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【寄稿】令和2年度 食料・農業・農村白書 〜特集「新型コロナウイルス感染症による影響と対応」〜

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最終更新日:2021年8月4日

農林水産省大臣官房広報評価課情報分析室

はじめに

 新型コロナウイルス感染症は、令和2年に世界的な大流行に発展し、農林水産業・食品産業を含む我が国の経済・社会に大きな影響を及ぼしています。このため、「令和2年度 食料・農業・農村白書」(令和3年5月25日公表)では、「新型コロナウイルス感染症による影響と対応」を特集として取り上げ、新型コロナウイルス感染症の拡大による食料消費面や農業生産・販売面での影響と新たな動き、地方への関心や働き方、交流に関する新たな動きなどについて記述しています。本寄稿では、白書の特集のエッセンスについて紹介します。

食料消費面での影響と新たな動き

 令和2年2月以降、学校の休校や外出自粛、インバウンド需要の減少等により、外食事業者を始め、関連産業に大きな影響が発生しています。感染症が拡大するにつれ、外出自粛に伴う家庭内消費が増加し、令和2年3月以降、外食への支出額が大きく減少する一方、生鮮食品への支出額が増加しました(図1)。
 このような中、外食事業者の中には、テイクアウトや、フードデリバリーへの取り組みを拡大する動きが見られます。また、消費者においても、新型コロナウイルス感染症の拡大により販路を失った国内生産者から農水産物を購入する「応援消費」の動きが見られました。このほか、外食用に販売予定であった未利用食品を、フードバンクを通じて「こども食堂」などに提供する動きも見られました。
図

農業生産・販売面での影響と新たな動き

 外食需要やインバウンド需要の減退により、和牛肉、わさび、マダイなどの卸売価格が低下するとともに、イベントや冠婚葬祭が中止されたことなどにより、切り花の卸売価格が低下しました。令和2年7月に株式会社日本政策金融公庫が実施した調査では、農業者の半数が売上高にマイナスの影響があると回答し、令和3年1月の同様の調査では、その割合は6割強に上昇しました。
 このような中、生産者や観光農園がオンラインを活用した消費者への直接販売や、外食用から小売や加工用へ販路を変更する動きが見られました。また、外国人の入国制限措置により、令和2年4月から来日を予定していた外国人材の入国が困難になりましたが、宿泊業・飲食業などの他産業から農業経営体が労働者を雇用する動きが見られたほか、農福連携やスマート農業機械の導入による労働力不足への対応などの取り組みが展開されました。

地方への関心や働き方、交流に関する新たな動き

 新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、テレワークなど場所を問わない働き方が進行するにつれ、地方への関心が高まっています。令和2年5〜6月に内閣府が行った調査によると、新型コロナウイルス感染症の影響により、都市住民の15・0%が地方への移住への「関心が高くなった」などと回答しています(図2)。
 また、令和2年度の就農希望者向け相談会への来場者数は9月以降増加しており、農業への関心が高まっていることがうかがえます。生産現場では、農業と宿泊業や、農業と酒造りなど、農業を営みながら他の仕事にも携わる働き方である「半農半X」の拡大に向けた取り組みが一部自治体で行われています。
図

農林水産業・食品産業関係における対応

 農林水産省は、感染症の拡大の影響を受け、国民への食料の安定供給を確保する観点から、緊急経済対策などにおいて、農林漁業者などの経営継続支援などの措置を実施しました。  新型コロナウイルス感染症の拡大により食料・農業・農村に影響が生じたことは、食料供給に影響を及ぼすリスクが多様化していることを示しています。食料の安定供給は、国の最も基本的な責務の一つであり、国内の農業生産の増大に向け、食料自給率の向上や食料安全保障の強化への期待はますます高まっています。このため、国は、今後も新型コロナウイルス感染症による影響の緩和に取り組むとともに、感染の発生状況などを注視し、必要な対応を行っていくこととしています。

おわりに

 令和2年度食料・農業・農村白書では新型コロナウイルス感染症による影響と対応のほか、令和2年度における特徴的な動きとして、農林水産物・食品の輸出の新たな戦略や、みどりの食料システム戦略、スマート農業実証プロジェクト、農業DX構想などを取り上げ、記述しています。

詳しくは以下のページからご覧いただけます。
https://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/r2/index.html
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196