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肉用子牛をめぐる最近の動向について

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最終更新日:2017年12月28日

はじめに

 牛肉は、ステーキやしゃぶしゃぶ、すき焼きなど、多くの人が「ごちそう」と考えるメニューになくてはならない食材です。
 牛肉として食されるために育てられる牛(肉用牛)の生産を行う経営形態は、飼養技術等の違いから、一般的に繁殖経営と肥育経営とに分かれています。
 繁殖経営は、母牛を飼養し、子牛を産ませ、その子牛を9か月齢前後まで育てた後、家畜市場などに出荷・販売することで収入を得る経営形態です。一方、肥育経営は購入した子牛を20か月ほど穀物などのエサを与えて肥育し、食肉として出荷・販売することで収入を得る経営形態です。
 全国の家畜市場で取引される肉用子牛の約8割を黒毛和種という品種が占めています。黒毛和種は、肉用牛の品種の一つで、脂のノリや肉の色沢、きめといった肉質が特に優れており、その牛肉は国内外で高い人気があります。
家畜市場に出荷された黒毛和種子牛
家畜市場に出荷された黒毛和種子牛

黒毛和種子牛の取引頭数は約30万頭

黒毛
 黒毛和種子牛の取引頭数は、平成22年4月に宮崎県で発生した口蹄疫の影響で、前年度に比べて1割以上減少しましたが、その後、24年度までは回復傾向にありました。しかしながら、25年度以降は減少傾向となり、28年度は前年度に比べて約4%少ない30万9802頭となりました(図1)。

高齢化で取引頭数が減少

 取引頭数減少の要因としては、離農による生産基盤の縮小から、全国的に母牛が減少していることが挙げられます。
 繁殖経営の多くは高齢の生産者による経営です。体力の限界から牛の飼養を継続することが困難になり、また後継者も不足していることから生産基盤が縮小しています。 
他にも、平成23年の東日本大震災なども離農増加に拍車がかかる要因となりました。

取引価格は依然高水準

 このような取引頭数の減少から、黒毛和種子牛の平均取引価格は平成24年6月以降、前年を上回って推移し、28年8月以降は80万円を超え、過去最高の水準となりました。29年7月以降も80万円を下回ったものの、依然として高水準で推移しています。

増頭のための取組

 この状況が続けば、子牛の導入コストが肥育経営を圧迫し、肉用牛の安定的な生産に影響することが懸念されます。
 そのため、当機構では、母牛の増頭に対する奨励金の交付や、増頭に伴う牛舎整備に係る経費の補助などを行い、繁殖経営における生産基盤の維持・強化に向けた取組を支援しています。

取引価格の低下にも備えています

図2
 一方で、肉用子牛の取引価格は、購買者である肥育経営者の経営状況にも左右されることから、今後、肉用子牛の取引価格が大幅に低下した場合も、肉用牛の安定的な生産に影響することが懸念されます。
 そうした場合には、取引価格の低下分を補てんする肉用子牛生産者補給金を交付し、肉用牛生産の安定のための支援を行っています(図2)。多くの生産者がこの制度に参加し、肉用子牛価格の低下時に備えています。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196