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【alicセミナー】地域や実需者に愛される持続可能性に配慮した国産鶏普及の取組

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最終更新日:2023年8月7日

広報誌「alic」2023年8月号

2023年6月20日(火)にalic会議室で開催
2023年6月20日(火)にalic会議室で開催

 鶏肉や鶏卵は私たちの食生活に欠かせませんが、昨年以降、鳥インフルエンザの影響などにより鶏の個体数が減少し、鶏肉や鶏卵の価格は高止まりの状況が続いています。
 今回のalicセミナーでは、国民の皆さまに安定的に鶏肉や鶏卵を届けるためにどのような対策が講じられているのかについて、独立行政法人家畜改良センター(NLBC)から岡崎牧場 次長 米本正弘氏および兵庫牧場 業務課長 山本力也氏をお招きしてお話いただいたので、その概要を報告します。

遺伝資源としての国産鶏種の重要性

岡崎おうはん

画像提供:NLBC
画像提供:NLBC

 現在、国内で生産されている鶏種の多くは外国の育種会社により育種改良された種鶏・原種鶏(注1)で、国産鶏種は、採卵鶏では4%程度、肉用鶏では全体の1〜2%に限られます。外国の育種会社は、再生産できないように雌雄どちらかしか提供しないため、継続的に輸入(購入)し続けなければなりません。
 一方、国境を越えてまん延する鳥インフルエンザなどの家畜伝染病や原産国における気候変動が国内の鶏産業の事業継続を脅かす事態も想定されることから、わが国の気候風土に適応した丈夫な鶏種を作出し普及するため、遺伝的多様性をもった鶏種を確保し、保存していくことの重要性が増しています。
 国内の種鶏開発は、NLBCを中心に都道府県、民間企業との連携、協力の下、実施されています。岡崎牧場では、卵用種の育種とともに純国産鶏「岡崎おうはん」を開発し、地域の地鶏振興を支援しています。また、兵庫牧場では、民間企業と意見交換を行い、「はりま」や「たつの」といった国産鶏種のブランド化を進めています。さらに、両牧場とも外部の機関と連携し、遺伝資源が絶えないよう保管しています。

(注1)養鶏農家が飼育する鶏を「コマーシャル鶏」といい、そのコマーシャル鶏を生産するための親鶏を「種鶏」、さらにその種鶏を生産するための親鶏(コマーシャル鶏から見たら祖父母に当たる)を「原種鶏」といいます。

JGAP認証をきっかけに抗菌性飼料添加物ゼロを目指す

 岡崎牧場では従来、採卵鶏の疾病予防のために厳しい衛生管理を行うとともに、飼料中の栄養成分の利用が阻害されないよう抗菌性飼料添加物を含む飼料(幼すう(ひな)、中すう用)を与えていました。しかし、2021年12月のJGAP認証(注2)の取得を契機に、抗菌性飼料添加物の必要性を検討した結果、岡崎牧場では必ずしも必要でないと判断し、2023年2月から抗菌性飼料添加物を与えない飼養に取り組んでいます。現時点では、鶏の発育に特段の問題はなく、飼養管理の簡素化や円滑な出荷に役立っています。
 引き続き、鶏の健康状態をモニタリングしながら、抗菌性物質を使用しない飼養管理を維持できるよう取り組んでいきます。

(注2)JGAP(畜産)の審査基準は、持続可能な農場経営への取り組みに重要となる、食品安全を始め、家畜の健康(家畜衛生)や快適な飼育環境への配慮(アニマルウェルフェア)、労働者の安全対策、環境保全などの項目があります。
 参加者からは、「鶏の改良・増殖は知らないことも多く勉強になった」「国産鶏種の維持・改良・普及は重要な仕事であると感じた」といった感想が寄せられました。alicでは皆様のご意見を踏まえ、今後も情報提供に取り組んでまいります。

 講演資料および動画(視聴は2024年3月31日まで)は、こちらからご覧ください。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196