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【alicセミナー】中国及びタイにおける牛乳・乳製品の需給動向

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最終更新日:2020年3月4日

 alicの調査情報部では、最新の農畜産物の需給状況などを把握するため、海外調査を実施しています。令和元年11月6日(水)に開催したalicセミナーにおいて、中国における牛乳・乳製品の需給動向を調査情報部寺西梨衣(てらにしりい)から、タイにおける牛乳・乳製品の需給動向を同部の小林智也(こばやしともや)から報告しましたので、その概要を紹介します。
 

【中国】拡大する消費に国内供給が追い付かず今後も輸入が続く見込み

セミ1

 中国では経済発展による生活水準の向上により乳製品の消費が急速に増加しています。都市部の消費量は近年は横ばいで推移しているものの、農村部では2000年以降増加傾向で推移しています(図1)。
 
 中国の乳製品は常温でも販売できる商品が多く、スーパーなどでは店内の目立つ位置に牛乳やヨーグルトが陳列されており、店によっては肉や野菜より広い売り場面積を持つところもあります。中国でヨーグルトは「飲む」タイプが一般的で、袋入りやパックタイプが多く見られます(写真1)。2016年に「一人っ子政策」が廃止されたため、粉ミルクの消費も急増していますが、特に輸入品の人気が高いことが特徴です。また、チーズやバターは外食など業務用で消費されることが多く、そのほとんどが輸入品です(写真2、3)。
 中国の生乳(搾ったままで加熱・殺菌などの処理をしていない牛などの乳)生産は、酪農先進国から飼養技術や乳用牛を導入することで急速に発展しています。大規模化や機械化によって生産性も向上し、生産量は増加する見込みですが、急拡大する消費を満たすには十分でないと考えられています。また、チーズやバターの生産については、国内の生産技術や設備が乏しいため輸入品に依存しており、特に2008年に自由貿易協定を締結したニュージーランドからの輸入が多くなっています。
 中国の牛乳・乳製品の消費量は農村部を中心に今後も伸びる余地が大きいとされる一方で、中国国内での生産は微増するものの需要を満たすには十分でないと見られているため、当面は輸入増が続くと見られています。
 

図2 カナダのと畜頭数と牛肉生産量

ソウル市内の量販店でのパプリカ

【タイ】タイ政府は酪農業の競争力強化のための振興策を推進

 タイのGDP(国内総生産)の成長率は近年3〜4%で推移し、一人当たりの名目GDPも東南アジア諸国で第3位になるなど著しい経済発展が続いていますが、これを背景として食の多様化、欧米化が進展し、牛乳・乳製品の需要が拡大しています(図2)。乳用牛の飼養頭数も1頭当たりの乳量も増加しているため、生乳生産量は増加傾向で推移していますが、国内需要を満たすには十分ではなく、不足分は輸入で補っています。主な輸入先国はFTA(自由貿易協定)を締結している豪州、ニュージーランドですが、将来的にFTAの下で輸入品の関税が撤廃されることを視野に入れて、タイ政府は国内の酪農業の競争力強化に取り組んでいます。
 

写真1:フランスの日常の味がそのまま日本へ届けられるのも(ピカール)冷凍食品の魅力。

 具体的には、(1)酪農家と酪農組織の強化、(2)国際水準を満たす牛乳生産と乳製品産業の発展、(3)牛乳の摂取の促進と、競争力のある乳製品の開発、(4)データベースシステムの開発と利用、(5)農家のための酪農知識の研究開発、の5つの戦略を掲げ、酪農の合理化を支援するためのさまざまな取組を行っています。
 これらの振興策を講じていく中で、今後、政府の方針に対応しきれない小規模農家などの廃業による大規模農家への集約化が予想され、生産増につながる可能性も考えられます。
 また、タイ政府は国内消費の増加を図る一方でアジア諸国を中心とした輸出による需要拡大を図っています。
 牛乳・乳製品の需要が伸びる中、競争力強化の取組により同国の生産体制がどのように変化し、消費形態もどう推移していくのか注視していく必要があります。
 

セミナー図

このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196