消費者コーナー 「食」の安全・安心や食育に関する情報、料理レシピなど

ホーム > 消費者コーナー > 広報誌 > 【まめ知識】片栗粉の由来とその特性

【まめ知識】片栗粉の由来とその特性

印刷ページ

最終更新日:2023年8月7日

広報誌「alic」2023年8月号
 皆さんにとって最も身近なでん粉といえば、家庭料理でよく使用される片栗粉ではないでしょうか。現在市販されている片栗粉の多くは、ばれいしょ(じゃがいも)から作られています。
 今回は片栗粉の名前の由来と、ばれいしょでん粉の特性をご紹介します。

1.「片栗粉」の由来と原料の変遷

 片栗粉は、もともとユリ科の「カタクリ」(注)鱗茎(りんけい)(球根)からとれるでん粉を使って作られていたため、「カタクリ」粉と呼ばれていました。
 このカタクリから作られるでん粉は少量であるため、江戸時代末期に原料として多くのカタクリが採取されたことにより、その数は激減してしまいました。このような状況の中、明治時代以降に北海道で栽培が推奨されていたばれいしょから作ったでん粉が、カタクリから作られるでん粉と同じような性質を持っていたため、片栗粉の原料として使用されるようになりました。

(注)「カタクリ」の名前の由来は、花の様子が「傾いた籠」に似ているため「カタカゴ」、省略されて「カタコ」、さらにユリの花に似ていることから「カタコユリ」となり、その後「カタクリ」となった説があります。また、カタクリの葉の形が栗の子葉に似ていることから「片栗」と呼ばれるようになったとも言われています。

カタクリの花 片栗粉 写真提供:ホクレン農業協同組合連合会

2.特性と調理

 片栗粉として身近なでん粉であるばれいしょでん粉は、調理の際に加熱するとどのような特性が見られるのでしょうか?とうもろこしから作られるコーンスターチ、かんしょ(さつまいも)から作られるかんしょでん粉と、その性質を比較してみましょう。
 でん粉を水に溶かしてかき混ぜながら加熱すると、粘度のある液体へと変化します。この現象を糊化(こか)と言い、その粘りの強さはでん粉の原料によって異なります。
 写真は、各種でん粉に65℃のお湯を注ぎ、糊化した様子です。コーンスターチは、粘度が低くさらさらとした透明度の低い白濁した液体のままですが、ばれいしょでん粉は、透明で粘度が高く強い粘りが出ます。また、かんしょでん粉は、他のでん粉と比べてさらに透明度が低く白濁しており、コーンスターチよりは粘度が高く、ソース状のとろみが出ます。

各種でん粉の比較

 このように他のでん粉と比較すると、ばれいしょでん粉はより早くとろみが付き、粘度、透明度が高いことが特性であることがわかります。
 このため、ばれいしょでん粉は、あんかけ、八宝菜などとろみを付ける料理に向き、透明度が高く食材の色彩を損なわないことから、つややかでボリューム感のある仕上がりにすることができます。
 さらに、ばれいしょでん粉には保水力が高いという特性もあることから、具材をまとめる際にも役立ちます。

ばれいしょでん粉の特性を生かした料理の例(左・あんかけチャーハン、右・八宝菜)
ばれいしょでん粉の特性を生かした料理の例(左・あんかけチャーハン、右・八宝菜)

 alic HPでは、今回紹介した片栗粉やかんしょでん粉を使用したレシピを紹介しています。この機会にぜひ、でん粉の特性を生かした料理を楽しんでみてはいかがでしょうか。

〇さつまいもを原料とする「かんしょでん粉」についてはこちらから

参考文献
農林水産省「消費者の部屋 こどもそうだん」
井川佳子「でん粉の調理特性」

(調査情報部)
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196