消費者コーナー 「食」の安全・安心や食育に関する情報、料理レシピなど

ホーム > 消費者コーナー > 広報誌 > 【レポート】私たちの生活に欠かせないでん粉について〜コーンスターチに関するEU現地調査より〜

【レポート】私たちの生活に欠かせないでん粉について〜コーンスターチに関するEU現地調査より〜

印刷ページ

最終更新日:2019年9月4日

 でん粉というと皆さんは何を思い浮かべますか。でん粉はお菓子や加工食品などの食べ物だけでなく、薬や紙、段ボールなど、私たちの生活の中で様々な身近なものに利用されています。

多様な用途があるコーンスターチ

 今回現地調査を行ったEUでは、でん粉用原料として主にトウモロコシ、小麦、ばれいしょ(じゃがいも)が使われており、生産量の割合はトウモロコシが5割、小麦が4割、ばれいしょが2割です。  
 中でもトウモロコシからできるコーンスターチ(スターチ〈starch〉は英語で「でん粉」の意)は、最も生産量が多くかつ安価であるため、広く利用されています。  
 フランス・パリのスーパーマーケットでは、コーンスターチ(400gで約2ユーロ〈約300円〉)はもちろん、コーンスターチを利用したスープのとろみをつけるための製品が棚に並んでいました。また、含有量は少ないものの、コーンスターチはケーキミックス、チルドデザートなど多くの製品に原材料として使用されています。さらに、コーンスターチは飲料やジャムにも使われる糖化製品(でん粉を酵素による分解などをして作られる甘味料。果糖ぶどう糖液糖などの「異性化糖」と呼ばれる甘味料もその一種)の原料にもなり、でん粉は姿を変えて私たちの身の回りにたくさん存在していることが分かります。

レポ1-2

食品以外にも利用されるでん粉

熱帯種

 食品以外のでん粉の利用としては、生分解性プラスチック(土中や水中の微生物によって分解されるプラスチック)などがあります。EUでは、自然環境への配慮から、フォークや買い物袋、ゴルフボールなどで、土壌で分解が進むでん粉由来の生分解性プラスチック製のものが見られます。しかし、生分解性製品は、石油由来のプラスチックなどと比較すると、原料費など生産コストが高くなる傾向があるため、全面的に石油由来のプラスチック製品から置き換わるには難しい側面もあります。

注目を集めるタンパク質

 でん粉を製造するときには、タンパク質や繊維が副産物として発生します。もっぱら牛や豚などの家畜の飼料に利用されていましたが、EUや北米ではこのタンパク質の需要が高まると見られています。これは、世界人口の増加に伴い、家畜に大量の飼料穀物を与えて動物性タンパク質の生産量を増加させることは地球環境に負荷を与えるという意見や、ヴィーガン(肉や魚だけでなく卵や乳製品も食べない完全菜食主義)をはじめとするベジタリアンの需要などから、植物性タンパク質の重要性はさらに高まるといった見方が北米やEUなどにあるためです。ここで注目されているのが、エンドウマメを原料とする豆類でん粉(Pea  starch)の副産物であるタンパク質です。EUの豆類でん粉を生産するある企業は、生産ラインの増強への投資を表明しています。

 でん粉は、名前を変え、形や性質を変え、様々なところに存在しています。私たちの身近な食品などの原材料表示を見てみると、「でん粉」(またはスターチ、果糖ぶどう糖液糖など)の表記を数多く見つけることができ、縁の下の力持ちであるその存在に改めて気付かされます。
 

レポ1-1

このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196