畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 畜産の情報 > 新型コロナウイルス感染症関連の情報

海外情報 畜産の情報 2020年12月号

新型コロナウイルス感染症関連の情報

印刷ページ
調査情報部
 調査情報部では世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、各国政府の対応など需給に影響を与えるタイムリーな情報を、海外情報としてホームページで随時掲載しております。
(掲載URL:https://www.alic.go.jp/topics/index_abr_2020.html
  ここでは、前月号でご紹介したもの以降、10月末までに掲載したものをまとめて紹介いたします。

【北 米】

1 (令和2年10月7日付)農務省がコロナウイルス食料支援プログラムの第2弾を公表(米国)

 2020年9月18日、トランプ大統領と米国農務省(USDA)のパーデュー長官は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により市場の混乱やコスト増に苦しんでいる農業生産者に対して、最大140億米ドル(1兆4840億円、1米ドル=106円)となる第2弾のコロナウイルス食料支援プログラム(CFAP2)を公表した。
 同年5月に公表されたCFAPでは同年4月15日までの損失が支払い対象であったが、CFAP2では4月16日以降も支払い対象と対象期間が更新され、対象となる農作物も拡大した。申請受付期間は、同年9月21日から12月11日までとなっている。CFAP2ではCFAPの直接支払いと同様に、穀物、家畜、野菜や果物、乳製品、水産物、その他の作物を支援するために、商品信用公社(CCC)憲章法とコロナウイルス支援・救済・経済安全保障法(CARES Act)の財源を使用する。

【対象作物と支払額】
 CFAP2の対象作物は次の3種類に分けられる。

1 トリガー価格作物・畜産物

 2020年1月13日から1月17日までの期間と7月27日から7月31日までの期間の全米平均価格を比較して、5%以上下落した主な作物および畜産物。

・ トウモロコシ、小麦、大豆など
 大麦、トウモロコシ、ソルガム、大豆、ひまわり、リクチワタ、小麦に対する支払額は2020年の作付面積に基づいて算出されるが、作付け放棄地や試験的な作付け地は対象外となる。支払額は、以下のうちの大きい方となる。
 (1)1エーカー(4047平方メートル)当たり15米ドル(1590円)を対象となる作付面積に乗じた額。
 (2)対象となる作付面積に作物ごとの全米の作物売買比率と単位当たり支払額(表1)および2020年の生産履歴(APH)で承認された生産量を乗じた額。APHが利用できない場合、2019年の郡べース農業リスク補償プログラム(ARC-CO)(注)における対象作物の標準収穫量の85%が適用される。
 

 
(注) ARC-CO(Agriculture Risk Coverage-County Option):ARCは当該年の生産者の収入が保障水準を下回った場合に、その差の一部を補てんするプログラムであり、COは郡の実収入額が予め設定された額を下回った場合に補償が行われる。
 
・ 肉用鶏と卵
 肉用鶏の支払額は、2019年の肉用鶏の生産量の75%に1羽当たり1.01米ドル(107.06円)を乗じた額となる。
 2020年に飼育を開始した生産者および2019年に生産実績がなかった生産者に対する支払額は、申請時点における2020年の生産量に基づいて算出される。
 鶏卵の支払額は、2019年の鶏卵生産量の75%に単位当たり支払額(表2)を乗じた額となる。2020年に飼育を開始した生産者および2019年に生産実績がなかった生産者に対する支払額は、申請時点における2020年の生産量に基づいて算出される。
 なお、契約生産により価格リスクを負っていない農家は対象外となる。
 

・ 乳製品(牛乳)
 牛乳に対する支払額は、以下の(1)と(2)の合計額となる。ただし、2020年9月1日より前に廃業した場合は対象外となる。また、2020年9月1日以降に廃業した場合は、推定生乳生産量は日割りで算出される。
 (1)2020年4月1日から8月31日までの期間における実際の生乳生産量に、100ポンド当たり1.2米ドル(同127.2円、1キログラム当たり2.8円)を乗じた額。
 (2)2020年9月1日から12月31日までの期間(122日間)の推定生乳生産量(同年4月1日から8月31日までの期間から算出された1日当たりの平均生乳生産量に、122を乗じた値)に、100ポンド当たり1.2米ドル(同127.2円、1キログラム当たり2.8円)を乗じた額。

・ 家畜(肉用牛、豚および子豚、子羊と羊)
 対象となる家畜に対する支払額は、2020年4月16日から8月31日までの期間に生産者が選択した日における最大飼育頭数に対して、商品信用公社(CCC)憲章法の支払い率を乗じた額(肉用牛:1頭当たり55米ドル(5830円)、豚および子豚:1頭当たり23米ドル(2438円)、子羊と羊:1頭当たり27米ドル(2862円))となる。ただし、種畜は対象外である。

2 定額作物

 アルファルファ、超長繊維綿、オート麦、ピーナッツ、米、麻、キビ、マスタード、ベニバナ、ゴマ、ライ小麦、菜種などは5%以上の価格下落要件を満たさない作物または価格変動を算出するために利用できるデータがない作物だが、2020年の対象面積に1エーカー当たり15米ドルを乗じた額を受けることができる。

3 売上作物・畜産物

 野菜や果物、水産物、苗床作物、花卉、トリガー価格作物および定額作物とならないタバコ、トリガー価格畜産物とならない山羊乳、ミンク(生皮を含む)、モヘア、ウールおよび食品、繊維、毛皮、羽毛などのために飼育されるその他の家畜が対象となる。
 支払額は、2019年の売上範囲(5段階)に応じて定められた支払い率に基づいて決定される(表3)。
 
 
 支払額の例:生産者Aの対象作物における2019年の売上が7万5000米ドル(795万円)であった場合、支払額は、(4万9999米ドル(529万9894円)×10.6%)+(2万5001米ドル(265万106円)×9.9%)=7775米ドル(82万4150円)。
 2020年に飼育を開始した生産者および2019年に売上実績がなかった生産者に対する支払額は、申請時点における2020年の売上に基づいて算出される。
 生産者が加工や包装などを行った場合、売上のうち付加価値に相当する分は対象外となる。

【受給資格】
 1個人または1法人につき全品目合計の支給額の上限は25万米ドル(2650万円)となっている。企業、有限会社、有限組合の申請者は、従業員が農業経営に労働力としてや経営管理に携わっている場合、この上限が増加する可能性がある。また、第1弾および第2弾のCFAPの対象となった信託や不動産が、上限増加に考慮されるようになった。
 また、申請者は平均調整総所得(AGI)が90万米ドル(9540万円)未満であることを証明しなければならないが、AGIのうち75%以上が農業、牧場または林業関連の活動からの収入であれば、AGIに関する制限は除外される。さらに、「著しく侵食を受けやすい土地および湿地の保全」に係る規則を順守していることなどのいくつかの条件が設定されている。
 今回の公表に合わせて、パーデュー長官は、「米国農業界は高い回復力を持つとはいえ、COVID-19の大流行により現在も多くの困難に直面している。トランプ大統領は、米国の農家や牧場主が米国の繁栄のために必要な食料、燃料、繊維を生産する事業を継続できるようにするという約束を果たしている。我々は、COVID-19の影響について、農家、牧場主および農業団体の声を受け止め、ニーズに合ったより良いプログラムに改良した」と述べている。

【参考:新型コロナウイルス関連情報(米国)】
・農務省はコロナウイルス食料支援プログラムの対象農作物を追加(海外情報(令和2年8月21日発))
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002762.html
・米国農務省は新型コロナウイルス感染症の影響を受けている生産者への支援策の詳細を発表(海外情報(令和2年5月26日発))
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002709.html
・米国農務省、新型コロナウイルス感染症に対する農業支援策を発表(海外情報(令和2年4月28日発))
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002685.html
・食肉団体は新型コロナウイルス感染症の影響を受ける業界の窮状を訴える(海外情報(令和2年4月17日発))
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002679.html

 
【国際調査グループ】

2 (令和2年10月7日付)コロナウイルス食料支援プログラムの第2弾に対する農業団体の反応(米国)

 2020年9月18日に公表された第2弾のコロナウイルス食料支援プログラム(CFAP2)に対する米国の農業団体による主な声明は以下の通り。

・ アメリカン・ファーム・ビューロー・フェデレーション(AFBF)のデュバル会長
 家や牧場主は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が米国で流行し始めた時、市場の需要が消滅するという状況を目の当たりにした。現在は食料供給への不安は落ち着いているが、米国の農家や牧場主は経済的な困難に苦しんでいる。COVID-19がいつ収束するのかは誰にも分からず、我々はまだ貿易上の不均衡と悪天候の影響を受け続けている。今回の支援策は、農家や牧場主が生活を維持し、彼らが米国民に食料を提供し続ける頼みの綱である。

・ 全米肉用牛生産者・ 牛肉協会(NCBA)のイーサン・レーン政府担当責任者
 COVID-19の流行により深刻な被害を受けている肉用牛生産者にUSDAが追加支援を提供することをうれしく思う。初回のCFAPは、COVID-19発生直後の重要な暫定支援として実施された。残念なことに、今春の前例のないサプライチェーンの崩壊と農家全体の経済的混乱によって、肉用牛業界の多くの人々は現在も不安定な状況にある。我々は、全米の農家と牧場主に追加支援を提供するために休む間もなく働いているトランプ大統領、USDAのパーデュー長官そして政府関係者に感謝している。我々は、肉用牛生産者を確実に回復させるための適切な支援が提供されるまで、議会と協力して取り組み続ける。

・ 全米七面鳥協会(NTF)のジョエル・ブランデンベルガー会長
 我々は全米の七面鳥生産者の要望に応えてくれたトランプ大統領とパーデュー長官に感謝している。今回のCFAP2から新たに支援対象として七面鳥が加わったことは、COVID-19による市場の混乱と外食産業による需要の喪失に苦しんでいる七面鳥生産者の困難な状況を認識し、それに応えてくれたものである。CFAP2が始まることを楽しみにしており、今後も七面鳥業界が必要とする支援を提供し続けるように取り組み続ける。

・ 全米生乳生産者連盟(NMPF)のジム・ムルハン会長兼CEO
 CFAP2は、COVID-19の流行による経済的影響に苦しむ多くの家族経営の酪農家を支えることになる。今回の支援策はすべての酪農家の要望に応えるものではないが、今後の秋から冬にかけてのセーフティーネット強化に役立つ。我々は、次のCOVID-19に関する連邦議会の審議において、農業に関する事項を優先することを連邦議員に要請する。サプライチェーンの崩壊と乳製品の日持ちしにくい性質により、特に酪農家は年間を通して損失を被っている。5年間も続いた乳価の低迷に苦しんできた酪農家は、ようやく乳価が回復する兆しがみられていた矢先に、COVID-19による休業状態に見舞われ、今も経営収支の改善に苦労している。また、USDAが今回の支援策で支払い額の上限を撤廃しなかったことは残念である。支払額の上限は、乳価の下落によって深刻な被害を受けている多くの大規模酪農家にとって不公平なものである。

・ 全米トウモロコシ生産者協会(NCGA)のケビン・ロス会長
 2020年は農業にとって厳しい年となっており、我々はこれから収穫の時期を迎えるが、多くの不透明性が残されている。我々は強固な基盤を取り戻すべく全力を尽くしているが、我々だけでは達成できないため、今回の支援策は歓迎すべき一歩である。

 今回の新たな支援策について、支援対象となる期間が延長されたことを評価する声が多く、農業団体はおおむね歓迎の意を表しているが、一部ではさらなる支援を求める声もあり、今後の動向が注目される。

【参考:新型コロナウイルス関連情報(米国)】
・農務省はコロナウイルス食料支援プログラムの対象農作物を追加(海外情報(令和2年8月21日発))
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002762.html
・米国農務省は新型コロナウイルス感染症の影響を受けている生産者への支援策の詳細を発表(海外情報(令和2年5月26日発))
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002709.html
・米国農務省、新型コロナウイルス感染症に対する農業支援策を発表(海外情報(令和2年4月28日発))
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002685.html
・食肉団体は新型コロナウイルス感染症の影響を受ける業界の窮状を訴える(海外情報(令和2年4月17日発))

https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002679.html
 
【国際調査グループ】

【欧 州】

1 (令和2年10月1日付)農産物・食品飲料団体ら、英EU・FTAの質の高い合意のほか、BREXIT調整準備金の活用も求める(EU)

 欧州連合(EU)最大の農業生産者団体である欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(COPA-COGECA)(注1)、欧州食品飲料産業連盟(Food Drink Europe)(注2)、欧州農産品貿易連絡委員会(CELCAA)(注3)の三者は連名で9月24日、英EU・自由貿易協定(FTA)交渉が合意できなければ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大で苦しんでいる農家、農産品・食品事業者、貿易業者にとって、壊滅的な結果をもたらすことになると表明した。
 三者は、2019年には貿易額が580億ユーロ(7兆3660億円、1ユーロ:127円)となったEUと英国の貿易に役立ち、ビジネスと雇用を支援するための解決法を見いだすよう求めるとともに、EUと英国の間の公平な競争と、EU側の単一市場の完全維持を追求しなければならないとしている。
 海を挟んだ英国とEU間の農産品・食品事業者は、2021年1月1日以降の動植物検疫、食品と飼料管理に関する英国の規制制度や、EUの輸出に影響を与えるさらなる要件が見極められない状況に置かれており、移行期間の終了まで4カ月を切った今もなお、質の高いFTAに合意することを期待している。しかしながら、迫り来る困難を考え、50億ユーロ(6350億円)のBREXIT調整準備金(注4)を、農産品・食品部門のために迅速に活用できるようにすることも求めている。
 英国側は、9月7日に英EU・FTA交渉に関する声明を発表し、EUとの交渉期限を10月15日までとする一方、欧州側は第8回目の交渉後の声明で、EUは英国の主権を尊重した解決策を見つける柔軟性を示してきたとしている。しかし欧州側は、重視する分野で大きく意見が異なっており、英国が、「公平な競争条件の確保」について拒絶し、「社会、環境、労働、気候に関する規制の維持」について確約を得られていないなど、主要な問題点について取り組んでいないとした上で、2021年1月1日に想定しうるすべての状況に備えるための準備作業を強化しているとも述べている。

(注1) 欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(COPA-COGECA)とは、EU加盟国の2300万人以上の農業生産者によって構成されるCopa(欧州農業組織委員会)および2万2000の農業共同組合により構成されるCogeca(欧州農業協同組合委員会)により組織されたEU最大の農業生産者団体。CopaおよびCogecaは、独立した組織であるものの、両者は共同で事務局を設置し、主にロビー活動を行っている。
(注2) 欧州食品飲料産業連盟(Food Drink Europe)とは、EU加盟国の29万4000社の事業者と470万人の労働者で構成されるEU最大の食品製造業団体。取引量はEU全農産物の70%を占める。
(注3) 欧州農産品貿易連絡委員会(CELCAA)とは、EU加盟国の3万5000社の農産物貿易事業者で構成されるEU団体。穀物、飼料、砂糖、ワイン、食肉、乳製品、青果物、卵、香辛料、切り花などの農産物を対象としている。
(注4) 欧州理事会で2020年7月21日、EUの次期中期予算計画である2021年〜27年の多年次財政枠組み(MFF)に併せてMFFの枠外で合意された、英国のEU離脱により不測の悪影響を受けた加盟国や分野に対処するための準備金。詳細は今後欧州委員会において検討されることとなっている。


【参考】
 EU農産物・食品飲料団体ら、英EU・FTA交渉が難航していることにリスクが高まっていると懸念を表明。「合意なし」の場合、移行期間の延長、代替案の措置を要求(海外情報 令和2年6月11日発)

https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002724.html
 
【調査情報部 小林 智也】

2 (令和2年10月22日付)欧州委員会、食肉の短期的需給見通しを公表(EU)

 欧州委員会は2020年10月5日、9月中旬までの市場情報に基づき、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大によって急速に変化する状況や影響などを可能な限り反映した農畜産物の短期的需給見通し(注1)を公表した。このうちの食肉の需給見通しの概要について紹介する。
 なお、EU・英国間においては、将来の貿易環境がどのように変化するか不確定であるものの(参考1)、農畜産物の関税や非関税障壁が発生しない現在と同じ条件であることを仮定し、欧州連合(EU)離脱の移行期間にある英国(注2)を含まないEU加盟27カ国を対象としている。

(注1) 欧州委員会は、農畜産物の短期的需給見通しを年3回(晩冬、初夏、初秋)、中期的需給見通しを年1回(12月)公表している。
(注2) 英国は現在、EU離脱(BREXIT)したものの、EU法の適用下の「移行期間」にある。同期間は2020年12月31日に終了予定。


(参考1) 農産物・食品飲料団体ら、英EU・FTAの質の高い合意のほか、BREXIT調整準備金の活用も求める(EU)(欧州1番の情報)
     https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002783.html

 

<牛肉>

 2020年の牛肉生産量は、今年7月の短期的需給見通しの前年比1.7%減を上方修正し、下半期の生産が安定的に推移すると仮定して同1.4%の減少と見込んでいる。減産の主な要因は、COVID-19による食肉処理場の操業停止などの影響の他、春期の乾燥による飼料供給不足のため、低体重での早期出荷が増えたことなどが挙げられる。上半期は、COVID-19の影響により4、5月のと畜頭数が停滞または減少したことや、外食産業の営業停止などCOVID-19の影響による需要減を受けて多くの加盟国で減産となり、前年同期比2.4%減となった。しかし、外食産業や観光業の営業再開により需要は回復傾向にある。これに伴い、5月中旬に底を打った牛枝肉卸売価格は、前年水準まで回復している。
 
 
 2020年の牛肉輸出量は、前年比1.0%の増加を見込んでいる。上半期は、英国のEU離脱(BREXIT)への懸念から英国向けは前年同期比9%減となる一方、アイルランド、デンマーク、イタリア、フランス、ドイツなど英国以外への輸出量は同12%増となった。一方、輸入量は、外食産業の営業停止などから、上半期実績では同22%減となったが、外食産業の営業再開により需要に回復傾向が見られることから、通年では前年比10%減にとどまるものと見込んでいる。
 また、2020年の牛肉消費量については、前回の見通しから変わらず、前年比2.1%の減少(一人当たり10.4キログラム)を見込んでいる。

<豚肉>

 2020年の豚肉生産量は、今年7月の短期的需給見通しの前年比0.5%増を下方修正し、同0.5%の減少を見込んでいる。上半期には、スペインとデンマークの増加分を、ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、ポーランドの減少分が上回り、EU全体での上半期の生産量は同0.9%減となった。第3四半期(7〜9月)には、好調な豚価、消費者需要の回復、最近の投資の効果などにより各加盟国での増産が進むと期待されていた。しかし、9月中旬にドイツ東部国境でイノシシからASF(アフリカ豚熱)が確認されたことによる同国からの輸入禁止の動きがあり、こうしたことから、夏の初めから安定していた豚価にも下げ圧力が出始めている(参考2)
 
 
 2020年の豚肉輸出量は、今年7月の短期的需給見通しの前年比10.0%増を大幅に下方修正し、同2.0%の増加と見込んでいる。上半期の輸出量は、中国向けが倍増、その他ベトナム向けが増えたことなどから、前年同期比で15%を超える増加となった。しかし、EU最大の豚肉生産国であるドイツでASFが確認され、大幅に下方修正された。また、2021年には、中国での国内生産の回復や特に輸入食肉に対する食肉消費の多様化により前年比10.0%の減少が見込まれている。今後のEUの豚肉輸出にとっての注目点は、ドイツのASFの封じ込めの成否と、貿易相手国が地域主義(注3)の適用によって、ドイツからの豚肉輸出を部分的に認めるかどうかである。なお、ドイツの中国およびアジア向け輸出の減少分は、デンマーク、スペイン、オランダが部分的に補完する可能性があるとみられる。
 また、2020年の豚肉消費量については、前年比1.1%の減少(一人当たり32.8キログラム)と見込んでいる。

(参考2) 野生イノシシで初のASF発生(ドイツ)【海外情報 令和2年9月11日発】
     https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002771.html


(注3) 地域主義とは、疾病発生国であっても、清浄性(当該疾病の感染の可能性がないこと)が確認できる地域からの輸入であれば認めるもの。
 

<家きん肉>

 2020年の家きん肉生産量は、今年7月の短期的需給見通しの前年比2.0%減を上方修正し、同1.0%の増加を見込んでいる。主要生産国であるイタリア、ポーランド、スペイン、ドイツで生産が拡大し、上半期で前年同期比1.5%増加した。ポーランドにおける投資の進展や、COVID-19による都市封鎖(ロックダウン)における他の食肉から家庭内消費の多い鶏肉への需要のシフトなどが要因となっている。外食産業の営業再開や小売での旺盛な需要に支えられ、価格は回復基調にある。一方、家きん肉の中でも、販売先のほとんどが外食向けである鶏肉以外(鴨、ホロホロ鳥、ハト、うずら)は、COVID-19による外食産業の営業停止の影響を大きく受け、生産量の減少が2020年末まで続くとみられている。
 

 
  2020年の家きん肉輸出量は、年初に鳥インフルエンザが発生したポーランドからの輸入が徐々に再開されるとみられるものの、前年比6.0%減となり、2021年には緩やかな増加に転じると見込んでいる。2020年上半期は、主要輸出先である英国向けが前年同期比12%減となった他、同20%増となったフィリピンを除くその他の国向けが同5%減少し、全体で同8.5%減となった。
 2020年の家きん肉輸入量は、輸入鶏肉の主な仕向け先である外食産業の需要低迷の影響により、同12.0%減になると見込んでいる。上半期は前年同期比15%の減少であったものの、2021年には前年比6.0%増と回復が見込まれている。
 また、2020年の家きん肉消費量については、前年比1.5%増加(一人当たり23.7キログラム)と見込んでいる。
 その他、本見通しでは、羊・山羊の2020年生産量について、COVID-19による外食需要の低下の影響などから、今年7月の短期的需給見通しの前年比1.5%減を下方修正し、前年比3.0%減少を見込んでいる。
 欧州委員会は報告の中で、COVID-19の農業・食品部門へ与えた影響を考慮することが今回の課題であったとした。また、COVID-19により、電子商取引による食品販売の増加や、地産地消の進展などの食品システムへの変化があったとする一方、COVID-19の第二波の程度や経済的影響を緩和するために各加盟国が措置する対策の成否など不確定要素が多くあることから、2021年の景気回復の展望や農業市場への影響などを見通すことには注意が必要であるとしている。
 
【国際調査グループ】

3 (令和2年10月22日付)欧州委員会、生乳・乳製品の短期的需給見通しを公表(EU)

 欧州委員会は2020年10月5日、9月中旬までの市場情報に基づき、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大によって急速に変化する状況や影響などを可能な限り反映した農畜産物の短期的需給見通し(注1)を公表した。このうちの生乳および乳製品の需給見通しの概要について紹介する。
 なお、EU・英国間においては、将来の貿易環境がどのように変化するか不確定であるものの(参考)、農畜産物の関税や非関税障壁が発生しない現在と同じ条件であることを仮定し、欧州連合(EU)離脱の移行期間にある英国(注2)を含まないEU加盟27カ国を対象としている。

(注1) 欧州委員会は、農畜産物の短期的需給見通しを年3回(晩冬、初夏、初秋)、中期的需給見通しを年1回(12月)公表している。
(注2) 英国は現在、EU離脱(BREXIT)したものの、EU法の適用下の「移行期間」にある。同期間は2020年12月31日に終了予定。


(参考) 農産物・食品飲料団体ら、英EU・FTAの質の高い合意のほか、BREXIT調整準備金の活用も求める(EU)(欧州1番の情報)
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002783.html

<生乳生産>

 2020年の生乳生産量は、今年7月の短期的需給見通しである前年比0.7%増を上方修正し、同1.4%の増加を見込んでいる。経産牛飼養頭数は減少(同0.4%減)を続けるものの、7月までの牧草生育が良好だったことと、価格が低水準となった濃厚飼料の使用量が増加することより、1頭当たり泌乳量が増加(同1.6%増)するとみられている。1〜7月までの間はこの傾向が顕著であり、生乳生産量は前年同期比2%増で推移した。一方、ドイツ北部、ポーランド西部、フランス北東部、ベネルクス諸国(ベルギー、オランダ、ルクセンブルク)において、夏季における降水不足と平年を上回る高温が牧草の生育を阻害しており、今後数カ月間の飼料供給(乾草とサイレージ)に悪影響を与えることが見込まれており、年末にかけては生乳生産の伸びが鈍化するとみられている。
 
 

<チーズ>

 2020年のチーズ生産量は、今年7月の短期需給見通しである前年比0.3%増を上方修正し、同0.7%の増加を見込んでいる。チーズの消費量は、COVID-19による外食需要低下の影響を大きく受けて減少(同0.2%減)するものの、EU産チーズに対する世界の需要は引き続き堅調であることから、チーズ輸出量は同5.0%増と見込んでいる。2021年には、持ち帰り(テイクアウト)を提供する外食サービスや電子商取引の増加により、チーズ消費量は同0.5%増とみられ、それに伴うチーズの増産(同0.5%増)も見込まれている。
 
 

<バター>

 2020年のバター生産量は、今年7月の短期需給見通しである前年比3.1%増を下方修正し、同2.5%の増加を見込んでいる。価格は上昇傾向にあるものの、輸出が好調に推移するとみられ、2020年のバター輸出量は前年比10.0%増の32万トンと、記録的な数量となる可能性が高い。また、外食需要の減少分は、家庭における調理用、製パン用などの小売需要で補われ、2020年のバター消費量は同0.2%増を見込んでいる。2021年には、チーズ同様に、持ち帰り(テイクアウト)提供する外食サービスや電子商取引の増加により前年比0.4%増とさらなる増加が見込まれている。
 
 

<脱脂粉乳>

 2020年の脱脂粉乳生産量は、今年7月の短期需給見通しと同様の前年比5.0%増を見込んでいる。EU域内の脱脂粉乳価格がCOVID-19による外食需要の低下などから低迷していることで、国際市場では競争力を有することとなっている。2020年の脱脂粉乳輸出量は、前年比10.0%減が見込まれているものの、過去2番目に高い水準(85万トン)に達するとみられている。
 
 
 欧州委員会は報告の中で、COVID-19の農業・食品部門へ与えた影響を考慮することが今回の課題であったとした。また、COVID-19により、電子商取引による食品販売の増加や、地産地消の進展などの食品システムへの変化があったとする一方、COVID-19の第二波の程度や経済的影響を緩和するために各加盟国が措置する対策の成否など不確定要素が多くあることから、2021年の景気回復の展望や農業市場への影響などを見通すことには注意が必要であるとしている。
 
【国際調査グループ】

【アジア】

1 (令和2年10月6日付)国内最大取引規模の農産物専門卸売市場、国産豚肉の取引を再開(中国)

 中国北京市にある新発地卸売市場では、市場職員が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染したことが確認されたことを受け、2020年6月13日から営業を停止していた(注)。野菜や果物など一部の取引は順次再開していたところ、現地報道によると、9月28日22時より豚肉の卸売市場も再開したとのことである。なお、輸入冷凍豚肉の取引はすべて禁止されており国産の取引のみである。また、水産物の取引はまだ再開されていない。
 当報道によると、再開された豚肉卸売市場は二つの独立したエリアに分かれている。第1卸売市場は午後10時から翌午前1時まで営業しており、販売者は九つの北京市指定食肉工場、購入者は主に北京市内の民間小売市場、民間の屋台経営者、政府機関の食堂経営者などに限定されている。第2次卸売市場は午前4時から午後2時までの営業で、180の店舗が出店しており、購入者は周辺のホテル、飲食店が中心である。
 当市場によると、再開当日の夜、680頭分の豚肉が搬入された。これは、COVID-19流行前の約4分の1であるが、今後は取扱量が増え、北京の豚肉価格安定のための重要な役割を果たすとしている。

(注) 新発地卸売市場および営業停止の詳細は、畜産の情報2020年9月号新型コロナウイルス感染症関連の情報「国内最大取引規模の農産物専門卸売市場、職員の新型コロナウイルス感染症の発症を受け、営業を停止(中国)」(https://www.alic.go.jp/content/001181559.pdf)P.93を参照されたい。
 

【調査情報部 寺西 梨衣】