最終更新日:2025年12月5日
広報webマガジン「alic」2025年12月号
| しゅんぎくの旬は、冬。しゅんぎくが店頭に並ぶと、季節の変わり目を感じます。独特の香りがアクセントとなり、食を進めてくれるしゅんぎく、お鍋で食べることが多いかと思いますが、あくがないため、そのままサラダでも食べられます。ぜひ、今が旬のしゅんぎくを手にしていただければと思います。 |
概要
<しゅんぎくの花>
しゅんぎくはキク科の一・二年草で、地中海沿岸が原産の鑑賞用植物が東アジアで野菜として改良され、日本には室町時代に渡来したといわれています。西日本を中心に栽培されてきましたが、その後、全国に広がりました。
花は観賞用の菊に似ていますが、秋に咲く菊と異なり春に咲くので春菊と呼ばれ、江戸時代の事典「
和漢三才図会」にも「春に花が開き、菊に似るが故」と記されています。関西では「きくな」とも呼ばれます。 しゅんぎくを食用としているのはアジア諸国だけで、欧米では観賞用として栽培されています。
生産・流通
しゅんぎくは成長が早く、
播種からおよそ1 〜 2 カ月で収穫が始まります。食材として季節性が高く、冬季の出荷が多いですが、作型を組み合わせて周年で供給されています。 冷涼な気候を好み、栽培は、株ごと抜き取って収穫する抜き取り栽培と、主枝や側枝を25 cmくらいで順次摘み取って収穫する摘み取り栽培とがあります。
しゅんぎくの種類は、葉の大きさや切れ込み方によって、大葉種、中葉種、小葉種に大別されます。 大葉種は葉肉が厚く切れ込みが浅い丸葉に近い形で、中葉や小葉は切れ込みが深く薄い葉です。 近年は中葉種が主流ですが、関西から九州にかけては大葉種も出回ります。
<しゅんぎくの種類>
関東と関西で栽培される品種が違うことから栽培方法も違います。関東では、節間が長い株立ち型の中葉種を用いた摘み取り栽培が主流で、関西から九州にかけては、株元から側枝を多く出す株張り型の中葉種や大葉種を用いた抜き取り栽培が主流となっています。
作付面積、収穫量ともに減少傾向で推移していますが、2023年におけるしゅんぎくの作付面積は1,680ha、収穫量は2万4600トンとなっています。
県別の作付面積を見ると、大阪府が第1位、次いで、福岡県、茨城県、千葉県と続いてますが、福岡県、茨城県では作付面積が増加している一方で、千葉県は大きく減少しているなどの相違がみられます。
<資料:農林水産省「野菜生産出荷統計」>
収穫量を県別に見ると、第1位が大阪府、次いで、福岡県、千葉県、茨城県となっており、消費地近くにおける生産量が多い都市近郊栽培型の野菜といえます。同じ葉物野菜のこまつなやほうれんそうと比べても痛みやすいため、消費地近郊で栽培するメリットがある野菜です。
<資料:農林水産省「野菜生産出荷統計」>
市場入荷量を見ると、東京都中央卸売市場、大阪府中央卸売市場ともに鍋需要が高まる11月から入荷量が大きく増え、寒さが弱まる2月から3月にかけて大きく減少するしており、季節性が高いことが分かります。
栄養
しゅんぎくは、食欲をそそるさわやかで独特な香りとシャキシャキとした食感、食卓を彩る鮮やかな緑が好まれ、鍋料理の定番野菜として広く浸透しています。栄養価の高い緑黄色野菜の一つで、体内でビタミンA に変換されるβ- カロテンが、ほうれんそうやこまつなよりも多く含まれています。β-カロテンは、皮膚や粘膜、夜間の視力の維持を助け、風邪の予防にも効果が期待されます。
また、造血作用のある葉酸や高血圧を予防するカリウム、強い抗酸化作用により、体内の脂質を酸化から守り、細胞の健康維持を助けるビタミンE 、骨や歯を丈夫にするカルシウム、貧血を予防する鉄など、ビタミンやミネラルが豊富です。
しゅんぎくの特徴となっている独特の香りは、α- ピネン、ペリルアルデヒドなど、1 0 種類ほどの精油成分によるもので、胃腸の働きを促進して、胃もたれを解消したり食欲を増進させる作用があるほか、
痰を切ってせきを鎮める効果もあるといわれています。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 総務部 (担当:総務広報課)
Tel:03-3583-8196