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【トップインタビュー】パティシエがつくり出す洋菓子の魅力

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最終更新日:2017年3月1日

一般社団法人日本洋菓子協会連合会 副会長 大山栄蔵 氏(「マルメゾン」 オーナー)

正面
人気の職業のパティシエは、どんな環境でも同じ品質のものを作る技術だけでなく、新たな商品を開発する創造力も求められます。そこで、洋菓子の技術向上に取り組んでいる一般社団法人日本洋菓子協会連合会の大山副会長にお話を伺いました。

日本洋菓子協会連合会について教えてください。

 日本洋菓子協会連合会は、昭和27年に設立された「日本洋菓技術協会」を母体とする日本の洋菓子業界最大で、かつ、最も古い歴史を持つ団体です。「技術協会」の名称が示す通り、洋菓子の技術の向上を目指して東京で結成された団体です。
 現在は北海道から沖縄まで全国各都道府県に設立された54の協会と、それらの協会に所属する約1万5000人の会員により運営されています。会員は約5000人の洋菓子店の経営者や洋菓子業界に携 わるパティシエなどの関係者だけではなく、当連合会は消費者とともにあるべきとの設立当初からの理念により、全国の熱心な洋菓子愛好家やパティシエを目指す学生にも広く門戸を開放し、ともに会員として活動をしていただいています。
 結成以来、65年もの長きに及ぶ活動の間、全国会員の絶え間ない努力によって、日本の洋菓子は着実な技術の向上と普及を見ることができ、今やそのクオリティーの高さは、ヨーロッパの伝統国からも高い評価を得るまでになっています。

副会長は、なぜパティシエになったのですか。

 駒込の香川栄養専門学校を卒業して、先生から助手をやらないかと勧められ、製菓助手をしたのがきっかけです。しばらくして、学校の関係者から六本木の洋菓子店「ルコント」を紹介され、働くようになりました。もともと外国に行きたい希望があったこと、修業経験の差は縮まらないとの思いから本場へ行くなら早い方が良いと考え、一生懸命に フランス語を勉強して、2年でルコントを辞めて、フランスに渡りました。
 渡仏後は、複数のケーキ店で勤務したり、スイスの製菓学校に通ったりして、最後はパリの「ホテル・プラザ・アテネ」で働きました。フランス語ができたので、途中から現地の労働許可証を取得してフランス人と同じ待遇で雇ってもらうことができました。複数の店で働くことで、クラシックなお菓子から新しいお菓子までいろいろと勉強させてもらいました。
 フランスは芸術と文化の国ですから、街を歩いて建物を見るだけでも、すべてお菓子につなげて何でも吸収しようと努力しました。また、年間のバカンスが4週間ももらえたので、各地を旅して地元のお菓子店に行って、お菓子を学びに日本から来て修業していると伝えると、当時は厨房に入れてもらえ、レシピを教わったりもしました。
 フランスで5年間、洋菓子の修業をして、帰国後にお店をオープンしました。

日本での洋菓子の発展普及について教えてください。

 皆さん驚かれると思いますが、日本では定番のショートケーキやモンブラン、カップのプリン、ロールケーキは、日本的なケーキの代表であり日本で発展普及したものです。ショートケーキはフランスにはありませんし、モンブランの語源はフランス語(白い山)で すがフランスで取り扱っている店はほとんどありません。プリンはイギリスから来たもの で、ホテルのデザートにはありますがケーキ屋では売っていません。また、フランスでは 料理に砂糖を使わないので、デザートは砂糖の量が多く甘いです。

日本のパティシエの技術力について教えてください。

 日本人のパティシエのレベルは高いです。世界のコンクールでは、ほぼ確実にベスト3に は入りますし、1位や2位になることも多いです。
 当連合会でも全国各地で研修会を開催し たり、毎年10月にはジャパンケーキショーを開催してレベルアップを図っています。でもレベルが高くなった一番の要因は、日本の消費者の方のレベルの高さにあると思います。日本は他の国と比べ、貧富の差が比較的小さく、日本人の味覚のレベルが高いです。皆さ んも一度、美味しいものを食べるとレベルを下げられないと思います。すると作り手は、 皆さんを満足させるために必然的にレベルが高まる。これは、パティシエに限らず、料理 人やあらゆる方面に共通していて、日本人の器用さや繊細さが影響していると思ってい ます。
 余談ですが、フランスの三ツ星レストランには、フランス人のお客さんはあまり居ません。そこにいるフランス人は、すごい金持ちだけです。フランス家庭の夕食は、一つの鍋を囲み家族でつつく感じで、意外と質素です。また、フランス人は家庭でお菓子を作っているイメージがあるかもしれませんが、現実には家で作ることは少なく、作っているのは本当の金持ちか、田舎の家庭です。

洋菓子の魅力について教えてください。

 お菓子を食べて、泣いたり、悲しんだりする人はいないですよね。食べたら笑顔になる。洋菓子の魅力ってそんなところじゃないですかね。
 また、洋菓子は千円札1枚あれば、どんな店に行っても食べられる。私もフランスにいた時は、お金は無かったですけど、各地のケーキ屋さんを訪ねてたくさん食べた思い出があります。これが、フランス料理では、そうはいかないですからね。
 私は、洋菓子の中ではクッキーやマドレーヌなどの焼き菓子が好きです。焼き菓子は材料をごまかせません。やはり、バターを使ったものがおいしいです。お菓子の味は、材料の乳製品が決め手です。

洋菓子の最近のトレンドはどのようなものですか。

 最近の洋菓子全体で見れば、アトピーなどのアレルギーの人向けに小麦粉を使わないものや糖尿病の人向けに砂糖を制限したものなど、幅広いお菓子がありますが、一般的には低脂肪、低アルコールにしたお菓子がトレンドです。
 しかし、生クリームで砂糖の量を減らしたレシピでは、いちごの酸味と合わせて甘味だけでない甘酸っぱさを表現するなど、甘味をしっかり感じさせる工夫をしています。一方で焼き菓子やケーキのスポンジでは、砂糖を減らして作ると膨らまなかったり、焼色がつかなかったり、香りや風味がつかなかったりするため、そういう部分の砂糖は減らせません。

洋菓子に砂糖を使うのは、甘味のためだけではないんですね。

 洋菓子に砂糖を使うのは、甘味をだすのはもちろんですが、スポンジを膨らませ、焼 色や風味を良くして、保存性も高めるためでもあります。また、洋菓子作りに使う砂糖の種類は、グラニュー糖を使います。和菓子は上白糖を使うことが多いようですが、グラニュー糖はシロップにした時の透明度が高く、洋菓子に適しています。
 また、食感を良くする働きは、でん粉にもあります。日本では、カスタードクリームに小麦粉を使うことが多いですが、フランスではコーンスターチを入れて、クリームを滑らかに、軽くふわっとした食感にしています。

人気の職業パティシエについて、どう感じられていますか。

 誕生日とかお祝いで食べるケーキを、絞り袋に入れたクリームでデコレーションするのが、子どもたちにはかっこよく感じて、憧れがあるんですかね。また、女性のパティシエも増えてきました。
 確かに、自分が作ったお菓子を食べた人が笑顔になった時に、パティシエは良い職業だと思います。そのパティシエが、人気の職業というのは嬉しいことです。しかし、現実的には毎日同じ仕事の繰り返しなので、この仕事が本当に面白く思えて、好きにならないと続きません。

これからパティシエを目指したいという人に、一言お願いします。

 地味な仕事ですが、続けることが一番大事です。楽しいことばかりではありませんが、続けた人が一流になっています。そのためにも良い友達を持つことが大事です。お菓子作りの友達だったら問題意識が共有でき、お互いに情報交換しながら切磋琢磨して成長できます。異業種であっても相手が和食の調理人などの職人であれば、新しいアイディアを探して勉強しているので、共通点が多く、すぐ友達になってしまいます。
 また、パティシエは自分で作って満足するだけでなく、他の人が作ったものをたくさん食べて、世の中の傾向や流行を勉強しないといけません。私は、洋菓子に限らずいろいろなものをよく食べますし、美術館にもよく行って刺激を受けてきます。絵画などの芸術作品の中に、インスピレーションがあります。パティシエは、芸術家ではありませんが技術力だけでなく、季節感や創造力も大切です。

今後の課題などについて教えてください。

 今後の課題は、労働環境の改善です。パティシエは、皆さんが休みで楽しんでいる土日や祭日に仕事をしています。女性の社会進出もあり希望者は増えましたが、週休2日を実現しているケーキ屋は少なく、労働時間も長い職場が多いのが現状です。また、ケーキの種類は多く、どうしても小ロットの製造になりますから機械化も進んでいません。昔のように、レシピは貴重で「見て覚えろ」というような職人の世界は今はなくなり、レシピもすべてオープンです。
 今後は、機械化の推進など労働の効率化や今は法令的に難しい海外からの研修生の受け入れを図るとともに、女性でも働きやすい環境作りにも取り組んでいきたいです。さらに、テキストだけでは伝わらない、手から手への五感で伝える指導も重要なので、若い人を対象にした製造の技術指導に積極的に取り組んでいきたいですね。
 また、個人的な取り組みになりますが、子どもたちにパティシエの仕事についてのお話をしたり、洋菓子の作り方についてお店で見学会をしたりという食育活動は、今までも依頼があればやっていますが、これからも続けていきたいと思っています。

大山栄蔵(マルメゾン オーナー)一般社団法人 日本洋菓子協会連合会 副会長

昭和24年 埼玉県生まれ      
       香川栄養専門学校卒業後、同校で製菓助手を務める。      
       六本木の「ルコント」に2年間勤務
昭和46年 渡仏、トゥールの「アンドレ・イケ」で働いた後、スイスのコバ製菓学校へ入学、
       パリの「モーデュイ」「シャ トン」「ホテル・プラザ・アテネ」で修業して帰国
昭和52年 東京・成城に「マルメゾン」を開店。平成4年には世 田谷区松原に赤堤店を開店

現在は、一般社団法人日本洋菓子協会連合会副会長および公益社団 法人東京都洋菓子協会会長、聖徳大学客員教授を務めるほか、調理 師学校などで後進の育成に努める。
プロフィール
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196



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