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【alicセミナー】「急拡大する中国牛肉消費の実態」「カナダの牛肉輸出見通し〜生産の現状を中心に〜」

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最終更新日:2019年5月8日

 alicの調査情報部では、最新の農畜産物の需給状況などを把握するため、海外調査を実施しています。平成31年3月18日(月)に開催したalicセミナーにおいて、都市部を中心に消費が急拡大し、牛肉の輸入量が急増している中国の消費実態を調査情報部三原亙(当時)から、TPP11協定の加盟国であるカナダの牛肉の生産現状についてを渡辺陽介から、それぞれ調査結果を報告しましたので、その概要を紹介します。

今後も拡大が予想される中国の牛肉消費と輸入

 過去5年間で中国の一人当たりの牛肉消費量は約2割増加しました。その背景には、もともと豚肉が食文化の主流であり、牛肉は堅いものとの認識から小さく切ったり煮込んだりする形での家庭消費が主だった中国に、近年、都市部の若年層を中心として、焼肉やステーキなどの外食での新たな消費形態が浸透してきたことがあります。一方で、国内の環境規制強化によるコスト増や飼養技術が発展途上にあることなどにより、国内生産は過去10年にわたり停滞しています。
 この需給ギャップを埋めるため、中国での牛肉輸入が拡大したとみられます。また、輸入形態としては、特定の部位や品質にこだわらず、すべての部位、加えて乳廃用牛(※)も輸入されていることから、業者がより安価な輸入品を好む傾向があることも輸入拡大要因のひとつと考えられます。
 中国は既に日本を上回る量を輸入していますが、その量は国内消費量の1割強に過ぎません。さらに長期的には農村地域の需要も拡大することが考えられ、中国政府は今後10年で牛肉輸入量は約40万t増加すると予想している中で、急速に輸入先国も増えています。牛肉需要に大きな影響を与える中国の動向について、今後も注視していく必要があります。
(※)乳量が下がったり繁殖ができなくなるなどの乳牛としての役割を終えた牛。


 

セミ1

セミ2

カナダの牛肉生産の現状

 カナダの牛の飼養頭数は、2005年をピークに減少傾向で、近年はほぼ横ばいです。これは、隣国アメリカで牛の頭数が減少したことを背景に、アメリカへ生体のまま輸出される牛が増えたことが要因に挙げられます。
 その一方で、カナダの牛肉生産量は増加しています。牛の飼養頭数は減っているのにカナダ国内での牛肉生産は増えているのです。これは、国内外の牛肉需要の増加や食肉加工業者の収益性の向上を受けて、アメリカへ輸出する生体牛を減らし、アメリカから生体牛を輸入することで、カナダ産牛肉の生産を増やしているということが背景にあります。さらに、カナダでは春の雪嵐や夏場の乾燥などが続いたことで、飼料の在庫薄や価格上昇が起きており、アメリカからトウモロコシを輸入する生産者もみられます。
 以上のように、カナダの牛肉生産量増加は、アメリカの安定した牛の生産基盤とトウモロコシ生産に支えられている側面があります。再びアメリカからの生体牛の需要が高まった場合には、カナダの牛肉生産に大きな影響を与えかねないなどアメリカの需給動向によって左右されるのが現状です。
 こうした中、業界全体で輸出プロモーションや研究・開発に取り組んでいます。

図2 カナダのと畜頭数と牛肉生産量
図2 カナダのと畜頭数と牛肉生産量

セミ3

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