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【第一線から】神戸・西元町駅徒歩2分メルカロードの牛乳店〜地域の商店街でチーズの製造・販売に取り組む現場から〜

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最終更新日:2020年11月4日

商店街の中のチーズ工房

増加するチーズ工房

 近年、わが国では、ナチュラルチーズ(※1)の消費が堅調に推移する中、国産ナチュラルチーズを製造するチーズ工房が増加傾向にあります。その数は、平成22年の約150工房から、令和元年に323工房と2倍以上に増えています。チーズ工房は、原料である新鮮な生乳を確保する必要があるため、酪農が盛んな地域やその近郊で営まれていることが多いですが、今回は、都市部でチーズ製造にチャレンジしている工房を紹介します。
(※1)生乳に乳酸菌や凝乳酵素を加えて固めたもの、またはそれを熟成させたもの。

西元町駅徒歩2分のチーズ工房

 兵庫県神戸市中央区、神戸三宮駅から2駅の西元町駅徒歩2分のところにある「スイミー牛乳店」は、水門輝美(すいもんてるみ)さんが平成30年2月に開業したチーズ工房で、メルカロード宇治川(宇治川市場商店街連合会)という商店街の中でチーズとヨーグルトを製造・販売しています。店名は、商店街に馴染みやすいようにアルファベットではなくカタカナを用いた水門さんの名前が由来で、チーズやヨーグルトに限らず広く受け入れられるよう牛乳店としました。
 この街で出店したきっかけは、ナチュラルチーズと聞いて連想されるデパートや土産物店が連なる華やかな通りではなく、地域に根ざした商店街で国産チーズに親しんでもらいたいという思いからと、水門さんはおっしゃいます。

美幌製糖所

トリミング

商店街にチーズ工房を開くまで

 水門さんは畜産系の大学在学中、発酵に興味があったことや、見聞を広め、手に職を付けたいといった考えから、大学を休学し、英国の家族経営のチーズ工房で1年間働き、アルチザンタイプ(※2)のチーズ製造技術を習得しました。帰国後大学に復学し、卒業後は北海道内のチーズ工房で製造技術者としてチーズ作りに打ち込みました。
 10年が経った頃、商社に転職し、チーズ製造に必要な乳酸菌やカビ菌といった商材の輸入販売を通して、取引先のチーズ工房と共にチーズ製造に関する問題解決に取り組みました。この経験は、チーズの製造を理論的に学ぶ良い機会となり、現在の商品開発の糧となっています。また、商社での勤務の傍ら、英国で一緒に働いた仲間などとの交流をきっかけに、ワールド・チーズ・アワード(※3)の審査員にも抜擢され、世界のチーズと真剣に向き合うこともできました。これを機に、国産チーズの在り方についてより深く考えるようになりました。
(※2)職人が伝統製法で製造するタイプ
(※3)欧州で開催される世界的なチーズコンテスト

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スイミー牛乳店の奮闘

 お客様の信用を得るためにも、決まった時間に店を開けることや最後のお客様にまで選んで頂けるよう商品を揃えておくという、当たり前でも大切な商習慣を守っているとおっしゃいます。その秘訣は「健康で丈夫な体」に尽きると、水門さんは笑顔を見せます。3日に1度、片道1時間かけて自ら酪農家まで生乳を受け取りに行くのも、開業以来継続しています。
 製造・販売しているチーズは特有の香りやうま味を醸すウォッシュタイプ(※4)の熟成チーズです。
 水門さんは、季節で変化する生乳の成分に合わせて、冬場は中がトロっとしたソフトタイプ、夏場はカットできる程度の固さのセミハードタイプという2つのタイプのウォッシュチーズを製造しています。

水門さんの目指すもの

1線1-8

 経営の柱はヨーグルトの製造・販売で、チーズも日常で食卓にのぼるヨーグルトと同列に引き上げたいと考えています。
 また、スーパーにも買い物に行くけれど、肉は肉屋で、チーズはチーズ屋でと購入先の選択肢の幅を提供したいと水門さんはおっしゃいます。昨今の新型コロナウイルスの感染拡大で、外出の自粛を余儀なくされる時でも、食品の購入先の選択肢を提供することが、消費者の喜びにつながっていると改めて感じたそうです。
(※4)チーズを塩水等で洗いながらリネンス菌(熟成のためにチーズ表皮を覆う赤色細菌)を繁殖させ、特有の香りやうま味を醸す製法の熟成チーズ
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196