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【レポート】オーストラリアの最近の肉牛生産・輸出事情

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最終更新日:2014年1月8日

調査情報部 伊藤  久美

はじめに

 オーストラリアは日本にとって、最大の牛肉輸入相手先です。アメリカでの牛海綿状脳症(BSE)発生により、アメリカ産の輸入が停止された2004年には、オーストラリア産が牛肉の輸入量に占める割合は9割を超え、我が国の輸入牛肉需要を支えました。アメリカ産の輸入が再開されてからは、オーストラリア産の割合は減少傾向にありますが、2012年度は 61 %と、なおも最大の牛肉輸入相手先です。
牛

牛のと畜数が増加

 オーストラリアでは、2012年後半から、牛のと畜頭数が増加傾向にあります。2013年1〜 10 月のと畜頭数は、前年同期を 14 .1%上回る700万821頭となっています。これは、肉牛生産のさかんなクイーンズランド州などの干ばつが影響しています。
資料:オーストラリア統計局 注:2013年はMLAによる見通し
資料:オーストラリア統計局 注:2013年はMLAによる見通し

干ばつにより放牧が困難に

 オーストラリアの肉牛は、放牧による生産が主体です。と畜される肉牛の7割が、牧草で育てられます。フィードロットと呼ばれる肥育場で、穀物などを主体とした飼料を与えて生産される肉牛についても、フィードロットに導入されるまでは、放牧で飼養されます。
 このため、干ばつにより放牧地の牧草が減少すると、生産者は牛の放牧が困難になることから、食肉用としての出荷が増加します。オーストラリアでは、干ばつが肉牛生産に大きな影響を及ぼしています。

生産量の増加分は海外へ

 と畜頭数の増加による牛肉生産量の増加分は、海外市場に仕向けられ、2013年1〜 11 月の牛肉輸出量は、前年同期比 14 .3%増の100万3134トンとなりました。これは、過去最高となった2012年( 96 万3779トン)を超える水準となっています。
 こうした中、最大の輸出先である日本向けは、日本国内市場でのアメリカ産との競合により、同年1〜 11 月輸出量で 26 万5911トン(前年同期比6.8%減)にとどまっています。

中国への輸出拡大

 オーストラリアにとって、2013年に最も輸出が拡大した市場は中国です。中国は2011年まで、オーストラリアの輸出量全体の1%にも満たない市場でした。それが、2013年1〜 11 月では 14 万729トン(同5・6倍)と、日本、アメリカに次ぐ3位の輸出市場となりました。中国向けの増加は、経済成長や所得向上による食肉消費の増加、インフラ整備に伴う食肉流通経路の拡大、食の安全への関心の高まりによる輸入品への需要増などが背景となっています。また、輸出される部位も多様化しています。すね肉やもも肉のほか、日本では牛丼チェーンで使用されるばら肉なども、中国に多く向けられるようになりました。
 オーストラリアは、所得の向上などによって食肉需要が高まる東南アジアや中東へも、近年、輸出を伸ばしています。こうした新たな市場からの引き合いは、オーストラリア産の牛肉輸出価格の上昇にもつながっているとみられています。
グラフ2

日本への輸出量にも影響

 オーストラリア食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、2014年は、干ばつが緩和されつつあることで肉牛出荷が減少することから、牛と畜頭数および牛肉生産量の減少が見込まれています。このため、2013年を通して好調だった牛肉輸出も、2014年にはやや減速するものとみられます。牛肉輸出量の減少が見込まれる中、新たな市場の動向は、量や価格面で、日本向けの牛肉輸出に影響することも考えられます。
グラフ3

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