畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 海外情報 > 2022年 > 中国農業展望報告(2022−2031)を発表(飼料編)(中国)

中国農業展望報告(2022−2031)を発表(飼料編)(中国)

印刷ページ
 中国農業農村部は2022年4月20日、中国農業展望大会を開催し、今後10年間の農業を展望する「中国農業展望報告(2022−2031)」を発表した。同大会は14年から毎年開催されており、今回は21年の総括と31年までの農畜水産物の生産量や消費量の見通しが報告された。本稿ではこの中の飼料について紹介する。

1.2021年の動向

 2021年の飼料の総生産量および総消費量(注1)は、いずれも過去10年間で最高の2億9344万トン(前年比16.1%増)および2億9308万トン(同16.1%増)となった(表)。総消費量が増加した要因として、豚飼養頭数の増加(参考)などから豚飼料の消費量が4割以上増加したこと(1億2679万トン、同42.9%増)や、牛などの反すう家畜飼料の消費量が3年連続10%以上の成長率であったこと(1427万トン、同11.7%増)などが挙げられている。一方、肉用家きん飼料は、豚肉の代替需要などで肉用家きんの飼養羽数が増加したことを受けて19年以降2年連続で用途別消費量第1位となっていたが、21年は9008万トン(同1.0%減)とわずかに減少し、豚飼料の消費量を下回った。
 (注1)いずれも、プレミックス、濃厚飼料、配合飼料の計。
 飼料原料の輸入量については、エネルギー源となる飼料原料(トウモロコシや、トウモロコシの代替穀物である大麦、こうりゃんなど)の輸入量が2年連続で大幅に増加した(図1)。中でもトウモロコシは、国産トウモロコシ価格の高騰から輸入トウモロコシ需要が高まったことなどから、過去最大であった前年輸入量の2.5倍(2835万トン、同152.2%増)と激増した。
 一方、たんぱく源となる飼料原料(大豆や菜種(注2)、魚粉など)の輸入量は総じて減少した。特に大豆は、国際価格の高騰などから同3.8%減の9652万トンとなった(図2)。
なお、主な輸入先については、エネルギー源となる飼料原料では、米国、ウクライナ、フランス、カナダの4カ国で全体の89.7%を占め、たんぱく源となる飼料原料では、カナダ、ウクライナ、ペルーの3カ国で全体の77.8%を占めたことが報告されている。
 (注2)大豆や菜種は、国内で搾油し、その残渣(大豆かす、菜種かす)を飼料として利用する。
 

2.2031年までの動向予測

 2022年の飼料の総生産量および総消費量は、豚飼料の増加などから3億191万トン(同2.9増)および3億155万トン(同2.9%増)と、いずれも初めて3億トンの大台を超えると予測されている。
 展望期間の後半には、家畜の生産効率が上がるにつれて伸び率は鈍化するものの、豚飼料の需要増などから着実に増加し、31年の飼料の総生産量および総消費量は、3億6612万トン(年平均成長率2.2%増、基準期間比<19〜21年の平均値からの増減率>41.7%(注3))および3億6554万トン(年平均成長率2.2%増、基準期間比41.6%増)になると予測されている。
 (注3)総生産量の基準期間比は、農畜産業振興機構試算。
 
 なお、飼料原料の輸入量についての展望は示されていないが、飼料原料の輸入に当たっては、米国の対中貿易政策の動向、新型コロナウイルス感染症が物流や穀物輸出に及ぼす影響、ロシアのウクライナ侵攻がウクライナ産トウモロコシの生産・輸出に与える影響など、国際的な環境要因を注視する必要があるとしている。
表 飼料の需給動向および見通し
図1 エネルギー源の輸入動向
図2 たんぱく源の輸入動向

参考

【阿南 小有里 令和4年7月6日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9530