砂糖 砂糖分野の各種業務の情報、情報誌「砂糖類情報」の記事、統計資料など

ホーム > 砂糖 > 各国の糖業事情報告 > 新型コロナウイルス感染症関連の情報

新型コロナウイルス感染症関連の情報

印刷ページ

最終更新日:2022年2月10日

新型コロナウイルス感染症関連の情報

2022年2月

調査情報部    

 調査情報部では世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、各国政府の対応など需給に影響を与えるタイムリーな情報を、海外情報としてホームページの以下のURLに随時掲載しております。
(掲載URL:https://www.alic.go.jp/topics/index_abr_2021.html)  

 ここでは、1月13日までに掲載したものをまとめて紹介いたします。

【北米】

(令和4年1月7日付)
米政府、西海岸の余力港湾の活用と輸出入のバランス回復を要請(米国)

 米国運輸省(USDOT)および農務省(USDA)は2021年12月16日、米国西海岸の港を利用する主要な海上輸送企業に対して、両省長官名の書簡を発出し、新型コロナウイルス感染症(COVID?19)の拡大によって生じたサプライチェーンの混乱を解消するよう要請した。

USDOTおよびUSDAによる要請内容

(1)余力のある港湾の活用

 COVID-19によって、世界中の物流に前例のない混乱が生じたことを踏まえ、政府と産業界は、あらゆる手段を講じて既存のインフラを最大限に活用すると同時に、将来も見据えてサプライチェーンの回復力を高める必要がある。そして、既存のインフラを最大限に活用するためには、混雑しているロサンゼルス港やロングビーチ港ではなく、余力のあるオークランド港、ポートランド港などの他の港湾を活用すべきである。特に、外国籍のアジア向け輸送船によるオークランド港の抜港が相次いだことで、輸出業者は米国産農畜産物を混雑しているロサンゼルス港やロングビーチ港までトラック輸送して輸出せざるを得なかった。しかし、オークランド港への寄港を再開することで、ロサンゼルス港やロングビーチ港の混雑が緩和され、長距離トラック輸送の負担も軽減され、米国産農畜産物の迅速な輸出も可能になるだろう。

(2)輸出入の相互バランスの回復

 貿易本来の輸出入の相互バランスの回復も重要であるが、多数のコンテナが空の状態でアジア地域に返送されている。これによるコンテナ不足が米国産農畜産物の輸出を妨げ、港湾混雑の原因にもなっている。さらに輸出業者には、コンテナ利用に係る手数料の発生など不当な対応が求められてきた。このような不均衡は持続可能ではなく、利用可能な多数の空コンテナがあるにも関わらず、米国輸出業者のコンテナ利用の拒否などが行われることは受け入れ難いものである。これらが早急に解決されなければ、米国連邦海事委員会(FMC)によるさらなる調査と措置が必要になるだろう。 

 特に、(2)については、FMCの権限強化などを盛り込んだ米改正海運法案が2021年12月8日に米国下院を通過したこと(注)を背景として、海上輸送企業に通達したものと推察される。

(注)米改正海運法案については、2021年12月20日付海外情報「海上輸送の管理等強化を目的とした米改正海運法案が下院を通過(米国)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003126.html)を参照されたい。

外国籍船舶によるオークランド港の抜港と寄港再開の流れ  
 2021年に入り、複数の外国籍船舶がロサンゼルス港およびロングビーチ港の港湾混雑を回避するため、オークランド港での船積みを決定した。しかし、労働力不足などの問題によって同港でも混雑が生じているとし、2021年6月以降、ドイツを拠点とするHapag–Lloyd社、フランスを拠点とするCMA CGM社、イスラエルを拠点とするZim社などが相次いで抜港を決定した。  

 一方で、オークランド港は同年10月、海上輸送企業に対して、同年8月以降、船舶の滞留は発生しておらず、港湾のコンテナ取扱量に余裕があるとして、米国西海岸のサプライチェーン停滞の緩和に向けて、同港に寄港するよう呼びかけた。同港の同年12月15日の発表によると、海上輸送企業が11月に入り、徐々に同港への寄港を再開したことにより、11月のコンテナ輸入量は前年同月比で約6.5%増加、2021年1月から11月までのコンテナ輸入量は前年同期比で約8.0%増加した(図)。
(国際調査グループ)

 図

【アジア】

(令和4年1月13日付)
WTO紛争解決委、インドの砂糖政策を協定違反と裁定(インド)

 世界貿易機関(WTO)紛争処理委員会(パネル)は2021年12月14日、ブラジル・豪州・グアテマラの3カ国から提訴されていた、インド政府の砂糖政策に関する報告書を公表した。パネルは3カ国の要請を受けて19年8月に設置されたが、新型コロナウイルス感染症(COVID–19)の世界的な感染拡大を受けて審議が中断し、関係各国が参加した1回目の会合は、当初の予定から7カ月延期された20年12月に開催された。

 同報告書は、インド政府や同国州政府が定めるサトウキビの最低買い取り価格や砂糖の輸出補助金(注1)などは、WTOの「農業に関する協定」や「補助金及び相殺措置に関する協定」に反していると結論付け、インド政府に対し、それらの国内産業への支援政策をWTO協定に適合させ、輸出補助金を速やかに撤廃するよう勧告している。

 今回の公表に対し、ブラジルさとうきび産業協会(UNICA)は、インドの砂糖政策が引き起こしたゆがみは報告書で明示されたとしつつも、インドとブラジルはサトウキビ由来のエタノールの利用といった課題について共に取り組んでおり、今回の貿易問題についても両国が共同の解決策を見出すことができると信じていると述べている。

 豪州砂糖製造業者協議会(ASMC)と同国クイーンズランド州のサトウキビ生産者団体CANEGROWERSは、パネルの判断に歓迎の意を示すとともに、WTO協定や国際的な貿易ルールを遵守するために誠実な交渉を開始し、共に協力するようインド政府や同国の砂糖産業に呼びかけるとしている。

 グアテマラ砂糖協会(ASAZGUA)は「不平等な条件のもと、国際市場で競争することは非常に複雑であるため、WTOの裁定を肯定的にとらえている」と回答したという。

 一方、インド商工省は報告書が公表された同日にプレスリリースを発出し、WTOの結論は間違っており、同国の政策に影響を与えるものではないとの見解を示した(注2)。また、インド政府は自国の農家の利益を守るため、WTOに不服申し立てを行うためのあらゆる手続きを開始したとしている。

 22年1月2日付の現地報道は、政府関係者の話として、インド政府はWTOに不服申し立てを行ったと報じており、今後は裁判の二審に当たるWTOの上級委員会で4カ国が争うことになるとみられる。しかし、上級委員会は19年12月以降、米国が委員の選任手続きを阻んでいるため定足数が満たされず、事実上、その機能は停止している状況にある。また、現在20を超える紛争が上級委員会の段階で滞留しているため、今後、上級委員会が直ちに再開されたとしても、本件申立が審議されるまでに1年以上かかるだろうと報じている。

(注1)インド政府は、製糖工場に出荷されるサトウキビを対象に、買い取り価格の下限である公正収益価格(FRP:Fair and Remunerative Price)を毎年度定めているほか、ウッタル・プラデーシュ州など一部の州では、州独自の最低買い取り価格である州勧告価格(SAP:State Advised Price)を設定している。サトウキビの最低買い取り価格や砂糖の輸出補助金の概要については、『砂糖類・でん粉情報』2020年5月号「インドにおける砂糖の生産動向および余剰在庫解消への取り組み」(https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_002197.html)を参照されたい。
(注2)なお現時点において、インド政府は、2021/22年度(10月〜翌9月)の輸出補助金政策を実施していない。
(国際調査グループ 塩原 百合子)
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272