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【トップインタビュー】農業における女性の活躍推進〜地域を牽引するリーダーとなる酪農経営を目指して〜

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最終更新日:2021年3月3日

株式会社マドリン 代表 砂子田 円佳(すなこだ まどか) 氏

 令和2年3月に閣議決定された「食料・農業・農村基本計画」においては、持続可能な農業構造の実現に向け、地域をリードする女性農業者を育成し、全国の女性グループ間ネットワークを構築すること等が提言されました。今後も女性の農業者の活躍に期待が高まる中、北海道広尾町で酪農経営を行いながら畜産・酪農に携わる女性の交流会を運営し、農林水産省の食料・農業・農村政策審議会委員でもある株式会社マドリン 代表 砂子田 円佳氏にお話を伺いました。
まどりん

Q.どのような経緯で酪農経営を始められたのでしょうか。

地図
 両親が酪農を経営しているため小さな頃から手伝っていました。ただ、酪農は大変な仕事だなと思っていたので、将来酪農家になろうとは考えていませんでした。しかし、酪農という仕事に両親が誇りを持っているということについて常々感じていた中で、少し遠い高校へ進学をして親元を離れるという経験を経た上で、酪農の道に進もうと思うようになりました。 
 その後、両親と同じ大学で酪農を学び、約2年半のカナダでの酪農研修を経て、帰国後は両親の牧場で働いていたのですが、離農した酪農家の牛舎を借りるという話をきっかけに、別会社を作って牧場を始めてはどうかと父から提案があり、独立することとなりました。平成19年に株式会社マドリンの経営を開始し、現在では乳牛約110頭を飼養するに至っています。平成27年に結婚してからは、夫婦2人で相談しながら作業を分担しており、主に、私が繁殖、子牛の管理や経理を、主人が飼料や畑の管理を担当しながら、2人で酪農経営を行っています。 

Q.酪農経営を行う中で意識していることや、これまでに苦労されたことを教えてください。

えがみ
 先進的な酪農ロボットなどはありませんが、今ある環境の中で牛たちがベストな状態になれるように常に意識しています。例えば、牛の様子のちょっとした違いにもいち早く気づき、必要な処置や治療を早期に行い、獣医さんに長期間お世話にならないよう毎日気を配っています。こうした牛との接し方は、家族と同じように牛のケアをしていたカナダの酪農研修先の女性経営者の姿に影響を受けたと思います。カナダで学んだことが私の酪農経営の基礎になっており、少し大げさな表現かもしれませんが、私自身も人と同じように牛とも接することを心がけています。 
 ただ、独立直後は牛の変化に気づけず、子牛を無事に産ませてあげられないことなどもあり苦労しました。私自身の知識や経験不足を補うために、家族や牧場に出入りする獣医さん、業者の方や近隣の酪農家など周囲の人たちに教えてもらいながら牛や機械のことについて学びました。女性1人で経営を開始したこともあり、周囲からは心配の声も届き、落ち込むこともありましたが、そんな時、酪農家に嫁いだ人など地域にいる周囲の女性たちの存在に助けられました。

Q.畜産・酪農に携わる女性同士の交流会であるSAKURA会発足のきっかけは。

子豚
 周囲の女性たちに話を聞いてもらうだけで明日からまた頑張ろうと思えることも多かったので、自分自身の経験がSAKURA会の活動に繋がったとは思いますが、独立して数年後、畜産・酪農に携わる女性数人で開催していた食事会が活動のきっかけとなったと思います。その頃、飼料会社や農協などで働く女性が増えて5〜6人で食事に行く機会が頻繁にあったのですが、農業に関わる女性たちに広く声をかけてみたところ道東地域の女性30人程度が集まったので、1泊で温泉に行くことになりました。これがSAKURA会の始まりで、平成24年3月のことでした。 
 当初は皆で集まってそれぞれ話をするのが中心でしたが、一晩では話を聞き足りないという声も多かったので、約3年前から女性が集まり話をするだけでなく、参加者の中から「この人の話を聞きたい」という意見の多かった人をステージにあげて、畜産・酪農に関わる多方面の人から経験やノウハウを聞く講演会やセミナーも実施しています。年1回開催していますが、回を重ねるごとに周囲の反響も増え、情報が口コミで広まり、近年では60人近くが集まる会になっています。 
 SAKURA会は誰でも参加しやすく、気軽に話ができる場でありたいと思い、会員制にはしていません。私自身、SAKURA会で様々な話を聞くことで元気をもらっていますが、年齢も様々な生産者、農協の方など異なる立場の人と話をしながら、それぞれの仕事への理解が深まることで参加者のモチベーションが高まればいいなと思います。

Q.酪農女性サミットも同様の思いで開催されたのでしょうか。

 酪農女性サミットは、仕事としての酪農に魅力を感じる女性を増やすことや、女性も酪農経営に関わって牧場を改善することが可能であることを伝える学びの場にもすることを目指して開催しました。サミットの開催に当たっては、私を含め北海道各地でSAKURA会のような酪農グループを持つ酪農経営者や酪農コンサルタントの女性6名が実行委員となりました。サミットに参加するためには、休暇や宿泊費、旅費が必要となることから、女性たちが参加しやすくなるためにはサミットのことを各方面に広く理解してもらう必要があると実行委員で考え、一定期間継続しようと平成29年から3年続けて開催することとしました。開催1年目には100名程度だった参加者が、SNSなどを通して全国各地の酪農関係者に興味を持ってもらい、3年目には300名を超え、スタッフを含めると計400名程度が集まりました。ありがたいことに再開希望の声も多くいただいているので、何年後かにまた開催できればと考えています。
えがみ

Q.SAKURA会などの開催を通してご自身に変化はありましたか。

 私自身もセミナーやイベントなどを通して得た知識や、参加者から受けた刺激によって、自分自身の地域のことについてより深く考えるようになりました。広尾町でも酪農家が減っており、生産者と関係機関が支え合う現在の生産体系を維持するためには、自分の牧場のことだけを考えればいいというわけではないと感じており、地域における酪農のイメージを向上させなければいけないと思っています。酪農は臭い、汚いと見られがちですが、酪農研修先のカナダでは、酪農に対して非常に好意的です。例えば、カナダには農業に関心のある子供や若者が参加するクラブが各地域にあり、夏休みになると周囲も協力しながら、農家の敷地を借りて子供たちが運営するイベントを開催するなど、日本よりも消費者と酪農が近いと感じました。 
 一方で、広尾町では、生産した牛乳は全てチーズなど加工用となり、町内でも広尾町産の牛乳や乳製品は販売されていないこともあってか、残念ながら酪農家の存在感が薄いように感じています。まず、地域の人に広尾町の酪農を知ってもらうために、広尾町で生産された牛乳を少しでも飲用として町内で販売するといったことなどに地域の酪農家も一緒になって皆で取り組めたらいいのではないかと思っています。また、十勝地域で酪農に携わる女性たちの活動や取組、農業、酪農の魅力・素晴らしさを広めようと、地元のF‌Mラジオ番組「とかちウーマンフロンティア」で情報発信をしていますが、この放送で酪農に対するイメージアップにつながればいいなとも思っています。 
鶏

Q.今後の抱負を教えてください。

 酪農経営に関しては、乳牛を増頭して規模を拡大していくよりも、個々の能力を伸ばして平均産次数(※)を上げるといった方法で出荷乳量を伸ばしたいと考えています。現在、新型コロナウイルス感染症拡大によって様々な業種が影響を受けていますが、幸いなことに私たちは通常通り生乳を生産、出荷しており、関係者の方々の支えもあって仕事を続けていられるということも実感しています。牛を大事にするということをモットーに引き続き酪農経営に取り組みたいと思います。
 また、今後は新たに酪農家を育てたいという思いもあるので、酪農を始めたい人を雇用することも考えています。女性で力仕事ができない場合でも今は酪農機械などがあり、酪農をやりたいと思っている女性にも、女性だからという理由で諦めずにチャレンジして欲しいです。
 イベントなどに関しては、新型コロナウイルス感染症の影響でSAKURA会は2年開催できていません。SAKURA会だけなく、町内や地域の集まりも全て中止になっているこうした状況が長く続くと、今後イベントなどを開催しても集まってくれる人がいないのではないかと不安に感じています。ただ、皆で集まって情報交換することには利点が多く、今後集まりを再開できた時には、若い人たちにも運営の楽しさを伝えてやりがいを共有し、取組を引き継いでいきたいです。
 個別の目標はありますが、まとめると「酪農ファンを増やしたい」ということになると思います。これまでも会議の場などでお伝えしているのですが、地域内で酪農のイメージを向上させながら酪農の仕事に魅力を感じる人を増やしていくことができれば、牛乳・乳製品の消費も伸びるのではないかと考えています。その結果として酪農の勉強をしたいと思う人や酪農の道に進もうと思う人が増えることを望んでいます。
 
(※)飼養している経産牛全体の分娩回数の平均値。
おくら
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196



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