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【レポート】輸出拡大に期待するカナダの牛肉業界

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最終更新日:2019年3月6日

 日本の年間牛肉輸入量は57万3000t(2017年)で、このうちオーストラリア産とアメリカ産がそれぞれ50 %、42 % と大部分を占めています。カナダ産は第3 位( 同3%)ですが近年は増加傾向にあります。
 そうした中、2018 年12 月30 日に日本やカナダを含む6カ国の間でT PP 11 協定が発効しました。この協定下では、日本へ牛肉を輸出する際にかかる関税が段階的に引き下げられるため、カナダの牛肉業界では日本への輸出拡大が期待されています。そこで今回は、カナダにおける牛肉の生産や輸出の状況について紹介します。
 

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牛肉産業の中心は西部

 カナダの牛肉産業は西部に集中しており、この傾向は特に子牛生産部門で顕著に見られます。最も母牛の飼養頭数が多いのはアルバータ州で、全体の4割を占めています(図1)。これは、西部の方が土地代が安価なことなどが関係しています。また、西部では大麦や小麦の生産も盛んで、これらをエサとして利用できる優位性を有しています。
 一方、東部のオンタリオ州では近年、同州で生産が盛んなトウモロコシを利用して肥育を行う「オンタリオ・コーン・フェッド・ビーフ」というブランド化に取り組んでおり、カナダ産の中での差別化が図られています。

レポ1-2

アメリカと密接に関わる牛肉生産

 カナダの牛の飼養頭数は、20 18年7月時点で1243万50 00頭であり、直近で最も多かった2005年の7割程度に落ち込んでいます(図2)。この要因の一つとして、隣国アメリカで牛が減少したことを背景に、アメリカへ生体のまま輸出される牛が増えたことが挙げられます。
 一方、カナダ国内の食肉加工業者は、世界的な牛肉需要の高まりで牛肉価格が上昇したことによって、生産意欲が高まり、飼養頭数が少ない中、と畜を増やしています。これに伴い、牛肉生産量は2016年以降増加傾向にあります。さらに201 8年は、これまでと構図が変わって、アメリカへ輸出する生体牛を減らすだけでなく、アメリカから生体牛を輸入することで、カナダ産牛肉の生産を増やしています。しかし、再びアメリカからの生体牛の需要が高まった場合には、カナダの牛肉生産に大きな影響を与えかねません。そのため、カナダが今後も継続的に増産していくためには、生産基盤の強化や安定化が欠かせません。

熱帯種

TPP 11 協定への期待は 日本向け輸出に

 カナダの牛肉輸出量は、世界第5位です。2017年の牛肉輸出量は、約37 万8000tでした。このうち、74 %を占める米国が最大の牛肉輸出先です(図3)。
 他方、TPP 11 協定参加国向けは輸出量全体の12 %であり、このうち日本向けが56 %を占めています。次に多いのは、メキシコ、ペルー、チリ向けですが、これらの国は同協定よりも以前にカナダとの間で自由貿易協定を締結しているので、同協定の発効が牛肉の輸出にもたらすメリットは少ないとみられています。
 このようなことから、同協定の発効によって得られるメリットは、日本市場において最も大きいと、カナダの牛肉業界は期待しています。
 前述のように、TPP 11 協定の発効はカナダ産牛肉の日本への輸出増加の追い風になるとみられていますが、中長期的に安定して輸出を増やしていくためには、生産基盤の強化や輸出環境の整備などのさまざまな課題を抱えています。一方で、業界全体で輸出プロモーションや研究・開発に取り組んでいることから、今後、カナダ産牛肉をお店で目にする機会は増えるかもしれません。
 

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