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【レポート】中国のあんをめぐる動向

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最終更新日:2020年3月4日

 原料は、小豆などの豆類、砂糖、水と、いたってシンプルながら、炊き方や砂糖の分量の違いによってさまざまな食感・味わいが楽しめる「あん」(いわゆる「あんこ」)。あんは、伝統的な和菓子だけでなく、乳製品やパンなど洋風素材と組み合わせた商品にも用いられ、年代性別を問わず幅広い人々に愛される日本の定番スイーツ素材の一つです。
 日本の菓子文化を支え、「和」の象徴と言っても過言ではないあんですが、実は海外から輸入されたものも少なくありません。輸入量は年間6万t程度で、推定では国内で出回るあんの約5分の1が海外産とみられます。そのほとんどが中国産です。
今回は、一般にあまり知られていない中国におけるあん製造の実態などを紹介します。
 

あん製造の背景

レポ1-2

 日本などへ恒常的にあんを輸出している工場は、北京市のほか、大連港や天津港などの国際貿易港近くの都市に立地しており、今回の調査で確認できただけでも10以上の工場があります(図1)。
 日本企業の子会社として設立された工場も一部あるほか、ほとんどの工場が日本企業からの技術供与を受けています。このように、中国における日本向けのあん製造が進んだ理由は、▽バブル崩壊以降、低価格の商品を求める日本の消費者が増えたこと▽広大な農地を背景に、日本と比べ安定した原料調達が望めること▽生産能力や技術水準が向上し、日本国内での製造に見劣りしない品質の製品が生産可能になったこと‐などが指摘されています。
 

徹底した衛生管理

 いずれの工場も、食品衛生管理の国際基準であるHACCP(ハサップ)を導入するとともに、日本企業の指導や助言の下、独自の安全基準を構築し、日本と同等以上の徹底した衛生管理を行っています(図2)。一方で、消費者の信頼確保に向けた対応・対策に要するコストが年々増加しているため、価格優位性は一時期に比べて失われつつあるとみられます。

熱帯種

中国で作られるあんの特徴

 日中のあんの違いをあえて挙げるとすれば、色味と甘さです。
 中国産の小豆の皮は、日本産のものと比べ色味が濃いため、あんに仕上げたとき、褐色が濃い見た目となります(写真1)。
 また、日本の消費者の低甘味志向を反映し、以前と比べ甘みを抑えた商品の開発が進んでいますが、製品中に50〜60%の砂糖を含むあんが主流で、日本で作られる、40%台の低糖度のあんの製造はまだ多くはありません。工場を出荷してから日本に到着するまで平均15日程度の日数を要することや、日本での需要が菓子パンや土産物の菓子などであるため一定期間常温下でも日持ちすることが求められることから、現在の砂糖含有量は食品の保存性を高める上で必要な分量であると言えます。

レポ1-1

中国や韓国でも広がるあん文化

 あんは日本ならではのものというイメージがありますが、中国や韓国でも、あんを用いた食品は数多く存在します。
中国であんを用いた食品と言えば月餅が有名ですが、特に都市部においては近年、パン食の普及とともに日本風のあんパンや、甘く煮た小豆を練り込んだ菓子パンなどもよく見かけるようなりました(写真2)。
 韓国では、小豆は古来より厄よけや魔よけのシンボルとして縁起の良い食べ物とされ、日本のものに近いあんが食べられています。また、小豆は低脂質・高タンパクで食物繊維も豊富なことから、最近では健康的な食べ物として注目を集めています(写真3)。
 

今後の見通し

 わが国では、高齢化と人口減少によりあん消費の減少が見込まれることに加え、原料原産地表示制度の本格施行を控え、調達を日本国内で製造されたあんなどへの切り替えを検討する動きが進む中で、日本向けの輸出は長期的に先細る公算が大きい状況にあります。中国の業者はこのような将来を見据えて中国国内や日本以外の国に販路を求める動きを進める可能性があります。
 

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