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ニュージーランドの酪農事情

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最終更新日:2014年9月3日

調査情報部 根本 悠

はじめに

図1

ニュージーランド(NZ)は、非常に酪農が盛んな国です。
乳製品の輸出量は世界最大であり、日本にとってオーストラリアに次ぐ乳製品の輸入先であり、日本の乳製品輸入量の22%を占めています(図1)。
本レポートでは、最近のNZの酪農事情について、ご報告します。

NZの酪農の特徴

NZの酪農の最大の特徴は、放牧が基本ということです。
そのため、日本の酪農のように大規模な牛舎や大量の濃厚飼料を必要としないため、低コストの酪農経営が可能となっています。
また、NZは人口が400万人ほどと国内市場が小さいため、生乳(搾ったままの乳)の約95%は、乳製品に加工されて輸出されています。
したがって、NZの酪農経営は国際的な乳製品の需要動向に大きく影響を受けることになります。

NZの酪農場の様子
NZの酪農場の様子

NZの生乳生産の動向

図2

NZの生乳生産は、増加傾向で推移しています(図2)。
これは、酪農家の規模拡大や、他の畜産部門(肉用牛、羊)から酪農への転換に加え、NZの酪農の生
産体系が変化していることが背景にあります。
NZの酪農は放牧が主体ですが、近年は、牧草以外の飼料(とうもろこし、ヤシの搾りかす、小麦、大麦など)を補助的に与えています。
こうした飼料を牧草と組み合わせて与えることで、牛の泌乳量が増加しているのです。
また、雨が少なく、牧草が育たなかった地域において、かんがい設備を整備し、河川や地下水から水を引くことで、良質な牧草の生育が進んでいることも影響しています。

一方で、こうした生産体系の変化が、酪農家の生産コストの増加を招いているという現実もあります。
しかしながら、世界的に見れば未だにコストは低く、また、輸出量も増加しており、強い競争力を維持しています。

NZの乳製品輸出の動向

NZでは、生乳生産の増加に伴い、乳製品の輸出も増加しています。
特に輸出が増加している品目は全粉乳です(図3)。
NZの最大の輸出品目である全粉乳は、生乳を乾燥させて粉状にしたもので、主に育児用粉ミルクに利用されています。
全粉乳を中心とした乳製品の需要は、経済成長が進むアジアの新興国を中心に急増しており、とりわけNZから中国への乳製品輸出は、大幅に増加しています。

図3

図4

乳製品の国際価格の動向

NZの乳製品の大半は輸出されるため、乳製品の国際価格がNZの酪農に大きな影響を及ぼします。
最近の乳製品の国際価格の推移を見ると、1年ほど高い状態が続きました。
これは、新興国の乳製品需要の急増の影響とみられ、この高価格に反応して、NZの生乳生産は大きく増加しました。その後、2014年3月以降は、高価格の反動から下落しています(図5)。

図5

おわりに

NZの生乳生産は、規模拡大や補助的な飼料の給与により、増加しており、乳製品輸出も、増加傾向で推移しています。
NZ大手の乳業メーカーなど同国の酪農業界は、乳製品の国際価格は一時期から下落しているものの、新興国の乳製品需要はいまだ強く、将来的に同価格は下げ止まり、ある程度は回復するものと見込んでいます。

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