 海外で販路を見出すためには、特別な国産としてのブランド価値のある果物などはそのまま冷凍して供給するのでよいかもしれませんが、それ以外は、日本ならではの特色ある食材や加工技術を用いた商品を売り出していくことが必要だと考えます。そもそも海外にない食材である、ゆずや特別な品種のイチゴを使うとか、また、豆腐や麺類など日本独自の製法で作ることで差別化を図った商品を、あえて日本で作って売っていくやり方を目指すべきだと思います。
 日本とは商習慣や食文化の異なる海外で販路を開拓するには、当然ハードルが存在します。商品の表示も外国語表記としなければならず、現地にビジネスの拠点や提携先を作り、キーマンを確保することも必要でしょう。こうした民間の努力に対し、国によるサポートが求められると思います。
 

Q.今後の冷凍食品市場の見通しについてお聞かせください。

 女性の社会進出や高齢化、単身世帯の増加を背景に、今後も成長が見込めると考えています。最近の飲食業における人材不足対策として、調理作業の合理化のための「クックフリーズ」(仕込みをした食材を冷凍保存しておくもの)も注目されており、家庭用のみならず業務用の需要もあると思います。しかし、日本国内の人口は減少しており、また冷凍食品の製造は小規模の事業者でも参入可能なため、競争はこれまで以上に激化することも想定されます。国内では一事業者当たりのパイは縮小を余儀なくされる以上、海外市場にも目を向けていく必要があるでしょう。
 こうした状況の下で、商品開発にあたって一層の工夫を行い、より消費者のニーズにあったものを提供していくことが求められます。商品の内容はもちろん、消費者が最も良い状態で商品を食べられるようにするため、パッケージの仕方や利用方法の説明にも気を配る必要があると思います。
 このような課題を念頭に置きながら、「手軽に健康的な食生活を送る」というテーマのもと、今後とも冷凍食品・冷凍術の普及促進のために努めたいと考えています。
 
横顔
ベフロティ株式会社
代表取締役社長
西川  剛史(にしかわ たかし)  氏

大阪市立大学大学院 修士課程 修了
冷凍食品メーカー等で商品開発等を経験した後、テレビ番組への出演をきっかけに冷凍の専門家として認知されるようになり、現在は、講演や出版、TV出演等も行いながら、冷凍術・冷凍食品の普及活動を積極的に行っている。
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196



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