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〜食肉脂質測定装置の活用について〜

【第一線から】豚肉の新たな価値を証明する
〜食肉脂質測定装置の活用について〜

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最終更新日:2022年4月6日

豚肉の格付とは

しゃぶしゃぶ

 「A5ランクの高級和牛肉」などという言葉をよく耳にするように、牛肉の格付は非常に有名ですが、実は豚肉にも格付があります。豚肉の格付は、枝肉重量、背脂肪の厚さ、外観、肉質で判定され、「極上」、「上」、「中」、「並」、「等外」の5つの等級に格付けされます。等級は、生産者にとっては出荷した肉豚がどのような品質なのか確認することができます。また、食肉流通業者などが肉の品質などを判断する客観的な指標であるとともに、公正な価格形成に役立っています。

等級印を押された豚枝肉
等級印を押された豚枝肉

 このように食肉取引において非常に重要な役割を担っている格付業務は、厳正かつ公正に行われる必要があるため、高度な技術、知識および経験を持った公益社団法人日本食肉格付協会(以下「格付協会」という)の格付員が全国の食肉市場などで行っています。

豚肉に含まれる脂肪酸と食味の関係

 近年、豚肉に含まれる脂肪酸を測定することで味の傾向をつかめるようになっています。格付協会が独立行政法人家畜改良センター(以下「家畜改良センター」という)と共同で実施した研究調査によると、オレイン酸などの一価不飽和脂肪酸の含有率が高いと甘い風味を感じやすく、リノール酸などの多価不飽和脂肪酸の含有率が高いと酸化臭を感じやすくなることが明らかになりました。このため、豚肉に含まれている各種脂肪酸の含有率を把握することができれば、食べなくても、ある程度、風味を予測することができると考えられています。

脂肪酸測定技術の活用

 牛肉では、牛肉に含まれる脂肪酸組成を測定できる装置(以下「食肉脂質測定装置」という)の活用がすでに進んでおり、オレイン酸の含有率の高さを売りにしている牛肉もあります。
 格付協会は、家畜改良センターと共同で、食肉脂質測定装置を用いた豚肉の脂肪酸組成の検量線(注)を開発し、豚肉の脂肪酸を測定することが可能となりました。食肉脂質測定装置は、豚肉に光を当て、その反射を利用して測定するため、豚肉を傷つけることなく、素早く脂肪酸組成を測定することができます。また、格付員が肩にかけて持ち運ぶことができるため、狭いスペースでも容易に測定できることも強みです。令和3年度には、alicの補助事業である食肉取引円滑化推進事業を活用し、食肉脂質測定装置の実用化に向け、格付協会の全国の事業所で実際に流通する豚肉での測定テストや格付員に対する研修を行っています。

(注)食肉脂質測定装置で測定した豚肉脂肪の光学データと化学分析した結果の関係をグラフで表した線。検量線の精度を検証することで、光学データの正確性を確認することができる。

食肉脂質測定装置表示画面(イメージ)・食肉脂質測定装置(椛株n光学製)

食肉脂質測定装置で豚肉の脂肪酸を測定する格付員
食肉脂質測定装置で豚肉の脂肪酸を測定する格付員

今後の展開

 食肉脂質測定装置の活用は、まだ試験段階ですが、計測したデータの利用が可能になると、豚肉の新たな評価指標として、さまざまな利用方法が期待できます。
 例えば、食肉流通業者にとっては、脂肪酸の含有状況を見て、豚肉の用途を決めることができます。オレイン酸の含有率が高い肉は、風味が良く、素材そのものの味を生かせることから、家庭消費や外食向けに、反対に含有率が低い肉は、ハムやソーセージなど加工品向けに流通させるといった用途の判断が可能になります。
 また、生産者にとっては、出荷した豚の脂質測定結果を確認して、豚に与える飼料の内容を検討するなど、品質の向上に役立てることができます。さらに、オレイン酸などの含有率の向上を図り、これをアピールした付加価値の高いブランド豚肉の誕生により、他の豚肉との差別化を図ることも期待されます。

(畜産振興部)
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196