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【alicセミナー】CAP改革後の中東欧諸国のばれいしょでん粉産業と最近の動向

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最終更新日:2017年3月1日

 “ばれいしょでん粉”というとピンと来る方は少ないかもしれませんが、日本では“片栗粉”として店頭に並べられています。このばれいしょでん粉、世界の生産量のおよそ2/3はEUで生産されています。そこで、alic調査情報部では、EUのばれいしょでん粉の生産動向について調査を実施しました。1月24日(火)のalicセミナーでは、この調査のうち、特に今後注目が集まると予想されるポーランド、オーストリア、チェコの3カ国のばれいしょでん粉産業の動向について、同部根本 悠が報告しましたので、その概要を紹介します。

CAPとでん粉原料用ばれいしょ生産

 EU加盟国のうち、原料となるばれいしょを生産し、でん粉を製造しているのは10カ国です。中でもドイツ、オランダの両国でEUの作付け面積の半分を超え、次いでポーランド、デンマーク、フランスと続きます。
 EUでは、CAPといわれる加盟国で共通に講じられる農業政策があり、1990年代以降、段階的に規制緩和が図られてきましたが、でん粉原料用ばれいしょについては、小麦などの穀物に比べ貯蔵性が低いなどの理由により、比較的軽微な変更にとどまっていました。しかし、2012年以降、他の農産物政策とほぼ同様の内容が講じられるようになり、でん粉原料用ばれいしょにとって転換となる年となりました。このような中、今回調査をしたポーランド、オーストリア、チェコは、各国の それぞれの理由により、深刻な影響は見られず、前向きな見方も出ていました。
作付面積

3カ国の生産動向

〈ポーランド〉
  ポーランドでは、2012年のCAP改革後、でん粉製造企業が政府に生産者支援を要求したことにより、政府から生産者へ補助が開始されました。その分製造事業者側の負担が軽くなったことから、生産者・でん粉製造企業両者とも生産拡大に前向きとなっており、大手でん粉製造企業を中心に輸出拡大にも視野に入れている状況です。
〈オーストリア〉
 オーストリアでは、ばれいしょでん粉の製造企業は1社しかなく、企業の経営動向が生産に大きく影響します。現在、この企業はでん粉だけでなく、製糖、果物加工なども手がけ、中東欧諸国を中心に世界展開していることもあり、好調な経営を維持しています。そのため、CAP改革後でん粉原料用ばれいしょの生産者との価格交渉では、取引価格を引き上げました。今後も企業の経営状況に依存する構造は変わらないとみられていますが、生産者は悲観的な見通しを持ってはいません。
〈チェコ〉
 チェコでは、でん粉原料用ばれいしょの生産は、長らく減少傾向で推移していたところ2012年以降、政府や企業が支援したことにより、増加に転じています。ばれいしょでん粉を製造する企業は、オーストリアの企業を含めて3社あり、各社が得意とする製品を持つことで、効率化を図っています。また、各社は生産者獲得のため競合関係にあります。生産者側としては、生食用ばれいしょはドイツやオランダから輸入される数量も多く、価格が安定しないことから、収益の見込みが立ちやすいでん粉原料用の生産を希望する者が多い状況です。このため、今後も安定した生産が見込めると予測されます。
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