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寄稿

【寄稿】デンプン素材の活躍〜自然由来の力を化粧品に〜

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最終更新日:2026年2月5日
広報webマガジン「alic」2026年2月号
 

   日澱化學株式会社
   研究開発室 副主任研究員 金沢真由美

 デンプンは私たちの身近な製品に幅広く使われています。例えば、食品分野ではとろみ付けや食感の改良、離水防止など、料理や加工食品の品質を整える素材として広く用いられています。さらに工業分野では紙力増強剤、事務用糊や紙管製造時に使用される、天然系の接着剤、繊維加工の糊付けなど、製造工程を支える重要な役割も担っています。あまり知られていませんが、デンプンは、化粧品の分野でも使用されています。今回はこの化粧品分野に注目し、実際にどのような用途でデンプンが使われているのか紹介したいと思います。日本では、全ての化粧品に配合成分を表示することが義務づけられていますので、ご興味のある方は化粧品を手に取って、成分表示中にデンプンが含まれているか探してみてください。

サツマイモ/ジャガイモデンプン

 ボディ用洗浄料に用いられるスクラブは、洗顔料よりも粒径の大きいものが好まれます。粒径が小さいと肌あたりはマイルドですが、スクラブ感が十分に得られません。一方、粒径が大きいと刺激が強くなり、肌への負担も大きくなります。そこで着目されたのが、糊化デンプンであるサツマイモ/ジャガイモデンプンです。サツマイモ/ジャガイモデンプンは、粒径は大きめですが、水分を適度に吸収することで表面が柔軟になります。そのため、肌への刺激が少なく、しっかりとしたスクラブ感を得ることができます。

<サツマイモ/ジャガイモデンプンの外観と吸水による粒子の変化>
<スクラブを含む洗浄料>

オクテニルコハク酸デンプンAl、オクテニルコハク酸デンプンCa

 デンプンにオクテニルコハク酸基を導入しアルミニウム塩化処理したオクテニルコハク酸デンプンAlは、高い撥水性をもつ非常にさらさらとした粉体です。一方、カルシウム塩化処理したオクテニルコハク酸デンプンCaは、しっとり滑らかな手触りがナイロンの感触に似ているため、マイクロプラスチック問題が懸念されるナイロンの代替が可能です。これらは油性原料の脂っぽさを抑え、感触を改良できるため、日焼け止めに使われるほか、汗によるべたつきや不快感を軽減する作用から、ボディパウダーやボディシート、ドライシャンプーなど、パウダーを含む製品に広く利用されています。
 
 
<デンプンが使用されている身近な製品>
<化粧品表示名称の例>

ヒドロキシプロピルデンプン

 ヒドロキシプロピル基を導入したデンプンは、水を加えて加熱し糊化することで、ねばりのある糊液になります。こうした特性を生かし、化粧品では増粘剤として利用されます。用途の一例として、洗顔パウダーが挙げられます。洗顔パウダーを手のひらや泡立てネットに取り、水を加えた時、とろみがないと流れ落ちやすく扱いにくいため、ヒドロキシプロピルデンプンをさらにアルファ化したデンプンが用いられます。アルファ化デンプンとは、あらかじめ糊化処理を施したデンプンで、水を加えると即座に増粘する特長があります。適度なとろみが生じることで洗顔パウダーが扱いやすくなり、泡質も向上し、高級感の演出にも寄与します。
 
<各デンプンを含有する洗顔パウダーに水を加え、 斜めに設置したガラス板に滴下した時の流動性の違い>
<各デンプンを含有する洗顔パウダーに水を加え、泡立てた時の泡質の違い>

おわりに

  近年、海洋に放出されるマイクロプラスチックが大きな問題となっています。化粧品では、洗浄料やメークアップ化粧品において、スクラブ剤や感触改良剤として PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、ナイロン、ポリエチレンなどが多く用いられてきました。しかし、これらは生分解性(注1)が極めて低く、食物連鎖による蓄積や環境負荷が懸念されています。また、天然鉱物であるタルクについても規制が強まりつつあります。一方、デンプンは自然界に広く存在する代表的な生分解性素材であり、環境配慮型材料として注目を集めています。世界各国でマイクロプラスチックなどに対する規制が厳しくなる中、安全で環境に優しい素材であるデンプンが代替品として活用される可能性は、ますます高まっていくことでしょう。

(注1)物質が微生物などの生物の作用により水と二酸化炭素に分解される性質。
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農畜産業振興機構 総務 (担当:総務広報課)
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