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【第一線から】シラス台地でのでん粉原料用かんしょ栽培 〜鹿児島県肝属の田島晴海さん〜

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最終更新日:2014年1月8日

◆肝属地域の概要

地図
 鹿児島県肝属(きもつき)地域は、大隅半島のほぼ中央に位置し畜産やかんしょ栽培などが盛んです。
 南九州地方(鹿児島県及び宮崎県)は、台風の常襲地帯であり、シラス台地とよばれる保水性が低い火山灰性の土壌で農作物を栽培するには不向きとされていますが、かんしょは、台風などの自然災害にも強く比較的安定した生産が可能であるため、この地方の基幹作物として栽培されています。
 でん粉原料用かんしょは、地元のでん粉工場で加工されることにより、工場や原料の輸送に雇用が生まれ、地域の経済に重要な役割を担っています。

◆でん粉原料用かんしょ栽培に取り組む田島さん

 この地域で農業を営んでいる田島晴海(たじまはるみ)さん(48歳)は、でん粉原料用かんしょを作って 13 年目の専業農家で、JA鹿児島きもつき澱粉用甘藷生産者部会の会長を務める地域のリーダー的存在でもあります。
 以前は、鹿児島県内の他の地域で自動車の整備士として働いていましたが、ふるさとに帰りたいという気持ちがだんだんと強くなり、 35 歳の時に実家の農業を引き継ぎ、現在はでん粉原料用かんしょを120アール作付けしています。このほか、だいこん、ばれいしょ、キャベツなども作っています。

◆栽培技術向上を目指す田島さんの挑戦

6月 苗を南向きに植え付ける
6月 苗を南向きに植え付ける
 でん粉原料用かんしょ栽培には、苗を育てる「育苗」、土を柔らかくしてならす「耕起・整地」、肥料を与える「施肥」、苗を植え付ける「植え付け」、かんしょを畑から取り出す「収穫」、雑草を駆除する「除草」、害虫を駆除する「防除」、畑に水をまく「かん水」などの多くの管理作業があります。
 「最も大変な作業は、苗の植え付け。一人で植えられるのは、1日当たり 10 〜 15 アール程度で、見た目よりはるかに重労働だよ」と田島さんは語ります。
9月 収穫前のほ場をバックに田島さん
9月 収穫前のほ場をバックに田島さん
 また、「私は、Uターンして農業をやり始めたので、農業に対しての先入観がない。部会の仲間から聞いた良いことや、自分で良いと思ったことは、積極的に経営に取り入れることにしている」と語ります。
 最近、特に力を入れている取組みは、通常、 10 アール当たり約2千5百〜3千本植え付けするところを、1千5百本に減らして植え付けることです。
9月 青々と茂ったかんしょ畑
9月 青々と茂ったかんしょ畑
 太陽光を浴びやすいようにと、独自のアイデアで苗を南向きに挿すため、機械に頼らず、あえて手植えにこだわっています。 また、できる限り畑を見回り、適期に管理作業を行い1本、1本の苗を大切にかんしょを大きく育てることにより、ほかの農家と同程度の単収を得るとともに、生産コストの低減につなげています。
 「まだまだ、私だけのチャレンジですが、将来、これらの取り組みが仲間に提言できる栽培技術になればいいと思う」としみじみ語ります。

◆単収の向上に向けて

10月 収穫作業
10月 収穫作業
 「南九州地域において、かんしょはなくてはならない基幹作物。次世代を担う若者たちとともに農業に携わりながら栽培技術を向上させ、地域の農業を盛りたてていきたい」という思いから、生産者部会の研修会などを積極的に開催し、単収の増加につながる技術指導や担い手の育成に力を入れています。
大きく育ったかんしょ
大きく育ったかんしょ
「農業は大きなジグソーパズル。栽培技術、知識というピースを探して、毎年、少しずつそのピースをパズルに埋めていく作業をしているようだ。完成するには、長い年月がかかる。将来の目標は、植え付け本数を減らす方法で生産コストの低減を図り、単収5トンを取るのが目標だ」と語る田島さんの目は輝いています。

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