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肉用子牛を巡る最近の動向について

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最終更新日:2015年10月15日

はじめに

 みなさん「ごちそう」という言葉を聞くと、ステーキ、すき焼きやしゃぶしゃぶが思い浮かぶのではないでしょうか。
 ステーキはもちろんのこと、これらのメニューの主役となる牛肉には様々な品種がありますが、その中でも特に脂のノリ、肉の色沢やきめなどの肉質形成に優れたものが黒毛和種です。黒毛和種を生産する肉用牛経営には、母牛(繁殖雌牛)を飼養し、子牛生産を行う繁殖経営と、その子牛を購入して成牛に育て、肉牛として出荷する肥育経営があります。これらの経営体を結びつける場所が、肉用子牛の取引市場です(図1)。市場には、繁殖経営者が、出生から約9か月齢前後まで育てた子牛が上場され、その子牛を肥育経営者が購入し、肉牛となるまで20か月ほど肥育します。

 平成26年度は、全国の市場で約41万頭の肉用子牛が取引され、そのうち約8割のシェアを占めるのが、黒毛和種となっています。

黒毛和種子牛の取引動向

 黒毛和種子牛の取引頭数は、平成22年4月に宮崎県で発生した口蹄疫の影響で、前年度に比べて1割以上減少しましたが、その後、24年度までは回復傾向にありました。しかしながら、平成25年度以降は、減少傾向となり、26年度は前年度に比べて約5%少ない33万3995頭となりました(図1)。

図1 黒毛和種子牛の取引頭数と取引価格の推移
図1 黒毛和種子牛の取引頭数と取引価格の推移

取引頭数減少の要因

図2 一頭ずつセリにかけられます。
図2 一頭ずつセリにかけられます。

 取引頭数減少の要因としては、全国的な繁殖雌牛の減少が挙げられます。繁殖経営の約7割は、繁殖雌牛の飼養頭数が10頭未満の小規模経営で、年齢の高い生産者による経営が多くを占めています。このため、高齢化や後継者不足の影響を強く受け、生産基盤が縮小したことにより、繁殖雌牛の飼養頭数の減少、ひいては、肉用子牛の取引頭数の減少につながったとみられます。他にも、平成23年3月の東日本大震災なども離農増加へ大きな影響を与えました。

取引価格は急上昇

 このような取引頭数の減少から、黒毛和種子牛の平成26年度の平均取引価格は、前年度から約13%高の57万513円(雌雄平均。以下同様)となりました。この価格は、機構が肉用子牛の取引情報の収集を開始した平成2年度以降では、最も高い価格となりました。これに次ぐ高値は、18年度の取引価格(50万8742円)で、これは、米国でのBSE発生を受けて、米国産牛肉の輸入が禁止されたことに伴い、国内産牛肉の需要が増加した影響によるものでした(図1)。

安定した肉用子牛生産のために

 平成26年2月以降、黒毛和種子牛の取引価格は60万円を超えて推移しており、27年8月には65万6840円と、過去に例のない高値となっています。
このように黒毛和種子牛の取引価格は高値で推移していますが、この状況が続けば、肉用牛の安定的な生産に影響することが懸念されます。そのため、農林水産省では、27年4月に「畜産再興プラン実現本部」を立ち上げ、今後3年間で特に取り組む課題の一つとして「繁殖雌牛の増頭」を取り上げています。当機構としても、繁殖経営への増頭支援や、優良雌牛導入への支援など、繁殖経営への繁殖牛の増頭に向けた取り組みなどを支援しています。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196