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〜砂糖・穀類摂取を中心に〜

健康な中高年男性の食事摂取状況と血液性状について
〜砂糖・穀類摂取を中心に〜

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最終更新日:2015年10月9日

健康な中高年男性の食事摂取状況と血液性状について
〜砂糖・穀類摂取を中心に〜

2015年10月

昭和女子大学生活科学部 清水 史子、尾 哲也、小川 睦美、石井 幸江
NPO法人「食と健康プロジェクト」 理事長 高田 明和

【要約】

 健康な中高年男性の食事摂取状況を、簡易型自記式食事歴質問票を用いて調査し、血液性状との関係を検討した。食事摂取状況は、平成25年国民健康・栄養調査の同年代男性と同程度であった。砂糖・甘味料類、穀類の摂取量は、空腹時血糖値およびLDL−コレステロールなどの血中脂質に影響を与えなかった。

はじめに

 近年、栄養学の分野では、「栄養ケア・マネジメント」という概念が普及し、栄養状態の把握、つまり栄養アセスメントを行うことで、低栄養や過栄養などの原因を明らかにし、栄養改善に向けて目標を設定し、ケアを実行するシステムが導入されている1)。そのアセスメントの際に、食事調査は重要な役割を果たしている2)

 では、食事調査とは何か。「何をどれだけ食べたか」を示すもので、食品・栄養素の摂取量を数値で表したものである。食事調査の歴史は、1945年12月に第1回国民栄養調査が実施されたのが始まりとされる。当時は食糧不足で、欠乏症が大きな健康問題であったことから、世帯単位で実施される3日間の秤量記録法による食事調査が機能していた3)

 しかし、生活習慣病が健康問題の主題となる現在においては、個人の栄養アセスメントが重要となる。飲食物を摂取した場合に起こる栄養素の消化・吸収、体内利用、貯蔵、さらには代謝の変化による必要量や排せつ量の変化を把握する必要があることから、食事内容だけでなく、身体計測、臨床検査などから、栄養状態を総合的に評価しなければならない。特に食事に関しては、摂取量の変動(個人内変動、個人間変動)を考慮に入れた調査方法が必要となる。

 栄養素などの摂取量の個人内変動(日差)は、個人間変動(個人と個人間の差)に比較すると概して大きい。そのため平均的な栄養素の摂取量は、1日の食事調査では把握できないが、ある程度の日数を調査すると、個人の習慣的な摂取量が把握できる。連続3日間あるいは非連続2日間、最低限調査する必要があるが、摂取した食品をすべて記録しなければならない。あるいは食べるものをすべて秤で計量するなど被検者にとっても負担が大きい。さらに、対象者の心理状態も影響し、摂取量の過少申告や過大申告の問題も生じる。アセスメントや調査の目的、対象者(集団か、個人か)、期間、コストなどを考慮し、できるだけ負担の少ない調査方法を選択する必要がある。調査方法としては、「食事記録法」「24時間思い出し法」「食物摂取頻度調査法」「食事歴法」「陰膳法(分析法)」などがある。食事摂取状況の調査方法のまとめを表1に示した。

 現在、高齢社会が進むにつれ、肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病およびこれに起因する認知症や寝たきりなどの要介護状態になる者の増加が深刻な社会問題となっている4)。また、食品・栄養素の摂取状況と体型、栄養状態、生活習慣病との関連に関する報告も多くあることから、生活習慣病の予防には食事摂取状況を把握し、個々人に合わせた評価が必要となる。

 そこで、本研究は、生活習慣病発症のリスクが高い中高年男性の日常的な食事摂取状況を、思い出しによる食事歴質問票を用いて調査した。本稿では食事摂取状況、特に砂糖類や穀類の摂取が空腹時の血糖値および血中脂質に影響を及ぼすかについて報告する。これまでに尾ら(「砂糖類・でん粉情報」2013年10月号)、小川ら(「砂糖類・でん粉情報」2014年11月号)が砂糖(スクロース)はブドウ糖(グルコース)に比べ、低GI(血糖指数:グリセミック・インデックス)で血糖値の下降が速やかであることを報告した続報である。
 

1. 方法

(1)被検者
 被検者は、糖尿病などの疾病を有さず、投薬などの治療を受けていない、健康な40歳代以上の男性25名とした。本研究は、昭和女子大学倫理委員会の承認を受けて行った。

(2)食事摂取状況調査
 被検者の食事摂取状況は、食事記録法、24時間蓄尿、血清、二重標識水などを用いた方法で、妥当性、再現性の研究が行われているDHQ(自記式食事歴法質問票:self-administered diet history questionnaire)の簡易版として開発され、食品群摂取量や栄養素摂取量に関する妥当性の研究が行われているBDHQ(簡易型自記式食事歴法質問票:brief-type self-administered diet history ques- tionnaire)を用いて調査した。BDHQの特徴は、食物摂取頻度法および食事歴法を用いた最近1カ月の食習慣についての質問票で、15分程度で回答が可能であることから、被検者の負担が軽減できることである。また、日本人の食事摂取基準(2015年版)では、食事摂取基準の活用で用いる食事アセスメント法の参考資料として触れられている質問票である。

(3)採血
 被験者は、前日の21時以降絶食とし、当日の朝食も欠食とした。午前9時半より前腕正中皮静脈より採血を行った。採血は医師および医師の監督下、看護師が行った。採取した血液は、血漿分離後まで−80℃にて保存した。
 空腹時血糖値は、穿刺器具と使い捨て針を用いて自己採血し、血糖測定器で測定した。

2. 結果および考察

(1)被検者
 被検者25名の内訳は、40歳代は2名、50歳代は11名、60歳代は7名、70歳以上5名で、平均年齢は60.8±9.9歳であった。
 被験者のBMIは、全被検者の平均で24.9±3.7kg/u(最大37.6kg/u、最少19.6kg/u)、40歳代で28.9±2.4kg/u、50歳代で24.7±4.3kg/u、60歳代で24.1±2.2kg/u、70歳以上で24.9±3.5kg/uであった。肥満と分類されるBMI25kg/u以上の者は、40歳代2名、50歳代3名、60歳代3名、70歳以上3名であった。BMI18.5kg/u未満の痩せはいなかった。本研究の対象者は、平成25年国民健康・栄養調査の40〜69歳男性の平均BMI23.8±3.2kg/uと比べるとやや大柄であった。

(2)食事摂取状況調査
 1日の平均的な栄養素摂取量を表2に示した。エネルギー摂取量は、40歳代で2038±101kcal、50歳代で2177±574kcal、60歳代で2384±40kcal、70歳以上で2472±400kcalと、年代が上がるにつれて摂取量が増加しているが、統計的に有意差はなかった。また、本研究の被験者は、既往歴、治療歴などもなく、薬の服用もしていない健康な中高年であることから、日本人の食事摂取基準(2015年版)の身体活動レベルの「低い」〜「ふつう」の推定エネルギー必要量2100〜2450kcal/日に相当し、平成25年国民健康・栄養調査の結果と同程度の摂取量であることから、エネルギー摂取量は不足もしくは過多の状態ではないことが考えられた。たんぱく質エネルギー比は14.9±2.4%、脂質エネルギー比は25.8±4.9%、飽和脂肪酸エネルギー比は6.6±1.8%、炭水化物エネルギー比は48.5±5.9%、アルコールエネルギー比は9.3±8.1%と、日本人の食事摂取基準(2015年版)のエネルギー産生栄養素バランスの目標量(たんぱく質エネルギー比:13〜20%、脂質エネルギー比:20〜30%、炭水化物エネルギー比(アルコールを含む):50〜65%)の範囲内であった。
 1日の平均的な食品群別摂取量を表3に示した。平成25年国民健康・栄養調査の同年代の結果と比較すると、穀類の摂取は少ない傾向であるが、いも類、魚介類、肉類など、その他の食品群では、ほぼ同程度の摂取量であった。
 
(3)食事摂取量と血液性状(血糖値および血中脂質)の相関
 空腹時の血糖値と血中脂質(中性脂肪(以下「TG」という)、HDL−コレステロール(以下「HDL-Cho」という)、LDL−コレステロール(以下「LDL-Cho」という)、EPA、DHA)の結果を表4に示した。さらに、栄養素摂取量(エネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物)、食品群別摂取量と血液性状の相関係数を表56に示した。エネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物の摂取と、血糖値、TG、HDL-Cho、LDL-Choとの相関は見られなかったが、脂質エネルギー比(R=−0.44,p<0.05)および飽和脂肪酸エネルギー比(R=−0.53,p<0.05)は血糖値と負の相関が見られた。食品群別摂取量も、穀類、いも類、砂糖・甘味料類の摂取量と血糖値、TG、HDL-Cho、LDL-Choとの相関は見られなかった。
 
 図1に砂糖・甘味料類の摂取状況と血液性状を示した。生活習慣病の発症は、炭水化物全体としての摂取よりも、食物繊維やGI値、糖類の種類(単糖・二糖類・多糖類)など質の影響を大きく受けると言われているが、本研究の結果では、炭水化物を多く含む穀類やいも類、さらには砂糖・甘味料類の摂取と血糖値や血中脂質(TG、HDL-Cho、LDL-Cho)との相関は見られなかった。これまでに砂糖摂取量と糖尿病の発症との間には関連が認められない5)という報告や、炭水化物摂取量や食事性GIと糖尿病の発症の間には有意な関連はない6)とした報告もあることからも、日常的な穀類や砂糖・甘味料類、果実類、菓子類などの摂取は血糖値や血中脂質に影響を及ぼさないことが示唆された。また、砂糖・甘味料類の摂取量とBMIおよびエネルギー摂取量との関連も、図2に示すように相関は見られず、肥満への影響は少ないことが示唆された。今後は、脂質エネルギー比と血糖値が負の相関を示したことや、いも類および魚介類の摂取が血中EPA、DHA値と相関していることからも、糖尿病や脂質異常症患者の食事調査を実施し健常者と比較をすることで、食事と疾病の関連性を明らかにする必要がある。
 

おわりに

 農林水産省の食料需給表によると、国民1人・1年当たりの砂糖の供給量は、昭和50年度で25.1kgであったものが、平成26年度で18.5kg、穀類も121.5kgから89.6kgと、この40年でかなり減少している。一方で糖尿病などの生活習慣病発症の原因として、砂糖などの糖質の摂取を指摘する情報がマスメディアなどでも紹介されることがある。偏った情報を修正するためにも、食事摂取状況と血液性状との関連については、今後も研究が必要と考える。また、食事摂取状況調査については、さまざまな調査方法の妥当性、再現性の研究が実施されているが、対象者の記憶に依存することや、実際に摂取している量と記載に大きな差がある可能性も否定できないことから、対象者に対する記入指導を行うなど、精度の向上を検討する必要がある。

謝辞
 本研究にご協力いただきました、被検者の皆さまに深く感謝申し上げます。

「Relationship between food intake and blood parameters in healthy middle-aged men」 Fumiko Shimizu Department of Food Sciences and Nutrition, Showa Women’s University, Tokyo, Japan

 We investigated food intake and relationship between food intake and blood parameters in healthy middle-aged men. A dietary survey was conducted for brief-type self-administered diet history questionnaire. Blood was taken in the morning after an overnight fast to analyze plasma levels of various parameters including lipid and blood glucose levels. It was found that sugar intake was not correlated with plasma lipid or blood glucose levels nor related to BMI and total calorie uptake. These results suggest that daily sugar intake does not adversely affect blood parameters, especially plasma glucose and lipids levels and not related to the cause of obesity in healthy middle-aged men.

参考文献
1)「これからの高齢者の栄養管理サービス−栄養ケアとマネージメント−」第一出版,1998
2)「最新栄養学第10版」建帛社,2014
3)「食事調査マニュアル改定2版」南山堂,2008
4)「地域における健康日本21実践の手引き」厚生省・体力づくり事業財団,2000
5)Janket, et al. , Diabetes Care,2003
6)Sluijis I, et al. : J Nutr 2013
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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