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【業務関連情報】全国有数の出荷量を誇る「博多なす」の産地について

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最終更新日:2022年10月5日

広報誌「alic」2022年10月号

はじめに

 野菜の産地では、消費者へ安全で安心な美味しい野菜を届けるため、日々品質の向上に努め、また、特色ある商品づくりや販売促進活動などを行っています。
 今回は、福岡県のブランドなす「博多なす」についてご紹介します。

1.古来より愛されるなす

 インド原産のなすは、8世紀ごろに中国から日本に伝わったとされ、古くから日本人にとってはなじみの深い野菜です。関東の“卵形なす”、東海・関西の“長卵形なす(中長なす)”、東北と関西以西の“長なす”、九州の“大長なす”などのほか、地域の気候や嗜好に適応した果実の大きさと形の品種が定着しています。
 生育適温は23〜30℃と高く、以前は夏の代表的な野菜とされていましたが、現在は施設栽培の普及や栽培技術の向上により、1年を通して店頭に並んでいます。
 冬春なす(主に冬春期に出荷される)については、福岡県が高知県に次ぐ主産県です(図1)。

図1 令和3 年なすの月別入荷実績(東京都中央卸売市場)資料: 農畜産業振興機構「ベジ探」、原資料:令和3 年東京都中央卸売市場年報 注:( )内の数値は、月別入荷量全体に占める割合(%)。

2.福岡県産ブランド「博多なす」の誕生と産地の取り組み

 福岡県では古くから長なすの栽培が行われていましたが、昭和43年に東京出荷を始めるに当たって、関東の嗜好性に合わせた長なすの試作と商品開発に取り組まれました。関東では長なすはなじみが薄かったため、商品知識や調理方法をまとめたリーフレットを配布するなどの地道な努力が重ねられ、昭和63年には福岡県産の中長なすが「博多なす」として、全国の市場へと出荷が開始されました(写真1)。
 「博多なす」を出荷する一大産地である柳川農業協同組合(以下「JA柳川」という)は、有明海に面した比較的温暖多雨で穏やかな風土のもと農作物栽培に適した地域に位置しています(図2)。同JAのなすは収量が多く、柔らかくて食味の良い「PC筑陽」という品種を主に栽培しており、9月から翌年7月上旬まで安定した収穫が続けられます。
 午前中に収穫された「博多なす」は、選果場で等階級ごとに仕分けた後(写真2、3)、その日のうちにトラックで地元や関東、関西、中国地方の各市場へと出荷され、高品質で食味の良いなすが、シーズンを通して流通します。
 また、全国農業協同組合連合会福岡県本部は、冬春なすの主産6県(福岡・高知・熊本・岡山・佐賀・徳島)で組織される「冬春なす主産県協議会」の一員として、なすをもっと食べて欲しいという願いを込め、冬春なすの最盛期で「よいなす」と読む語呂合わせから毎年4月17日を「なすび記念日」、毎月17日を「国産なす消費拡大の日」として、なすをアピールするさまざまなイベントを催し、全国の卸売会社、スーパーなども含め、販売PRに力を入れています。

写真1 「博多なす」と明記された小袋写真提供:JA 柳川
写真1 「博多なす」と明記された小袋
写真提供:JA 柳川

図2 JA 柳川の位置
図2 JA 柳川の位置

写真2 収穫の様子写真提供:JA 柳川
写真2 収穫の様子
写真提供:JA 柳川

写真 3 選果の様子写真提供:JA 柳川
写真 3 選果の様子
写真提供:JA 柳川

おわりに

 野菜は、天候によって作柄が左右されやすく保存性も乏しいため、供給量によって価格が大きく変動しやすい作物です。
 alicでは、「野菜価格安定制度」により、野菜生産者の経営の安定と消費者への国産野菜の安定供給を図るため、全国的に消費量の多い指定野菜14品目(注)の販売価格が著しく低落した場合に野菜生産者へ補給金を交付することで、野菜農家の経営に及ぼす影響を緩和し、消費者が安定した価格で購入できることを目指しています。
 毎日の食卓に届く野菜の背景には、今回ご紹介したような産地の努力や制度の存在があります。普段身近に感じられる野菜だからこそ、これを機会に今一度、生産者の方々の苦労に思いをはせ、丹精込めて作られた野菜を味わってみてはいかがでしょうか。

(注)キャベツ、きゅうり、さといも、だいこん、たまねぎ、トマト、なす、にんじん、ねぎ、はくさい、ばれいしょ(じゃがいも)、ピーマン、ほうれんそう、レタス。
 
(野菜業務部)
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196