消費者コーナー 「食」の安全・安心や食育に関する情報、料理レシピなど

ホーム > 消費者コーナー > 広報誌 > 【レポート】米国における食肉代替食品市場の現状

【レポート】米国における食肉代替食品市場の現状

印刷ページ

最終更新日:2020年5月13日

 世界人口とともに、世界の食料需要も増加を続けるとみられています。需要を補うには畜産物についても増産する必要がありますが、持続可能性の観点から環境負荷を抑えつつ生産効率を高めるという難しい課題に直面しています。このような状況に対応する手段として、食肉代替食品と呼ばれるものが台頭しつつあります。
 小売店および外食産業は、食肉代替食品を菜食主義志向など消費者の嗜好を満たす新商品として歓迎しており、今後の需要次第では取扱量も増加する可能性があります。
 これら食肉代替食品のうち、米国では、植物由来食肉様食品(Plant−Based Meat。以下PBM。)、細胞培養肉、代替たんぱく質製品(昆虫食品)などが広まりつつありますが、今回は、PBMの状況について報告します。
 米国においては、植物由来の原料を用いて食肉を模した食品を製造する技術が以前から存在していましたが、かつては風味や食感が食肉とは程遠い商品が主流でした。しかし、近年では見た目から味まで食肉に近い商品も開発、販売されるようになっています。こうした植物由来商品には多様な原料が用いられており、代表的なものとしてはきのこ類、キヌア(雑穀の一種)、レンズ豆(ヒラマメ)、大豆、コメ、にんじん、ズッキーニ、穀類などが挙げられますが、これらの原料にさまざまな調味料を加えることによって、見た目や風味が食肉に近くなっています。加えて、食感も食肉に近づけるために、植物性たんぱく質を動物性たんぱく質の構造に加工するといった事例もみられ、そのような商品は、ハンバーガーのパティやソーセージの形状に成形されて販売されるケースも多くなっています。
 

レポ1-1

 ビヨンド・ミート社などの代表的なPBMメーカーの商品は既にスーパーなどで一般消費者向けに販売されているほか、最近では外食産業でもこのような商品の扱いが目立つようになっています。例えば、大手ハンバーガーチェーンのバーガーキング社のパティに植物由来の原料を用いた「インポッシブル・ワッパー」が人気を博しています。さらに、大手ドーナツチェーンであるダンキン社は植物由来原料のソーセージ(ビヨンドソーセージ)を使用したサンドイッチの販売を開始するなど、PBMは米国において身近な存在となりつつあります。
 食肉代替食品は、持続可能性が高い商品であるとされ、先進国を中心に今後も売上げが伸びていくと考えられます。一方、米国では、人口増加による食肉消費量そのものの増加も見込まれることから、食肉代替食品の市場が拡大することによって従来の食肉の消費量が直ちに減少するとは考えにくい状況にあると言えます。
また、PBMの食感や見た目は食肉に近くなってはいるものの、原料や生産方法が異なるという点から考えると、食肉と完全に置き換えられるものではなく、食肉と食味などを似せるために調味料が多く添加されている場合も少なくないため、健康面から疑問視する声も聞かれます。
 食肉代替食品は、今後、食品カテゴリーの一つとして認識され、消費者が従来の食肉と食肉代替食品のどちらをその日の食事にするかを選ぶ時代が来ると考えられます。将来にわたって食肉が消費者に選好されるためには、食肉業界として、持続可能性、環境負荷軽減を図りながらの増産などの課題に適切に取り組みつつ、消費者の嗜好に合った商品を供給し、その理解と支持を得ていくことが必要と考えられています。
 

レポ1-2

このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196